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高津理容美容専門学校 校長 疋田康子氏

愛情をもって正しいことをきっちりと教え
基本姿勢をしっかりもった職業人を育てる


2019年に創立85年を迎える伝統校
 本校は1934(昭和9)年設立の大阪文化理髪学校を前身とし、1957(昭和32)年に私の曽祖父にあたる古武隆郎(こたけ・たかしろう)がその経営を引き継いだことに始まります。当時は美容業界の社会的地位は決して高くありませんでした。そうしたなか本校は、二宮尊徳の教えである“報徳”の考えを理念の基礎に据え、人材育成と同時に理美容業界の社会的発展に貢献する役割を担ってきたと考えております。
 現在の理事長は私の父、古武一成(こたけ・かずなり)です。父は就任当時より美容や専門学校に関する法や制度に関し、現実に将来業界をしょって立つ学生を教育・育成する立場から意見具申を行うことで、業界の向上・発展のため側面から働きかけてきました。父を含む現場の人々の努力により、長い時間をかけて業界のさまざまなことが改善されてきました。
 自分たちのことだけを考えるのではなく、常に現場の視点で考え、本当に社会で喜ばれ、求められる人材を育成すること、そしてその学生達が歩んでいく業界が希望に満ちた魅力あふれる場所となるよう改善・向上の努力を続けていくこと。“報徳”に根ざし、曽祖父、祖母、父と受け継がれたこの信念はそのまま本校の理念となっています。この考えをよく反映しているものが本校の理容・美容就職進学クラスで、サロンで働きながら給与で学費を払い、通信制ではなく昼間の学校に通うコースです。経済的理由で美容業に就くための教育が受けられない方のために創設したコースで、学生と業界双方の幸せを追求する本校ならではのものと自負しております。

まず土台となる基本精神を教える
 美容業界で活躍する職業人に必要不可欠な心の基本姿勢とは、粘り強さ(何事にも粘り強く取り組む姿勢)・おもてなし(相手の幸せのために動く姿勢)・感謝(相手への感謝の心をもつ姿勢)です。この心の土台があるからこそ、正しい技術・正しく心のこもった接客マナー・チームで正しく利益を追求する職業意識をその上に積み上げることができます。
 85年の伝統をもつ本校の何よりの強みは、日本人のDNAに刷り込まれている“人をもてなす心”の正しい形と、その修得に要する粘り強さとを身に付けるノウハウを、教員全員が把握し、愛情と熱意をもって教えるということです。そして教育を通して教員と学生の間にお互いへの信頼と感謝が芽生え、育っていきます。
 粘り強さ・おもてなし・感謝、この3つは新旧不変の基本姿勢です。スマホ世代の学生たちにこの3つの基本姿勢が心に沁みとおるまで倦まず弛まず、愛情をもって丁寧に教えることで、その後に積み上げていく教育内容が正しく落ち着き、血肉となっていくのです。

学生との信頼関係を大切に
 現場の視点を何よりも大切にする本校にとっては、サロンが“できて当たり前”と考える接客マナーを自然にできるように身に付けた状態で学生を卒業させるということが非常に大きな使命であり、教育の太い柱の一本でもあります。心のこもった挨拶と笑顔と清掃・正しい身だしなみと立ち居振る舞いと言葉遣い・思いやりと気遣い。これらが自然にできるようになるまでには、学生本人の努力はもちろんですが、教員の妥協を許さない熱意ある不断の指導が不可欠です。教員が目標を高くもち、できるまで徹底的に指導する姿勢は、技術に関しても接客マナーに関しても同様であり、ここに本校の最大の価値があります。この教育姿勢が業界で評価され、“お掃除学校”と呼ばれた時代もありました。今でも本校の卒業生は、マナーがきちんとしていて離職率が低いとサロンで高評をいただく理由は、この教育姿勢の賜物と自負しております。
 しかし、最初から頭ごなしに正しい形や理想像を説いても学生には伝わりません。人間は正しい人ではなく、好きな人の言うことを聞くからです。私が校長に就任して以来、先生方に繰り返しお伝えしていることは、先ず先生方から温かい笑顔を向け、声を掛けて、学生に愛情を伝えてほしいということです。そして一人ひとりに「自分は必要とされ、大切に思われている存在なのだ」と感じてもらうことで、学生と教員・学校の間に信頼関係を構築すること。ここからすべての教育が始まると考えています。

愛情をかけ、質の高い学生を育てる
 業界にとって『当たり前』のことを学生時代に身に付けることは、大変な努力を要することです。美容業では、小中高校で力を入れて教育していただく挨拶や清掃の数倍のクオリティの接客マナーを要求されるからです。これを全員ができるまで指導するのですから、学生にしてみればもちろん厳しく感じられると思います。しかしこれを、自分自身の人生のために本当に必要なものと認識できれば、厳しいと感じてもがんばることができます。実際本校の大半の学生は教員の指導の下で懸命に意識努力して素晴らしく成長し、巣立っていきます。その学生たちは、教員の指導が厳しいのではなく、辛抱強く丁寧なのであること、そしてそれは自分たちを大切に慈しみ応援する気持ちの表れであることに気づいてくれています。
 本校では全学生が、年賀状と暑中見舞いを理事長・校長宛に出すという習慣があります。これはスマホ社会にあって、ご来店いただいたお客様に手書きのはがきをお出しすることは最高のおもてなしのひとつになるということで、就職後のために学生にはがきの書き方を指導することを目的としています。今回も7月下旬には膨大な枚数の暑中見舞いがデスクに積み上がりました。もちろんすべて目を通します。
 手の込んだ絵や、自分ががんばっていることや成績を報告したさまざまな文章の中で、「笑顔で大きな声で挨拶をすると、自分もその日一日良い気分になります」「窓ガラスを手がすりむけるほどピカピカに磨いています」「相モデル実習でお互いに意見を述べ合うことでどれだけ大きな力がつくか分かりました」といった、本校の教育の効果を楽しみながら実感している言葉を見て、嬉しく、ありがたく思いました。
 愛情をかけ、信頼を築いて正しく伝えれば、学生は理解し実行し、自分の血肉に変え、素晴らしい成長を遂げてくれる。この信念のもと本校はこれからも、学生が成長するために必要なすべてのことを愛情と熱意をもって教え続けていきたいと切に思います。

今、業界で求められる人材像
 現在美容室の数は25万軒、理容室の数は13万軒、信号機より多いというのは有名な話です。大変な激戦状態で、縮小や撤退を余儀なくされるお店も少なくありません。もちろん各サロンでは、売り上げを伸ばすことを最大の課題としてさまざまな試みを行っています。
 美容業は人がすべて、つまりお店のスタッフが売り上げの最大のキーとなります。技術・接客の能力が高いことに加えて、オーナーやマネージャーと同じ視点で物を見、作業効率を考え売り上げを意識して動けるスタッフが多ければ多いほどお店は成功します。
 特に必要となってくるのが数字の感覚です。売り上げ・支出はもちろん、時間単位の働きをお金で考える意識など、アシスタントといえども、営業に際して数字の意識をもつことは効率的な働きをするうえで非常に大切なことです。競争の厳しい現在、技術・接客同様、サロンで望まれる能力だと思われます。
 本校の基本理念、“報徳”は元来、経済経営哲学です。そこで本校では経営学的視点を学生の内から意識してもらうため、“報徳”の授業や“運営管理”の授業を使って話をし、教養選択授業にもこのような内容を含む講座を取り入れています。簡単な内容であっても、知識があることは大きな強みです。
 もちろん経営の知識があるというだけでは役に立つ人材とは言えません。戦力になるには、数字から見えたことを全体で共有し、皆で考えてチームとして成果を出す必要があります。つまり、コミュニケーション力と協働力が今、現場でますます求められているのです。
 本校はクラス担任制をとっていますが、各クラスに学生役員を置き、さまざまな機会に役員を中心にクラス全体で考え実行するシステムになっています。各種行事等ではクラスが団結して企画実行し、行事を成功に導きます。これによってチームワークを学び、同級生との交流も深まり、卒業後も長く続く友情を構築します。専門学校には珍しいこのシステムが、将来サロンや関連団体での円滑なチームプレーと成功、ひいては業界の発展につながる力をつけるのです。
 私たちの役目は、学生たちの心にまっすぐなバネを装着して卒業させることです。バネとは、85年前と変わらない職業人としての基本精神、そして今の時代に求められる新しい能力。これらを身に付けた卒業生たちが将来大きく成長し、業界を牽引する力となること、それが本校教職員一同の幸せであり誇りとするところなのです。



疋田 康子氏

【Profile】

疋田 康子(ひきだ・やすこ)氏

1999年神戸大学医学部医学科卒業 医師免許取得、2001年美容師免許取得
2007年高津ライフケア専門学校(2016年閉校)校長就任
2017年より現職

【高津理容美容専門学校の情報(スタディサプリ進路)】

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