大学・短大トップインタビュー

学校法人平成医療学園 理事長 岸野雅方氏

2020年4月、和歌山県に新学部設置を予定。
地元で学び、地元で活躍する医療人を育成する。


業界が自ら後継者を育てるために設置した学園
 学校法人平成医療学園は2000(平成12)年に全国柔整鍼灸協同組合(全柔協)が母体となり設立されました。全柔協は約4200名の会員を擁する業界団体で、その治療家たちが自ら後継者を育てたいという思いから教育機関の設置に尽力しました。柔道整復師の養成校は今でこそ全国で約100校も設置されていますが、2000(平成12)年以前はわずか14校の専修学校だけで、大阪以西には学校がありませんでした。例えば九州の人が柔道整復を学ぶためには大阪へ出て学ぶ必要があり、なかには倍率の高い大阪を避けて東北まで出向くケースもあったほど学校が少なかったのです。そうした時代に、全柔協の会員が我々の手で学校を作ろうと、政府と難しい交渉を重ねた末にできた学園です。
 2011(平成23)年には、高等教育機関として大学教育も担う必要があると考え宝塚医療大学を開学しました。宝塚医療大学は保健医療学部に理学療法学科、柔道整復学科、鍼灸学科の3学科を設置。理学療法士、柔道整復師、鍼灸師(はり師・きゅう師)に加えて、アスレティックトレーナー資格および保健体育教員(中学・高等学校一種)免許状も取得できる課程を開設しています。理学療法学科がありますので、東洋医療と西洋医療の両方の教育を手がける大学です。両分野には手技など共通する知見がたくさんあり、究極的には共に患者さんの健康を担う立場ですから、わけて考える必要はありません。実際、本来東洋医学の領域である漢方薬が西洋医学で使用されるようになるなど、垣根はなくなりつつあります。学園設置校には看護師、歯科衛生士の養成課程もありますが、すべて同じ思いであり、どの学科においても学生が社会に出ていかに人に役立てるかを本分に考えています。

現場との連携で学べる教育体制。開業支援も充実
 業界による後継者育成という位置づけの学校だけに、現場との連携のもと学べる特色があります。私が全柔協の理事長も務めているため、業界との密接な関係を活かして大学、専門学校とも実習を受け入れていただいています。柔道整復師、鍼灸師には医師のような臨床研修制度はありません。それでも学生のうちに現場で経験を積むことは大切であり、開業時にその体験が必ず役立ちます。また、本学ならではの仕組みとして卒業後の開業支援も実施するなど、学生が将来資格を活かして現場に立てるよう徹底したサポートを行っています。
 国際性も特徴の一つです。建学の理念<徳義の涵養と人間性尊厳の実践を理念とし、医療人たる社会的責務を自覚せしめ、国際社会に伍して恥じぬ恒心をもつ、有徳の人材を育成する>にも国際性という要素が盛り込まれています。その一環として専門学校に日本語学科を設置し、留学生の受け入れを行っています。医療系専門学校が開設する日本語学科だからこそ可能な教育を展開しており、日本語を学ぶとともに日本の医療系大学および専門学校に進学して、介護職などの国家資格を取得のうえ、日本で就職を目指すコースを設けています。日本だけではなく高齢化の進展が見込まれる諸外国は多くあります。日本で働くことで高い技術を身につけ、いずれは母国で活躍してもらいたいと思っています。他方、大学では外国で学ぶ機会を用意しています。協力提携校であるデ・ラ・サール大学(フィリピン)およびホーチミン市医科薬科大学(ベトナム)において、国内では見学しかできない解剖実習に参加して、人体構造に対する理解を深められるようにしています。

リーダーシップを身につけた治療家を育成
 本学が目指しているのは、業界におけるリーダーの育成です。リーダーとは、あの人のようになりたいと目標にされる存在であり、業界内で先鞭をつけられる仕事ができる治療家です。目標とされる人間になるには高度な技術はもちろん、その人なりの道徳をもたなければなりません。医は仁術なりと言われますが、仁とはどういう意味か。それは、やらない勇気だと思います。この施術をすれば患者さんが楽になるかもしれない。同時に悪化を招く危険もある。治療をするなかで、そういう状況に遭遇します。そのとき人間は得てしてチャレンジしようするのですが、それが果たして患者さんのためになるのか。皆がやっているからという付和雷同の姿勢は、医療の世界では禁物です。そうした倫理観を携えたリーダーシップを日本人学生、留学生ともに身につけさせたいと考えています。
 大学の入学式で新入生、保護者の前でよくお話しするのは、皆さんは4年後には資格を取って先生と呼ばれる人になります。先生と呼ばれるからには他者から尊敬される存在にならないといけません。それには普通の社会人以上に自らを厳しく律する態度が欠かせない。だから本学の4年間は厳しいし、その覚悟をもっていただきたい。我々もその思いで接する、と。最後にはこう言います。私自身、教育に携わるまでは治療家でした。何が嬉しいかと言えば、治療を終え患者さんから「ありがとう」と感謝されることが一番嬉しい。その日を目指してがんばりましょうと。患者さんに感謝される医療の仕事は、プライドがもて、一生やり続けるに値する職業です。これは高校生の皆さんにも、ぜひお伝えしたいことです。

和歌山県でリハビリテーション職を養成
 本学は2020年4月、和歌山県に「仮称・和歌山保健医療学部」リハビリテーション学科の開設を目指して準備を進めています。専攻は理学療法学専攻(60名・予定)と作業療法学専攻(40名・予定)です。和歌山は県内に大学が少なく、進学に際して多くの高校生が県外に流出する状況が続いています。それに歯止めをかけるには大学を作ることが一番の方法です。さらに県では、今後より進んでいく高齢化に備えて医療や介護の需要増加に対応する方針を固めています。ところが県内にはリハビリテーション職の大学および養成機関がなく、県が進めていた大学誘致に対して本学が手を挙げたというのが設置の経緯です。進出する以上は県にも学生にも迷惑はかけられません。多方面からさまざまな調査をし、リハビリテーション分野のニーズは十分にあると判断して新設を決めました。「仮称・和歌山保健医療学部」の開設により地元で学び、卒業後も地元にとどまって地域の医療に貢献できる人材を育成し、和歌山県の活性化に寄与できる学部にしていきたいと考えています。



岸野 雅方氏

【Profile】

岸野雅方(きしの・まさみ)氏

はり師・きゅう師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師として長年臨床に従事。2001(平成13)年より現職。
2015(平成27)年より宝塚医療大学学長、2017(平成29)年より学校法人札幌青葉学園理事長を兼務。
全国柔整鍼灸協同組合理事長、公益社団法人全国柔整鍼灸協会代表理事など業界団体の要職も数多く務める。

【宝塚医療大学の情報(スタディサプリ進路)】

大学・短大トップインタビューに戻る