教育トピック

教えて!「新テスト全貌現る?①“入試対策”はどうなる?」

 大学入試センター試験の後継となる  「大学入学共通テスト」(仮称、以前は「大学入学希望者学力評価テスト」)の実施方針案がようやく文部科学省から示され、現在 パブリックコメント(意見公募手続)が行われています(6月14日まで)。今の中学校3年生からが対象ですから、高校もうかうかしていられません。どう“対策”を講じるべきなのでしょうか。


教えて!「新テスト全貌現る?」

 まず注意したいのは、今回示されたのが、「高大接続改革の進捗(しんちょく)状況」だということです。具体的には①「高校生のための学びの基礎診断」(仮称、以前は「高等学校基礎学力テスト」)実施方針の検討素案 ②共通テストの実施方針案 ③2021年度大学入学者選抜実施要項の見直し予告案――の三つについて、背景を説明する「論点」や「考え方」などとともに示しています。パブコメの意見や、関係団体との協議などを経て、6月中にも正式な策定・公表にこぎつけたい考えです。

 新テストも、高校教育・大学教育・大学入学者選抜を一体で変える「高大接続改革」の一環として創設されるものであることを、忘れてはいけないでしょう。そこでは、高校教育と大学教育を「学力の3要素」(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性)でつなぎ、高校までに身に付けさせた学力を、共通テストはもとより個別選抜も含めてバランス良く評価し、大学入学後の教育でさらに伸ばして、社会に有意な人材として送り出そう――という考えの下に構想されています。

 さらに言えば、これまでの論議で、現行学習指導要領下での新テストにも次期指導要領(22年度入学生から全面実施、新テストは24年度から対応)の趣旨を先取りする位置付けが与えられていることは、見逃せません。

 そうした目で「進捗状況」を眺めると、また違った見方ができそうです。とりわけ新たに導入される記述式では、つい正答するための「試験対策」を考えてしまいがちですが、国語にしても「論理(情報と情報の関係性)の吟味・構築」「情報を編集して文章にまとめること」(実施方針案)などは、次期指導要領で求める思考力・判断力・表現力等の事項と共通するものです。

 今どきの高校生に、思考力を働かせ、まとまった文章を展開させるよう指導するのは、並大抵ではないかもしれません。しかし、よく考えれば現行指導要領でも、国語はもとより全教科・領域等で「言語活動」の充実が求められているはずです。各単元で愚直に言語活動に取り組み、生徒に書かせる機会を多く与えることが、実は記述式問題への最も有効な“対策”ではないでしょうか。

 記述式にばかり目を奪われがちですが、思考力・判断力・表現力を中心に評価しようとする新テストでは、マークシート式問題も変わることを見逃してはなりません。「考え方」には、▽問題解決のプロセスを自ら選択しながら解答する部分が含まれるようにする ▽複数のテキストや資料を提示し、必要な情報を組み合わせ思考・判断させる ▽分野の異なる複数の文章の深い内容を比較検討させる ▽学んだ内容を日常生活と結び付けて考えさせる ▽他の教科・科目や社会との関わりを意識した内容を取り入れる――などが示されています。裏を返せば、そういう授業を普段から実施しておくことが求められている、ということです。

 タテマエのような話ばかりで恐縮です。しかし「高大接続」という壮大な教育改革には、むしろ学力の3要素ないしは資質・能力の三つの柱をどう育むかという正攻法で臨む方が、対策の王道になるのではないか――。そう思えて仕方ないのです。

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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/