教育トピック

教えて!「『新時代に対応した高校改革』って?」

政府の教育再生実行会議が1月末にまとめた中間報告が、高校関係者に波紋を広げています。普通科を類型化するなど「新時代に対応した高等学校改革」を打ち出したからです。今後の高校教育はどうなるのでしょうか。

教えて!「『新時代に対応した高校改革』って?」

 第2次安倍政権の下で設置された「教育再生実行会議」も開始から6年を過ぎ、5月にもまとめる第11次提言に向けた検討を進めています。①技術の進展に応じた教育の革新 ②新時代に対応した高等学校改革――という二つのワーキンググループ(WG)を設けて専門的な検討を行っており、今回の中間報告も①と②の両方に関するものです。

 このうち②に関しては「学科の在り方」として、生徒の約7割が在籍する普通科の類型化を検討するよう提言しています。今年初めに「政府・自民党」が「サイエンス学科」「チャレンジ学科」の設置を見込んでいるという一部報道もありましたが、中間報告にはそうした具体的なことは書いてありません。今後のWGの動向が注目されます。

 ただ、学科再編の提言には少し違和感もあります。2011年11月に中教審の初等中等教育分科会の下に「高等学校教育部会」が設置されて以来、高校改革は1990年代の制度面という「ハード」から教育面という「ソフト」へと、新たなステージに移行したとみられていたからです。同部会では一時、文部科学省事務局が▽主として社会経済活動の基盤を担う人材に必要な資質・能力の育成を目指す学校 ▽主として専門的職業人に必要な資質・能力の育成を目指す学校 ▽主として社会におけるリーダー層やグローバル社会において国際的に活躍できる人材に必要な資質・能力の育成を目指す学校 ▽主として芸術・スポーツ等の特別な才能を伸ばすことを目指す学校 ▽主として自立して社会生活・職業生活を営むための基礎的な能力の育成を目指す学校――に類型化することを提案したものの、委員の評判が悪く、途中で撤回されたこともありました。

 一方で実行会議の中間報告には、普通科に関してもう一つ注目すべき言及があります。「文系科目・理系科目のどちらかに偏重することなく両方をバランスよく学ぶ仕組みを構築する方策」も検討する、としている点です。

 「文理分断からの脱却」なら、文科省が昨年6月に公表した省内タスクフォース(特別作業班、TF)報告「Society 5.0 に向けた人材育成~ 社会が変わる、学びが変わる ~」でも提言されていたことです。確かに人工知能(AI)をはじめとした第4次産業革命と呼ばれる時代に対応するためには、文系・理系を超えた知が求められます。

 そう考えると、実は②新時代に対応した高等学校改革 の課題は①技術の進展に応じた教育の革新 と連動している、とみるべきでしょう。そこでは、▽Society5.0 を迎える中、国、地方公共団体は、基礎的読解力や数学的思考力などの基盤的な学力や、あらゆる学びの基盤となる情報活用能力の育成を目指す。特に、今回充実されたプログラミングやデータサイエンスに関する教育、統計教育の着実な実施を図る。また、新たな社会を牽引する人材、地域を支える人材の育成を推進する ▽国は、幅広い分野で新しい価値を提供できる人材を養成することができるよう、STEAM教育(Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics 等の各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育)を推進するため、「総合的な学習の時間」や「総合的な探究の時間」、「理数探究」等における課題解決的な学習活動の充実を図る――としています。

 学科の制度的な類型化が提言されるかどうかは別として、こうしたソフト面での文理融合的なカリキュラムの編成や授業改善が、今後、新学習指導要領の改訂と高大接続改革の進展と相まって、高校現場の課題として迫ってくることでしょう。STEAM教育を含め、既にその動きは始まっています。




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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/