教育トピック

教えて!「大学入試は今後どうなる?(第4次提言を受けて)」

 政府の教育再生実行会議は10月31日にまとめた第4次提言で、「達成度テスト(仮称)」の導入などを柱とする大学入試の抜本的改革案を提案しました。今後の大学入試は、そして高校の教育は、いったいどうなるのでしょう。

 大学入試センター試験に替わるテストの構想があることは、6月の記事でも紹介しました。当時は「到達度テスト」と報じられていた名称が、10月に入って2種類の「新テスト」として提示され、最終的には「達成度テスト(発展レベル)」と「達成度テスト(基礎レベル)」に落ち着きました。

 こうした2本立ては結果的に、昨年6月の文部科学省「大学改革実行プラン」で示された「1点刻みではないレベル型の成績方式の導入によるセンター試験の資格試験的活用の促進」と、中央教育審議会高等学校教育部会が今年1月の審議経過報告で検討を求めた「高等学校学習到達度テスト(仮称)」の構想を、それぞれ踏襲した格好になります。「基礎レベル」が高校教育の質の確保・向上を目的としつつ推薦・AO入試での基礎学力判定にも活用できるようにしたことも、中教審高校部会の構想と同じです。ただし両レベルのテストを一体的に行うと位置付けたことは、実行会議のオリジナルと言っていいでしょう。

 いずれも複数回受験できるようにするとしていますが、具体的な出題教科・科目や実施時期については中教審の審議に委ねるとしています。全員に受験が強制されるものではないとはいえ、実際には高校生がテストに追われることで、授業はもとより学校行事など教育活動全体に影響が及ぶのではないかとの懸念が高校現場に広がっているのも確かです。6月の報道を受けて全国普通科高等学校長会が会員校にアンケートを行ったところ、反対の方が多かったといいます。

 それなのに、なぜこんな構想を打ち出してきたのでしょうか。発端が「大学改革実行プラン」だったように、大学がグローバル対応をはじめ社会で求められる人材を育成するために、教育を大きく変えることが迫られているからです。しかも、大学教育が変わるには学生を送り出す高校の教育も変わってもらわねばならず、その間をつなぐ大学入試も同時に変わらなければならない――という「三位一体」の発想が、そこにはあります。

 昨年8月に中教審が「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」と題して平野博文文部科学相(当時)に答申したと同時に平野文科相が「高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策」を中教審に諮問し、翌月に「高大接続特別部会」が発足したのも、三位一体改革が不可欠であるとの認識からでした。

 第4次提言でも入試改革ばかりが注目されていますが、高校教育にはインターンシップやキャリア教育も含めた資質・能力の育成や生徒の多様性を踏まえた学校の特色化を、大学教育にはグローバル人材やイノベーション人材の養成はもとより厳格な卒業認定の徹底などを求めています。到達度テストはそうした高校・大学の教育を変えるツールでもあるのですが、大学教育の改革は、早くても5~6年先とされる大学入試の抜本改革を待ってくれません。つまり、今の高校生にも、決して無関係ではないのです。

 将来的にも1点刻みの成績利用ができなくなる以上、各大学はアドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)に基づいて面接や論文、高校の推薦書や活動記録、入学後の学習計画書など多様な資料を用いて総合的に合否判定を行わなければならなくなります。高校側では、変わる大学教育に対応できる幅広い高校教育を行えるチャンスと捉えることもできるのではないでしょうか。入試が1点刻みでなくなれば、生徒も受験で「合格点さえ取れればいい」という意識を捨て去らなければならなくなるのですから。

 

【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/


(初出日:2013.11.19) ※肩書等はすべて初出時のもの