教育トピック

教えて!「国立大学改革プラン」

 文部科学省は先ごろ、「国立大学改革プラン」を策定しました。
2016年度から始まる第3期中期目標期間に向けて、大学の運営や予算配分、人事・給与システムなど幅広い改革を加速するとしています。国立大学はどうなるのでしょうか。
これから国立大学に進学しようとする生徒にとっても無縁ではいられないようですが――。

 国立大学改革プランはもともと民主連立政権下の2011年11月、提言型政策仕分けで大学の在り方が議論になったことから、文部科学省と財務省が12年度予算編成の過程で、大学改革に取り組むことに合意。省内に設けられたタスクフォース(特別作業班)の議論を基に当時の平野博文文科相が12年6月に公表した「大学改革実行プラン」の中で、13年半ばに国立大学改革プランを策定することが明記されていました。

 同年末に再び政権交代した後も、安倍晋三首相や下村博文文科相もメンバーである教育再生実行会議が5月にまとめた第3次提言で国家戦略として大学改革の必要性が打ち出され、6月に閣議決定された「日本再興戦略」の中に大学改革が位置付けられました。こうした流れを見ていると、いよいよ大学改革は待ったなしの状況に来ているとの感を強くします。

 そうして打ち出された国立大学改革プランでは、当面の目標として、
[1]教育研究組織や学内資源配分について恒常的に見直しを行う環境を生み出す
[2]国内外の優秀な人材の活用によって教育研究の活性化につながる人事・給与システムに
[3]学長がリーダーシップを発揮し、各大学の特色を一層伸長するガバナンス(統治)を構築
[4]20年までに、日本人の海外留学者数を6万人(10年)から12万人に、外国人留学生の受入数を14万人(12年)から30万人に倍増
[5]今後10年で世界大学ランキングトップ100に10校ランクイン
[6]今後10年で20の大学発新産業を創出――を掲げています。
一見しただけでは、学生に関係しそうなのは[4]の留学くらいで、それも全員に関わるとは限らない、と思ってしまうかもしれません。

 しかし同プランは、「大学が変わらなければ日本そのものが地盤沈下する」(下村博文文部科学相、11月26日の記者会見で)というように、これまで少しずつ変わりながらも変わり切れなかった国立大学の改革を、飛躍的に進めようとするものです。しかもヒト・モノ・カネにわたる裏付けを伴っているものですから、現実的に国立大学の在り方が大きく変わっていくことは必定です。

 プランでは各大学の機能強化の方向性として「世界最高の教育研究の展開拠点」「全国的な教育研究拠点」「地域活性化の中核的拠点」の3タイプを示すとともに、各大学が強みや特色、社会的役割を整理した「ミッション」(使命)を13年中に再定義するとしています。それに基づいて各大学が改革を進め、文科省も予算配分などで後押しするわけです。戦後の新制大学発足以来、どこでも「ミニ東大」を目指していた国立大学が、世界的な研究大学を目指すのか、あるいは地域密着型を目指すのかなど、05年の中教審答申(いわゆる将来像答申)以来求められてきた「機能別分化」の選択を、いよいよ迫られるわけです。

 大学の在り方が変われば、当然それに対応して大学の教育も変わっていくことになります。
例えば、先に見た当面の目標のうち[3]のガバナンス改革にしても、単に大学運営だけでなく、これまで教授会自治の専権事項だったカリキュラムも学長のリーダーシップの下、全学的に目指す卒業生像に基づいて改革が進められることになります。

 世界的な研究拠点を目指す大学では英語での授業や研究も海外留学も当たり前になるでしょうし、地域貢献を目指す大学では積極的に地域に溶け込んで課題解決を図るようなアクティブ・ラーニング(能動的学修)がますます盛んになることでしょう。いずれも既に取り組みが始まっていることですが、それらが各大学の特色として打ち出され、アドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)でも、それに応じた学生が求められることになります。実行会議第4次提言で打ち出された多様な選抜尺度の導入による大学入試の抜本改革が、各大学に波及していくことにもつながるでしょう。

 いずれにしても、これからの国立大学は、全国どこでも同じではなくなるのです。どこでもよいから国立大学に、というような進学指導はますます現実的ではなくなるでしょう。

 

【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/


(初出日:2013.12.10) ※肩書等はすべて初出時のもの