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文化学院校長 熊川清孝氏


(2010年10月18日更新)

大学でも、専門学校でもない
新しいスタイルの学校を目指す

芸術家や文学者の感性でつくられた学校

 文化学院の開校は1921年。西村伊作が歌人の与謝野晶子・寛夫婦、画家の石井柏亭たちと新しい教育を追究するなかから設立されたものです。本学院は生まれたときから、文学や芸術による人間教育を目指していました。ですから、国の学校令などに縛られない自由な教育を目指し、あえて各種学校(当時)としてスタートしたのです。4年制の中等部は、日本で初めて男女共学を実現したとされています。校舎はイギリスのコテージ風で、設立当初より一流の芸術家、文学者によって独創的な教育が行われたのが特徴です。例えば、二科会の山下慎太郎や有島生馬が美術面を、与謝野晶子・寛夫婦、有島武郎などが文学面を、山田耕筰などが音楽面を担当していました。新進気鋭の逸材ばかりです。後に、菊池寛、堀口大學、佐藤春夫も加わりました。この伝統は、今の時代へと確実に継承されており、業界の最先端で活躍するプロフェッショナルたちが講師を務めています。

2008年、新生文化学院が誕生!

 2008年に現在の新校舎を立ち上げ、卒業生が活躍する分野に合わせて学科構成を変更。新生文化学院として生まれ変わりました。
 伝統の文芸系、美術系に加えて高等課程総合芸術科(アクターズコース、文芸コース、アート・デザインコース)、専門課程の放送・映画学科(放送コース、映画コース)、総合芸術学科(演劇・声優コース、文芸コース、アート・デザインコース)という学科コース群に再編成しました。 私が文化学院と関わるようになったのは2007年からで、2010年に校長に就任しました。その際に私が他に優先して考えたことに、学生のキャリアサポートの充実がありました。かつての学生たちは、自由な風土のもと自ら道を切り開き、輝かしい実績を残してきました。良くも悪くも完全な放任主義だったわけです。
 しかし時代は大きく変わっています。マスメディアの発展とともに多くの人が、文化や芸術の分野に興味を持つようになりました。それに伴い学生の選択肢も増えてきています。競争が激化する中で、現在の学生は学校によるキャリアサポートを必要としているのです。
 ただし、本学院の学生が求めているキャリアは、いわゆる一般的な就職先とは少し違います。文化や芸術の創造者としてのキャリア設計です。そこで今力を入れているのが、自分の進路をイメージしながら学ぶという方法です。授業がキャリア設計のきっかけになるようなしくみを作ることです。

惹きつける「何か」を大切にする

 文化学院は、大学ですか? 専門学校ですか? とよく聞かれることがありますが、広報上は、あえて曖昧にしています。それは、本学院が大学でもなく、専門学校でもない、新しい学校だからです。募集する学生も必ずしも高校生だけを対象としているわけではありません。実際に、60歳になってから新しい道を志し、入学してきた学生もいますし、有名大学の文学部を中退して文芸コースに入学してきた才媛もいます。なぜそのようなことが起こるのか?その答えは、文化学院には、人々を惹きつける「何か」があるからだと思います。私たち経営陣は、その「何か」を本学院の強みとしてしっかりと認識し、守り、高め、そして学生のキャリアへとつなげていかなくてはなりません。
 学生のキャリア感を高める有効な手段として、徹底した少人数教育があります。例えば声優コースは、例年1クラス15~20名の学生に対し、現役のプロが講師としてきめ細かな指導を行っています。現役のプロフェッショナルと近接にかかわることで、学生たちにのなかにもプロとしての意識が芽生えてくるのです。
 また、2010年には芝居「こもれびの中で」のオーディションを兼ねた演劇・声優コースの合宿が行われました。そこでは、プロの俳優40名に混じって30名の学生がオーディションに臨みました。結果は6名の学生がオーディションに合格し、舞台に参加することになりました。校長や教員たちが率先して機会を作り、学生たちとともに挑戦していく。こうした文化学院の伝統を大切にしながら、より多くの学生がプロとして巣立てるように、全校をあげてきっかけづくりをしているのです。

一流の講師陣と現場体験が学生を変える

 演劇のクラスでは、劇団「山の手事情社」のメソッドを導入しています。「山の手事情社」は「オイディプス王」「タイタス・アンドロニカス」というお芝居で、2年連続シビウ国際演劇祭に招待されるといった、世界的に高い評価を受けている劇団です。そこの第一線で活躍する役者さんたちが講師を務めて下さっています。ところがここで一つだけ問題があります。講師の方々は、演劇祭の最中は渡欧しますから、その間の授業は担当できません。しかしそんなときでも、本学院では、「山の手事情社」の指導法(メソッド)を受け継いでいるプロが授業を担当していますので、学生は、合間を置かずに高水準の演劇を学ぶことができるのです。映画の場合も同様です。監督が撮影に入ってしまっても、必ず監督の指導法を受け継ぐ人材が代わりを務めてくれます。この層の厚さは、本学院ならではの大きな魅力だと思います。
 すでにお気づきの通り、本学院の学生は、プロに学び、現場に学ぶ機会が極めて多いのですが、学生たちはこうした体験を通して大きく成長していきます。先ほど紹介した「こもれびの中で」では、西澤周市先生の口伝えによる厳しい指導に学生は涙を流しながらも食らいついていました。
 また、文化放送に「アニスパ」という、アニメや声優、ゲームなどの最新情報を提供している人気ラジオ番組がありますが、この番組の声優・文化研究所という企画コーナーで本学院の学生2名がアシスタント・パーソナリティーとして活躍しています。さらに、6名の学生がオーディションに合格し、番組出演を果たしています。こうしたオーディションに参加することも学生を大きく成長させるきっかけになっています。合格することで将来への手ごたえを感じることができ、自信につながるからです。
 さらに本学院では、芸術、文化の最先端で活躍しているプロフェッショナルを特別講師に迎え、年4回の特別講義を実施しています。注目度はもちろん、この講義は、学生たちの大きな刺激剤になっています。今年度は、劇作家・演出家の横内謙介氏が講義を担当して下さいました。横内氏は、自ら主宰する劇団扉座のほかスーパー歌舞伎や著名劇団などに幅広く作品を提供しています。そんなお忙しい方が、本学院のために協力を快くお引き受け下さったのです。

「入ってよかった」と思える学校

 私は文化学院に来てまだ3年目ですから、私自身も学ばなくてはならないことがたくさんあります。学びながら、改革も考えるというのが現状です。学校経営については、学生募集と学生の就職という業務で20年以上のキャリアがあります。しかし、教育にまで携わったのは、本学院が初めてです。最初は戸惑いもありましたが、これが良い経験になっています。学校の魅力について、身をもって知ることができたからです。
 持っている資産に余計な脚色をせずに、すべてをさらけ出せばいい。それだけで学生には、「この学校に入ってよかった」と感じてもらえると確信しています。元来人を惹きつける魅力がある学校なのです。そこに安心材料となる将来サポート体制が備わっていれば十分だと思います。今までと同様に地道に良いものを作り上げ、そして事実を真っ直ぐに世に伝える。それが私の使命だと思います。

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【Profile】

熊川清孝(くまかわ・きよたか氏)
文化学院・校長、理事。東京都大田区蒲田出身。早稲田大学商学部卒業。好きなひと、こと、もの:エリック・クラプトン、チック・コリア、アル・ディ・メオラ、マイルス・デイヴィス、ビリー・ワイルダー、オードリー・ヘップバーン、冒険者たち、シベールの日曜日、アルフレッド・シスレー、黒田三郎、白土三平、吉本隆明、はっぴいえんど、倉木麻衣、theory、wasedaラグビー、シンコ、トリガイ、モフィート。

 

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