教育トピック

教えて!「二つの新テストの今後」

高大接続システム改革会議の「中間まとめ」が9月15日、正式に公表されました。座長一任を取り付けた同会議の前回会合(8月27日)から半月余りを経ても、大筋は変わっていません。改革の目玉である二つの新テストは今後、どうなるのでしょうか。

教えて!「二つの新テストの今後」

 

 今回の高大接続改革をめぐっては、入試改革にばかり関心が集まりがちですが、もともとは大学教育を改革する必要性から、高校教育と、その間にある大学入学者選抜を「三位一体」で改革することを目指したものです。二つの新テストは、そのためのツールとして構想されたもので、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」は高校教育の質保証策として知識・技能を中心に、「大学入学希望者学力評価テスト(同)」は大学入学センター試験の後継テストとして、大学入学段階で求められる思考力・判断力・表現力を中心に測り、各大学の個別選抜では主体性・多様性・協働性を含めた多面的・総合的評価によって入学者選抜を行えるようにしよう、というものです。

 しかし、中央教育審議会で審議していた昨年の段階でも、二つの新テストについて、必ずしも実現可能性の見通しが立っていたわけではありません。当時から専門家の間では、技術的な困難が多々あることが指摘されていました。

 実際、昨年12月の中教審答申で提言していた学力評価テストの「合教科・科目型」「総合型」の出題は、教科・科目を超えた思考力等を測ろうというものでしたが、中間まとめでは後退したようで、次期学習指導要領の下(2024年度以降)でも、必履修科目の「情報」とともに、新たな選択科目「数理探究(仮称)」を加える程度で、地歴、公民、数学、国語、英語といった従来の教科の枠組みはそのままです。

 基礎学力テストに関しては、中教審段階では推薦・AO入試や就職などの評価に使うことを容認していましたが、中間まとめでは、現行指導要領下(19~22年度)はその結果を原則として大学入学者選抜や就職に用いず、「本来」の目的である学校改善のために使いながら、その「定着」を図るとしています。

 新テストについて文部科学省は、実施時期が1年早い基礎学力テストでプレテストを含めて先行的に試行錯誤を重ねながら、技術的な困難を克服しつつ、学力評価テストの円滑な実施に入りたいと考えていた節があります。しかし、基礎テストの扱いに関する軌道修正は、あと5年ほどで技術的な問題を克服する見通しがいまだ立っていないことを図らずも示した、とみることができなくもありません。

 学力評価テストでは、現行指導要領下(20~23年度)は「短文記述式」、次期指導要領下では「より文字数の多い記述式」の問題を導入するとしています。しかし短文記述式でさえ、現行のセンター試験で導入しようとすれば、受験料を大幅に引き上げなければならないほどコストが掛かるという見方も、専門家の間にはあります。文字数が多くなれば、採点基準でさえ統一が難しくなることは必定です。

 そもそも思考力等を測るテストで問題の難易度を広範囲に設定できるのか、昨年の段階で専門家から疑問が出されていました。中間まとめでは、その基本方針は変えないものの、テストの難易度自体が上がる可能性があるという指摘や、「選抜性の高い大学には高難度の問題を選択できるようにする」との追加提案も添えています。

 このほか複数回実施や、コンピューター使用型テスト(CBT)、多数ストックされた問題から出題する「項目反応理論(IRT)」方式の導入など、新テストの肝だった構想にも技術的困難さを指摘する声が根強くあります。

 中間まとめを受けて、これから始まる関係者の意見交換も含め、年内の最終報告までにどのような提言がなされるのか、注視が必要です。高校側も、生徒の成長と将来を見据えて、より良い高大接続改革となるよう、建設的な意見を述べていく姿勢が求められるでしょう。

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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/