教育トピック

教えて!「日本の若者の自尊感情」

日本の若者は、自尊感情が低いとよく指摘されています。下村博文文部科学相は、高校生の自己肯定感が低いことを「我が国の危機的状況」の一つに挙げているくらいです。そうした自尊感情の低さは、何によっているのでしょうか。


 自尊感情に関しては、その国の文化的・社会的背景によって大きく左右される側面があります。ただし、他国と比較すれば、日本の若者の特徴が浮かび上がってくることも確かです。

 内閣府が先ごろまとめた2013年度「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(13~29歳が対象)によると、「私は、自分自身に満足している」と答えた割合は45.8%で、70%を超える他の国(韓国、米国、英国、ドイツ、フランス、スウェーデン)よりも際立って低くなっています。とりわけ「どちらといえばそう思う」を除けば、7.5%しかありません。日本の若者は、やはり国際的にみて極端に自尊感情が低いことは確かなようです。

 ただし、その裏返しとして「自分は役に立たないと強く感じる」と答えたのは、日本、韓国、米国、英国がいずれも50%前後、ドイツ、フランス、スウェーデンが20%台となっており、自己有用感という側面で見れば日本だけ低いというわけではありません。

 ただ、詳しく分析すると、また違った日本の特徴が見えてきます。北海道大学大学院の加藤弘通准教授によると、「自分への満足感」と自己有用感に相関関係があるのは日本だけでした。また、「人は信用できないと思う」ほど、満足感も低くなっています。

本の若者の自尊感情

 「自分への満足感」が「長所」や「主張性」「挑戦心」によって高まることは各国共通なのですが、日本の場合は「自分は他者にとってどうであるか?」「自分にとって他者はどうであるか?」に影響されている、というのが加藤准教授の見立てです。つまり、他者との関係によって自尊感情が左右される、というのが日本の若者の特徴なのです。

 さらに加藤准教授の分析によると、日本の若者の「自分への満足感」は友人関係の満足感・安心感に強く関連しているとともに、家庭や学校への満足感と比較的高い相関がみられました。学校や家庭での人間関係が、自尊感情を高めるカギになっていると言えそうです。

 しかも日本の子どもの自尊感情は、いつまでも低いわけではないようです。国内を対象にした別の内閣府調査(2013年度「小学生・中学生の意識に関する調査」)では、8年前(2006年)の前回調査に比べて親子関係や友人関係が良好になっており、それに伴って「自分に自信がある」と回答した割合が11.4ポイント以増えて49.9%になりました。国際的にみればまだまだ低いものの、改善の兆しは着実に表れているのです。

 かといって、手放しでいいとはいえません。先の国際比較調査では加藤准教授によると、女子では「自分への満足感」が15歳と24歳で著しく下がり、自己有用感は18歳と22歳で下がります。男子でも15歳で自己有用感が下がるといいます。

 進学や就職といった契機によって、自尊感情が左右されることが見て取れます。自尊感情を高めるには、こうした進路選択の時期にどう支援をするかにかかっている、とも言えるでしょう。

 自分に自信のない者が、勉強でも仕事でもいい成果を上げられるわけはありません。国際比較調査でも「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」と回答した日本の若者は48.0%と、スウェーデン(61.7%)より10ポイント以上低く、80%前後の他の5カ国にも大きく水をあけられています。グローバル化時代を考えれば、もっと自分に自信を持たせ、堂々と主張したり話し合ったりする能力が不可欠でしょう。キャリア教育の視点からも、学校の大きな課題だと言えそうです。

 

【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/