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福知山公立大学 井口和起 学長

(2016年12月5日更新)

北近畿“10 市 4 町”の公立大学
地域で学び、地域に提案する
フィールドワークを展開

「福知山市立大学」ではなく、「福知山公立大学」として開学

 2016年4月、福知山公立大学が開学しました。手続き上は前身校からの設置者変更ですが、我々としてはまったく新しい公立大学をつくるという認識です。設置の背景には市民の要望がありました。市議会でさまざまな議論を経て、最終的にはこの地域に4年制大学が必要という結論になり、新しい公立大学が誕生しました。
 本学の基本理念は「市民の大学、地域のための大学、世界とともに歩む大学」です。ここでいう地域とは、地元の福知山市だけを意味しません。京都府北部には福知山市を含めて5市2町の自治体があります。兵庫県但馬、丹波地域を含めた「北近畿」では10市4町となり、全体の人口はおよそ60万人です。本学は、これだけの人口規模がある北近畿に拠点を置く唯一の4年制大学として、少なくとも10市4町を地域ととらえ、その地域全体に役立つ大学づくりをめざしています。「福知山市立大学」ではなく、わざわざ「福知山公立大学」としているのはそのためです。したがって、大学運営において周辺自治体のご支援・ご協力は欠かせません。だから私の最初の仕事は、10市4町の首長さんや教育長さん、高等学校、商工団体など、さまざまな団体・機関にご挨拶回りをすることでした。幸いにも北近畿一円から大きな期待を寄せていただいていることを実感しています。

公務員、民間、NPO、医療機関などで活躍

 本学は「地域経営学部」に「地域経営学科」と「医療福祉経営学科(名称変更届出予定=収録時点)」を設置する1学部2学科構成です。「地域経営学科」は公共経営系、企業経営系、交流観光系の3分野を展開します。
 卒業後の活躍領域としては、地方自治体のほか、各種国家機関、大企業から地場産業の後継者まで幅広い民間企業、地域ごとの課題解決に取り組む組織としてのNPO、さらに観光分野では従来型の観光だけではなく、地域の魅力を掘り起こし、観光を通じて地域再生・活性化を図る人財を育成していきたいと思います。「医療福祉経営学科」は学科単位としては公立大学で唯一、診療情報管理士資格をめざせる学科です。医療・福祉に関する経営感覚をもった職員を全国に送り出したいと考えています。
 活躍する地域は北近畿10市4町に限らず、日本の他の地域、あるいは世界の他の地域まで広く想定できます。福知山と同様の問題を抱えている地域は数多く存在します。この土地で課題をじっくり研究し理論化できたとき、それは普遍的な科学となります。そうなると世界に通用する。本学では世界を視野に地域で活動できる人財を育成したいと考えていますが、それは真理の探求という意図を込めてのものです。

毎週金曜日は丸一日、地域社会で学ぶ「実践教育DAY」

 「地域経営学部」の大きな特色は、北近畿全体をキャンパスと捉えた、年間を通じての地域社会での取り組みです。地域社会のさまざまな現場に足を運び、問題を発見し、地域振興・活性化につながる提案をめざします。
 1~2年次には「地域経営演習」という枠組みで、企業、自治体、マチやムラなど、生業と暮らしの現場に出向き、地域の課題を調査・分析するための基礎力を身につけます。3年次からは「地域経営研究」というゼミ科目となり、企業、自治体、農家、物流、港湾、観光などの幅広い対象からテーマを絞り込み、地域と一緒になってそれぞれの課題解決に取り組み、4年次の卒業研究に発展させます。
 この活動のために本年度は毎週金曜日を「実践教育DAY」に設定し、この日は丸一日を地域社会でのフィールドワークにあてます。学内にいる日でも一般的な講義ではなく、これまでの成果をまとめたり、議論をしたりするといった時間の使い方をします。必要な座学などの学習はそれ以外の曜日に集約することになりますが、こんな時間割の組み方は全国でもそうないはずです。この方法をとったのは、仮に2コマをつぶして市内を往復したとしてもわずか3時間。実質的にフィールドワークを行ったことにはなりません。夏休みだけとなると一過性の取り組みになっていまいます。年間を通じて腰を据えて活動することで、地域の課題も見えてくるはずですし、何より地域の方々との信頼関係を築くことにつながります。

地域づくりと大学づくりの一体化をめざす

 本学は地域で学び、地域に提案することに取り組む試みを行っているのですが、そこには、大学づくりは地域づくりと一体であるという考えがあります。本学のやり方が本当に地域貢献になるか——大きな実験ではありますが、本学の教育・研究の場に地域住民も学び教える主体として参加する。この形をつくることで、地域づくりと大学づくりが一体化できます。それを達成することが我々の存在意義だと考えています。

北近畿と全国から学生が集まる大学に

 新しいトピックとして、国立大学法人京都工芸繊維大学(京都市左京区)が本学の隣接地に「北京都分校(仮称)」を設置されます。これまでに何度も話し合っており、オープンキャンパスも共催するなど、今後文系・理系の2大学で連携を図ることで、新たな分野を切り開いていきたいし、将来は大学院レベルの研究を一緒にめざしたいですね。
 2017年度から本学は入学定員を120名に増やし、入試も大学入試センター試験を中心とする国公立大学型の方式に切り替えます。現在、本学の入試を経た入学生はまだおりませんので、私としては今年は初年度ではなく0年度と位置づけております。0年度のいま初年度に向けて、前身校からの先生も公立大学になってからの新しい先生も、ともに意欲に燃えています。北近畿10市4町の大学として、この地域から支持される大学であるとともに、全国から学生が集まる大学にしていきます。



井口 和起氏

【Profile】

井口 和起(いぐち・かずき)氏
1940年京都府福知山市生まれ。1963年京都大学文学部卒業、1966年京都大学大学院文学研究科博士課程中途退学。京都大学助手、大阪外国語大学(現大阪大学)助教授、京都府立大学教授を経て京都府立大学学長に就任。京都府立総合資料館館長、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)会長、京都府特別参与なども歴任。専門分野は歴史学。主な著書に『日露戦争の時代』、『日本帝国主義の形成と東アジア』、『京都観光学のススメ』(共著)などがある。2016年4月より現職。

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