教育トピック

教えて!「高校の大学への期待とは?」

リクルート進学総研が「高校教育改革に関する調査」の結果を発表しました。
高大接続改革の一環としての大学入試改革が始まる2020年度まで、あと1年。高校は、大学に何を期待しているのでしょうか。

教えて!「高校の大学への期待とは?」

 実際に生徒を預かる高校にとって、大学入試センター試験に代わる「大学入学共通テスト」や、個別大学の入学者選抜がどう変わるかは、大きな関心事です。しかし、共通テストに伴って実施される「大学入試英語成績提供システム」にしても、大学入試センターが認定した民間の英語資格・検定試験(認定試験)の扱いをめぐって東京大学の方針決定が遅れた影響もあって、各大学の詳細は必ずしも明らかになっていません。ましてや個別選抜で「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」まで含めた学力の3要素をどのように評価するのかになると、まだ大学自体が困っているというのが現状でしょう。

 そうした状況を踏まえて調査の「高大接続改革」編を見ると、各大学の個別選抜改革で気になることの1位に「英語の4技能評価の導入」(66.7%)、2位に「主体性等評価の導入」(57.0%)――が挙がったことは、当然と言えるでしょう。3位の「総合型選抜・学校推薦型選抜での学力評価の必須化」(48.3%)にどう対応するかも含め、大学側には一刻も早く明確な方針を示してもらいたいものです。

 特に英語の認定試験は、来年4月から受検が可能になります。認定試験の実施団体には検定料の引き下げや受検会場の拡大などの検定を急いでほしいものですが、そのためにも大学側が求める認定試験の種類やレベルを明示する必要があります。

 大学のアドミッション・ポリシー(入学者受け入れの方針、AP)に関しては高校教員の91.1%が認知しており、そのうち57.0%が進路指導で「活用している」と回答しています。高校側にもAPの重要性への認知は広がっています。一方で、高大接続・連携の観点から大学・短大に期待することとして最も多かったのも「わかりやすい入学者受け入れ方針」(43.8%)です。また、「卒業時に身につく能力の明確化」(37.4%)、「主体性等の評価方法の明確化」(37.2%)が上位に挙がっていることにも注目すべきでしょう。

 言うまでもなくAPは単独で存在するものではなく、カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針、CP)やディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針、DP)と一体で策定されるものであり、とりわけDPからCP→APが導き出される、というのが本筋です。その大学が▽社会にどんな卒業生を送り出したいのか ▽そのために4年間でどんな教育を行うか ▽だからこそ、どういう資質・能力を身につけた入学者が欲しいのか――という大学のポリシーを高校生にも分かりやすく示してこそ、進路指導での活用が可能になります。この点でも、大学側の一層の努力が期待されます。

 共通テスト対策としても、「アクティブラーニング型授業を増やす」との回答が64.6%と最も多くなっています。調査の「アクティブラーニング型授業」編を見ても、90.4%の高校がアクティブラーニング型授業を導入しており、「学校全体で組織的に取り組んでいる」との回答は29.3%ですが、2014年調査に比べ3倍になっています。

 もともとアクティブラーニングは大学教育の手法(能動的学修)であり、高校までの「主体的・対話的で深い学び」を通して育成した三つの柱に基づく資質・能力(①知識・技能 ②思考力・判断力・表現力等 ③学びに向かう力・人間性等)を、大学のアクティブラーニングでさらに伸ばして、社会に有意な人材を送り出す――というのが、高大接続改革の肝です。大学側には、そうした「教育接続」の姿が明確になるようなAPと具体的な入学者選抜の在り方を、具体的に明示してほしいものです。


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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/