教育トピック

教えて!「スーパーグローバルハイスクールって何?」

 文部科学省はこのほど、全国の高校など56校を「スーパーグローバルハイスクール」(SGH)に指定しました。「スーパー」と付くだけに、これまでにもあった「国際化」に対応した高校とは一味も二味も違うようです。どういうものなのでしょうか。

 文科省の予算説明資料によると、SGHは「将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーを高等学校段階から育成する」ものです。ただ、申請段階から「語学力育成のみを目的とした研究は支援対象外」と明言していたように、英語ができればいいというものではありません。「社会課題に対する関心と深い教養に加え、コミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養」も身に付けなければならないといいます。

 では、実際にどのような学校が指定されたのでしょうか。設置者別にみると、国立4校、公立34校、私立18校。この中には中高一貫校(中高一貫教育制度による学校とは限らず)が10校含まれています。また、「スーパーサイエンスハイスクール」(SSH)に指定されている学校も10校ある他、既に「国際バカロレア」(IB)の認定校である玉川学園中学部・高等部、立命館宇治中学校・高校をはじめ、これからIB認定を目指す学校も少なくとも5校あります。具体的な顔ぶれを高校関係者が見れば、全国的にも有名な進学校や地域のトップ校が名を連ねる一方、そうとは限らない高校も含まれていることが分かるでしょう。

 実は、申請段階では246校が名乗りを挙げていました。指定期間(最大5年間)は毎年上限約1600万円の支援を受けられるというのも、大きな魅力だったようです。もともと概算要求段階では約100校の指定を予定(1校当たり2900万円)していたものが査定で半分に削られたという事情もありますが、結果的に5倍近い競争率となり、地域トップ校といえども軒並み落選しています。そのため文科省は選に漏れた学校のうち54校(国立6校、公立27校、私立21校)を特別に「SGHアソシエイト」(準SGH)と位置付けました。この中にもSSHが9校、IB認定校が1校、これからIB認定を目指す学校が少なくとも5校含まれていますが、それでも漏れた地域トップ校は少なくありません。

 単なる進学エリート校でないとしたら、いったい何を基準にしたのでしょう。キーワードは「課題研究」です(審査要項)。グローバルな社会やビジネスなど国際的に関心が高い課題を中心として、校内外はもとより海外も含めて、グループワークやディスカッション、論文作成、プロジェクト型学習などを実施することを求めていました。そのため国際化を進める大学等と連携して、英語で授業のできる教員などを派遣してもらうこともメニューに入れています。帰国・外国人生徒の積極的な受け入れや海外研修も、単に多様な国際体験を積ませるというだけではなく、グローバル人材となるのに必要な資質・能力を具体的に身に付けさせるためなのです。SSH指定校が少なくないのも、文系だ理系だと言っているのは日本ぐらいで、文理融合型の素養が国際的には当たり前だからです。

 SGHが研究開発学校に指定されることもポイントでしょう。現行教育課程の基準によらない教育課程を編成・実施するためですが、グローバル人材を育成するカリキュラムづくりのモデルとなり、SGHアソシエイトをはじめ次年度以降にSGH指定を目指す学校にいい影響を与えることも期待されます。

 東京大学が推薦入試を、京都大学が特別入試を導入することに象徴されるように、大学側にもこれまでのような受験競争を中心としていたのではグローバル人材は育たない、という危機感が広がっています。教育再生実行会議や中央教育審議会で1点刻みではない多面的・総合的な大学入試が検討されていることも、その一環です。高校側にも、受験指導を最優先にした発想や指導の在り方を改めなければ、国内にもますます入り込んでくるグローバル化についていけなくなる――と言っては言い過ぎでしょうか。

 

【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/