教育トピック

教えて!「若者の内向き志向」

 今や経済はますますグローバル化が進み、企業ももっと世界に打って出なければ生き残れない時代になっています。そんな中で、若者がますます内向き志向になっているという指摘があります。ニッポンの高校はそこに何か働きかけているでしょうか。

 財団法人日本青少年研究所が先ごろ発表した日・米・中・韓の国際比較調査によると、留学したいと思う高校生の割合が、日本は4カ国で最低でした。留学したくない理由を尋ねると、「言葉の壁があるから」「外国で一人で生活する自身がないから」と並んで「自分の国が暮らしやすいから」が上位に上がっています。留学したい理由として「帰国後の就職が有利になる」を挙げる人が他の3カ国に比べ低いのも特徴です。

 リクルートが昨年夏に発表した「大学進学者の留学意向」調査でも、「留学意向なし」(40.4%)が「留学意向あり」(32.8%)を上回っていました。留学したい人の理由を聞いても「就職の時に役立つ、有利になる」は3人に1人ほどで、「将来、海外の企業で働きたい」は5人に1人、「将来、海外出張や転勤などで困らないように」になると8人に1人だけです。

 内向き志向は、実際の数値にも表れています。日本人の海外留学者数は09年に約6万7000人と4年連続で減少し、ピーク時より約1万6000人減っています。

 今や大企業はもとより、中小企業も海外進出が当たり前の時代です。多くの企業が海外で活躍できる人材を求めており、「必要な人材であれば日本人でなくても構わない」と外国人留学生などの採用に積極的な企業も少なくありません。国内の就職活動の段階から海外の人材と競わなければならないというのに、先の諸調査で見たように「留学すると就職に不利」と思い込んで国内に閉じこもっていて、不利どころかますます就職の幅が狭まってしまうとしたら、大変です。

 東大が秋入学への意向を示したことが大きな話題になりましたが、これも海外の大学との行き来を盛んにすることで東大の学生を「よりグローバルに、よりタフに」することがねらいだといいます。国内の大学でも留学生たちと切磋琢磨(せっさたくま)しなければならないのですから、「英語が苦手」などと言っている場合ではありませんね。

 政府の「グローバル人材育成推進会議」は昨年6月の中間まとめで、内向き志向の強まりに危機感を示し、高校、大学、企業の関係者や保護者が一斉に具体的な行動を起こし、若い世代を後押しすることが不可欠だと指摘しています。高校も大きな役割を担っているのです。

 ただ、留学の意欲があっても経済的理由から断念する生徒はいることでしょう。留学意向調査でも、留学したいと思わない理由のトップは「費用が高いから(費用がかかるから)」で、ほぼ2人に1人を占めています。

 一方で、高校生の留学や国際化を後押ししようという動きも出てきました。例えば東京都教育委員会は4月、独自の留学プログラム「次世代リーダー育成道場」を開設し、150人を海外に派遣する計画です。文部科学省も、世界で通用する大学入学資格「国際バカロレア資格」取得のための教育を行う高校を5年以内に200校(現在はインターナショナルスクールを除くと6校)に増やすとしています。

 そもそも新学習指導要領では、英語の授業を英語で行うとしています。高校の教師にとっても、国際化への対応が待ったなしの状況になっているのです。そして、留学という進路に積極的なサポートができる指導現場がどれくらいあるでしょうか……。

【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。


(初出日:2012.4.24) ※肩書等はすべて初出時のもの