教育トピック

教えて!「達成度テストって何?」

 政府の教育再生実行会議が昨年10月に提言して、高校教育界にも波紋を広げた二つの「達成度テスト(仮称)」創設案。散発的に報道はあるものの、その後の審議はいったいどうなっているのでしょう。だいたい、達成度テストは何のためにやるのでしたっけ…?

 二つの達成度テストを検討している中央教育審議会の各部会は、今月中に一定の取りまとめを行うことにしています。実は「基礎レベル」の方を検討している高等学校教育部会は3月7日に「審議まとめ」案の部会長一任を取り付けており、「発展レベル」を検討している高大接続特別部会は3月6日の後、月内にもう一回会合を開いた上で審議経過報告案をまとめる予定です。

 その後、4月以降にパブリックコメント(意見公募)や関係団体からのヒアリングを行った上で両テストの内容を擦り合わせ、制度設計に向けて夏前ごろに正式決定したい考えです。そうなると2015年度概算要求に必要経費を計上し、いよいよ準備作業に取り掛かるのではないか―という推測が成り立ちます。

 さて、高校教育部会が議論してきた「基礎レベル」テストですが、テストの目的は、高校側にとっては高校教育の質の確保・向上に生かすことであり、生徒側にとってはAO・推薦入試や就職試験に際しての学力証明に使えるため学習意欲が喚起され、学習の改善が図られるとされています。部会委員にも「高校版・全国学力テスト」だと評する声があります。ただし小・中学校の全国学力テスト(正式名称は「全国学力・学習状況調査」)が全員参加を原則としているのに対して、こちらは希望参加型としており、その上で、できるだけ多くの生徒が受検できるような方策を検討するとしています。

 出題教科・科目は、審議まとめ案によると当初は、国語、数学、外国語(英語)、地理歴史(世界史、日本史、地理)、公民(現代社会、倫理、政治・経済)、理科(物理、化学、生物、地学等)を想定。マークシート方式を原則としつつ、一部に記述式も検討するといいます。実技系教科や専門教科等はペーパーテストになじみにくいことから引き続き専門的に検討するとしていますが、特に専門教育では技能検定などが充実していますから、そちらを活用することになりそうです。試験問題は高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)と同等程度としています。

 高校現場にとって一番気になるのは、実施の回数と時期でしょう。部会でも高校関係委員から高校教育に支障が出ないようにと、意見が多く出されたところでした。審議まとめ案では「年間2回程度」で「高校2年及び高校3年で各生徒や学校の希望に応じ」、「高1からの受検も可能とするか検討」。実施時期は「夏~秋を基本として学校現場の意見等を聴取しながら検討」…となっており、要するに具体的にはこれから、ということです。高校単位で受検する場合は高校を会場にするといいますから、高校側の一定の負担は避けられそうにありません。

 一方、「発展レベル」の方は実行会議の提言から大きく踏み込んだ提言はなさそうですが、測定すべき能力として「これからの大学教育を受けるために必要な能力を判定する観点」から、知識・技能だけでなく「活用力(思考力、判断力、表現力等)や高校生活全体を通じて培われる汎用的能力の測定を重視する」としていることが目を引きます。試験内容も、各教科を融合した「合科目型」や、教科型の試験では評価できない能力を測る「総合型」の問題の導入を目指しつつ、教科型問題の出題も検討するとしています。

 審議経過報告がまとまっても、1点刻みではない「多面的・総合的な評価」を具体的にどのような形で行うかや、複数回実施のための問題バンクづくりなど、課題は山積しています。実施時期は、たとえ15年度中に入試大綱が示されたとしても周知期間を考えれば最速で19年度以降ということになりますが、次期学習指導要領の改訂時期にもからんでくる話になり、現段階では不透明と言わざるを得ません。ただ、入試改革を契機に大学のみならず高校の教育や資質・能力観にも大幅な革新が迫られるとなると、いつまでも先のことだとは思っていられないのかもしれません。

 

【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/