教育トピック

教えて!「新学習指導要領のなかのキャリア教育」

  高校の新学習指導要領案が14日に公表され、3月15日までのパブリックコメント(意見公募手続)を経て、年度内にも正式に告示される見通しとなりました。今回の改訂では、高校だけでなく小・中学校の総則に「キャリア教育」が盛り込まれた点でも画期的なものです。今後のキャリア教育を、どう考えればいいのでしょうか。

教えて!「新学習指導要領のなかのキャリア教育」


高校の新指導要領案の総則では、まず、「第2款 教育課程の編成」の「3 教育課程の編成における共通的事項」に(7)として「キャリア教育及び職業教育に関して配慮すべき事項」が立てられ、「就業体験活動の機会を積極的に設けるとともに、地域や産業界等の人々の協力を積極的に得るよう配慮するものとする」とされています。同種の規定は、現行指導要領でも「第5款 教育課程の編成・実施に当たって配慮すべき事項」の「4 職業教育に関して配慮すべき事項」の中にありますから、そう大きく変わってはいないようにも思えます。ただ、キャリア教育と職業教育が並列になっている点に注意すべきでしょう。

 それよりも重要なのは、「第5款 生徒の発達の支援」です。ここには(3)として「生徒が、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう、特別活動を要としつつ各教科・科目等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ること。その中で、生徒が自己の在り方生き方を考え主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、組織的かつ計画的な進路指導を行うこと」とされています。

 実はこうした規定が、昨年3月に告示された小・中学校の指導要領にも設けられています。児童生徒が「学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう、特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ること」という一文です。中学校には「その中で、生徒が自らの生き方を考え主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、組織的かつ計画的な進路指導を行うこと」という高校と同様の記述も続いています。

 こうした改善について、進路指導やキャリア教育に関心を持って熱心に取り組んできた先生方なら、「やっと自分たちがやってきたことが認められた」と喜ぶところでしょう。しかし、依然として「キャリア教育は職業教育の一環であって、進学校には関係ない」と思い込んでいる多くの先生は、意外に思うかもしれません。それどころか教務主任などを除いて、総則を隅々まで読むこと自体が少ないのが実態でしょう。

 しかし、今回の改訂では、総則が今まで以上に重要な意義を持っています。各教科で規定される「資質・能力の三つの柱」(①知識・技能②思考力・判断力・表現力等③学びに向かう力・人間性等)も、総則を読まなければ、真の理解ができないからです。学校種を貫いて教科横断的に共通の柱を定め、特別活動などはもとより教育課程外の部活動なども含め、学校教育全体で資質・能力を育成していこうというのが、改訂全体の方針です。

 文部科学省も今回の改訂のポイントとして、育成を目指す資質・能力を社会と共有して連携する「社会に開かれた教育課程」(総則前文)を重視していること、高大接続の中で実施される改訂であることなどを挙げています。数学や理科でも、日常生活や社会との関連を重視しています。

高校までの学びの内容を学校教育の中だけにとどめるのではなく、キャリア教育の視点から、社会に出てからも生きて働く資質・能力にまで高めなければならないことが、より明確になったと言えます。ましてや高大接続改革の一環で大学入学者選抜も変わるのですから、「大学受験があるから、授業は変えられない」という言い訳は、もう通用しないのです。


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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/