(2009年10月26日更新)
創立100周年にあたる2011年4月、
「(仮称)京都華頂大学」の設置を構想中。
浄土宗総本山知恩院によって設立された女学校が起源
本学の起源は、浄土宗総本山知恩院が1911年(明治44年)に設立した「華頂女学院」です。その年は法然上人の700年ご遠忌(おんき)にあたり、それを記念して女子教育を市民に開放するという理念をもって設立されました。その後、戦後の学制改革に伴い1953年(昭和28年)に「華頂短期大学」となります。保育科と家政科で定員合計80名という小さな規模でした。1958年(昭和33年)には当時では非常に珍しい社会福祉科を新設して3科体制になりました。「浄土宗は社会福祉宗だ」とまで言う方もいるのですが、本学ではすでにその時期から福祉教育に力を入れていたのです。ちなみに、短期大学としては日本で初めて介護福祉士の養成に取り組んだのも本学です。それから女子の進学傾向の高まりを受け、本学は一気に発展しました。1967年(昭和42年)には入学定員が合計450名に増加しました。その後いくつかの改組を経て、現在では生活学科・幼児教育学科・社会福祉学科の合計で、入学定員580名の大規模短期大学となっています。
京都の中心地で日本の歴史と文化を学ぶ「歴史文化学科」の設置を申請中
周知の通り、短期大学をめぐる募集環境が厳しい中、短期大学改革として、2010年4月「歴史文化学科」(定員50名)の設置認可を申請しています(2009年9月現在)。「歴史コース」と「京都文化コース」の2コースを置く予定です。京都の中心地・知恩院にあることを生かし、日本人としての文化的、歴史的教養を身につける学びを行います。このような教養系の学科は現在の短期大学には珍しいと思いますが、この京都の文化を身近に感じられる立地条件のもとでリベラルアーツ教育ができるのは本学ならではです。授業は本学の環境をフル活用したフィールドワークが主体になります。本学の近くにはさまざまな史跡のほか、京都の食文化や服飾文化を担ってきた老舗など、学びの題材がふんだんにあります。
4年制大学における史学、歴史教育というのは、概ね文献研究です。もちろんそれにも価値はありますが、特定の職業を除いて、学んだ歴史の知識を生かした職に就くことが少ないのも事実です。本学の「歴史文化学科」では、フィールドワークを通じて実感した京都の素晴らしさをみずから発信できる人材を育て、主に販売業や観光業などの分野で活躍してくれることを期待しています。京都で歴史や文化を学ぶことの価値を訴求して、幅広い地域から学生を集めたいと願っています。
現在、本学には生活学科・幼児教育学科・社会福祉学科の3学科が設置されています。子どもからお年寄りまで、人間の生涯における本質的な課題に取り組んでいくという本学の理念を遂げるための学科構成です。その背景には建学の理念、ひいては法然上人の「万人平等救済」の精神があります。そうした歴史的な意義や背景があるにもかかわらず、そのことが十分に伝わっていないのではないかと反省しています。残念ながら、いまの本学は社会的な認知度も高くない。その意味でこの「歴史文化学科」が、本学の特色を表面化させる存在になってくれるものと期待しています。京都を核にした歴史文化の教育研究が活発に行われることで、本学の歴史的な意義や背景を内外に再認識させることが可能です。「歴史文化学科」が本学にとって新たな精神的拠り所となり、既存学科にも相乗効果をもたらすことになれば、より大きな意味をもつ学科になるでしょう。
「家庭経営学」を軸にした社会科学系の家政学に取り組む大学
きたる2011年(平成23年)は本学にとって非常に大きな節目の年となります。前身の「華頂女学院」創立から100周年、そして法然上人の800年ご遠忌にあたる年です。その2011年(平成23年)の4月に、短期大学の一部を改編して「(仮称)京都華頂大学」の設置を構想しています。「現代家政学部・現代家政学科」の1学部・1学科でその中に「総合家庭学/児童学/人間福祉学」の3つの領域を置く方向で調整を進めています。
本学の生活学科はもともと家政科から発展してきたものですから、家政学の教育研究には長年の実績があります。一般に家政学と言えば、栄養・調理や服飾、住居学など自然科学系の分野に属しますが、新大学がめざしているのは社会科学系の家政学です。家政学の大もとを調べてみますと、じつは「家庭経営学」という社会科学系の学びであることがわかりました。現に中学・高校の家庭科の指導要領にもそう記述されています。高校の先生にお尋ねしたところ、普通科における家庭科の授業では家庭経営学を教えることになっているものの、内容が難しいためにどうしても衣食住に関する技術教育になってしまうのだそうです。新大学では家庭経営学を軸に、衣食住を人間の生涯におけるライフ・デザインという観点で捉え直すための教育研究に取り組みます。たとえば結婚を考えたとき、住居の取得とともに経済面の課題も発生します。さらには子育てにかかわる衣食住、共働きにおける環境の整備にどう取り組むのかといったことなど、さまざまな問題に対処していく必要があります。今後日本は人口減少期に移行していきます。その中で女性の労働力はこれまで以上に貴重になってきますから、多くの夫婦が共働きになるでしょう。そこで地域社会において育児や介護をどう見つめ直していくのかは人生の重要な課題です。ほかにも多種多様な切り口が考えられます。人間として、家庭人として、人生設計を念頭に家庭のあり方を考えるとともに、家庭と地域をめぐる諸課題を研究対象にしていきたいと思います。
具体的な職業としては、資格に関係するものではファイナンシャルプランナー、上級ビジネス実務士、保育士、幼稚園教諭、小学校教諭、中高の家庭科教諭、教育カウンセラー、社会福祉士、児童厚生一級指導員などですが、教育機関や福祉機関だけではなく、家庭経営についての問題意識をもつ人材は、どの分野の職業でも今後重要になってくるのではないでしょうか。
家政学は古くて新しい学問。
これは私見なのですが、短期大学の入学者以上に潜在的な「華頂の層」という人たちがいるのではないかと思っています。短大離れが進む中、本学に4年制大学がないというだけの理由で受験に至らなかった高校生がいるのではないか。そうだとすれば4年制大学を開設することで、再び「華頂の層」を呼び戻せます。その点からも本学の伝統である家政学で大学を設置することには意味があると思います。家政学は古くて新しい学問、温故知新の学問です。開設準備を進めるとともに、高校生の皆さんにこうしたことをしっかり伝えていきたいと思います。

【Profile】
中野正明氏
1954年福井県生まれ。大正大学大学院博士課程単位取得。文学博士。学校法人佛教教育学園副理事長、華頂短期大学附属幼稚園長、日本私立短期大学協会常任理事・教務委員長、総本山知恩院文化財保存委員長。専攻は日本史学。『増上寺史』『知恩院史料集』『京都永観堂禅林寺文書』『法然遺文の基礎的研究』など数多くの著書がある。





