教育トピック

教えて!「『学びの基礎診断』いよいよ始動」

 2019年度から活用が始まる文部科学省の「高校生のための学びの基礎診断」に申請のあった初年度の測定ツール審査が間もなく終わり、10~11月には認定される見通しです。高大接続改革をめぐっては、大学入学者選抜改革に関わる「大学入学共通テスト」ばかりが注目されますが、高校教育改革に関わる学びの基礎診断も、同様に重要なはずです。どのようなものになるのでしょうか。


教えて!「『学びの基礎診断』いよいよ始動」


 高校教育改革をめぐっては、文科省の「高大接続システム改革会議」最終報告(2016年3月)が、①教育課程の見直し ②指導方法の改善と教員の指導力向上 ③多面的な評価の推進――の観点から進めることを提言しています。このうち学びの基礎診断は、直接には③の一部を担うものですが、①や②を進めるためのツールとしても期待されています。

 これまでも各高校などの判断で業者テストなどのツールが活用されていますが、文科省は、認定された測定ツールを活用するメリットについて、▽受検者個人だけでなく、学校等へのフィードバックも重視し、PDCAサイクルの取り組みの促進に資する ▽思考力・判断力・表現力等を丁寧に把握できる記述式問題の出題を必須とし、原則として英語4技能を測定する ▽学習指導要領に照らしてどのような資質・能力を測定するのか、出題の設計図に当たる「測定しようとする資質・能力の具体的内容」を民間事業者に明らかにしてもらい、情報を公表することを通じて、学校等が自らの実情にふさわしい測定ツールを選択できる――を挙げています。

 学びの基礎診断には、義務教育段階の学習内容の定着度合いを測定することを重視した「基本タイプ」と、高校段階の共通必履修科目の学習内容の定着度合いを測定することを重視した「標準タイプ」があります。対象教科は当面、国語・数学・英語の3教科に絞られます(新指導要領の全面実施に合わせて拡大を検討)が、都道府県の学力調査や校長会の検定試験など多様なツールも組み合わせ、各高校の実態に応じて、生徒に基礎学力の確実な習得と学習意欲の喚起を図るとともに、学校としても基礎学力の定着に向けたPDCAの取り組みを推進してもらいたい考えです。

 申請は毎年受け付けることにしていますが、初年度分として9団体27件の申請がありました。具体的には、国数英3教科のセットが3団体10件(基本タイプ4件)、教科単独のツールは国語2団体5件(同2件)、数学2団体5件(同1件)、英語5団体7件(同3件)となっています。

 既に高校では、来年度の計画を立てる準備に入っていることでしょう。文科省は、申請を締め切った直後の段階から測定ツールの基本情報をホームページ(HP)に載せており、早めの検討がしやすいよう配慮しています。

 活用するかどうかは任意のため、どうしても共通テストに比べると注目度は高くないのも事実です。そんな状況に対して、「堀川の奇跡」で知られる元京都市立堀川高校長の荒瀬克己・大谷大学教授(「高校生のための学びの基礎診断」検討ワーキング・グループ座長)は、事あるごとに基礎診断が高校にとって共通テストに負けず劣らず重要であることを強調しています。3日に行われた大学入試センター主催のシンポジウムでも、高校にとっても「目標」から「現状」を引けば改革すべき「課題」が見えてくるとして、現状把握のためにも学びの基礎診断を積極的に活用するよう呼び掛けていました。

 大学など上級学校に進学するにも、入学してから必要な基礎学力を高校でしっかり身に付けさせることが不可欠です。荒瀬教授が言うように、「観」を養い育てる本来の高校教育に立ち戻るためにも、基礎診断を有効なツールとして活用してほしいものです。


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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/