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学校法人 光華女子学園 理事長 阿部 恵木氏

人口減の時代に選ばれる大学になるため
オリジナリティを全面に打ち出していく


建学の精神は「仏教精神に基づく女子教育」
 光華女子学園のあゆみは、1940年に開設された光華高等女学校に始まります。創設者である東本願寺(真宗大谷派)の大谷智子裏方が「仏教精神による女子教育の場を」と願われて設立された本学園の建学の精神は、お裏方が名づけられた校名「光華」と校訓「真実心」に示されています。「光華」は、真宗の所依の経典『仏説観無量寿経』の水想観にある「其光如華 又似星月懸處虚空」(その光、光華の如し。また星月の虚空に懸處せるに似たり)からとられたもので、清澄にして光り輝くおおらかな女性を育成したいという願いを込めて名づけられました。また、校訓「真実心」とは仏の心、すなわち「慈悲の心」「摂取不捨の心」であり、現代の言葉に置き換えると、「思いやりの心」「他者への配慮」「共に支え合う心」と言えます。み仏の心に自らを問い、自我に偏しがちな生活を正し、慈愛に満ちた人として生きてほしいという願いが込められています。
 本学園では、この校訓「真実心」の実践として「光華の心」をもとうと学生や教職員に呼びかけています。「光華の心」とは、「向上心」「潤いの心」「感謝の心」の3つの心です。「向上心」というのは上を目指すといった一般的な意味ではなく、仏教でいう内観や内省、つまり「自己を問う」「自らを明らかにする」ということです。生活の中のいろいろな機会に、「あのときの自分の行動は本当によかったのかな」と「真実心」に照らして自分に問いかけてみる。すると他者に甘えていた自分、さまざまな方に支えられていた自分に気づく。その気づきが周囲のすべてのものに素直に「ありがとう」と言える「感謝の心」につながり、思いやりの心をもった言動、すなわち「潤いの心」が育まれると考えています。「光華の心」については、節目節目で思い起こしてほしいと、幼稚園から大学までの入学式や卒業式などで話をさせていただいています。しかし、人間であるからには常に「思いやりの心」をもつということは難しいことです。「光華の心」をもとうという心がけをもって生きることで、日々の生活の中で見える景色が少し変わってくる。そうした生活を送れる人になってほしいと願っています。

「寄り添う心」を大切にする教育は教職員の誇り
 建学の精神を基に本学園が実践していることが、学生に寄り添う教育です。この点は教育環境や支援体制によく表れています。京都光華女子大学では各学科にコモンズという学科の専門分野や国家試験対策、学生同士のグループワークなどに対応した自学習スペースを設置しています。教員の個人研究室に隣接しており、教員の動線上にあえて置くことで学生にとっては質問がしやすい環境を、教員にとっては学生の状況を把握しやすい環境をつくっています。コモンズが学科ごとの学習支援環境だとすれば、全学的な学習支援環境の拠点となるのが学習ステーションです。学習ステーションには専任教員のアドバイザーと併設高校の教員経験者の職員、そして上級生のピアサポーターを配置しており、大学での学びの第一歩となる基礎教養科目の学習支援や、小論文・レポートの書き方指導、大学での学び方の基礎をはじめ、資格取得支援講座やさまざまなセミナーを開講するなど、全学部を横断した支援を行っています。1、2回生は学習ステーション、3回生以降はコモンズを主に活用する流れができていて、共に利用率の高い施設となっています。学習スタイルの多様化にも対応して図書館にアクティブラーニングスペースを導入したほか、情報教室もアクティブラーニング型授業に対応し、さまざまな形のグループワークができるように改修しました。これらは他大学でも実施されていることですが、本学のような小規模の女子大学でここまで手厚い学習支援環境を整えている大学は稀だと思います。
 わからない学生を放置しない。学生一人ひとりのモチベーションや学力をしっかりと把握し引き上げていく。これが建学の精神に基づく本学の使命です。こうした「寄り添う心」を大切にする教育は、本学の教職員が誇りにしてきたことでもあります。

医療・福祉・栄養・スポーツ・心理の専門職連携をより強化していく「健康科学部」
 本学はかつて文学部中心の女子大学でしたが、現在は「こども教育学部」「健康科学部」「キャリア形成学部」の3学部(6学科)および「短期大学部」を設置し、医療、福祉、栄養、スポーツ、教育、心理、社会、マネジメント、ライフデザインなど幅広い分野にわたる人材育成に取り組んでいます。
 これから私学は本格的な淘汰の時代に入ることは明らかです。進学率が上昇したと仮定しても、相当数の大学の定員が充足しないことはわかっています。その状況で何をしていくべきか。特色を打ち出すことに尽きます。我々が特色と位置づけたことが高校生、保護者、高校の先生方のニーズとマッチングするとともに、いかに他大学にないオリジナリティを出せるかが重要です。特色づくりについて考えていることを挙げますと、例えば「キャリア形成学部」では、社会科学でありながら家政系や人文科学、自己表現なども取り込んだ特徴的な教育を行っています。この学部で学ぶことによって、社会科学全般における知識やモラル、社会人基礎力の習得は当然として、企業が採りたいと思うような一芸をプラスアルファとして身に付けさせたいと考えています。通常の総合職などとして採用される場合でも、例えば映像の編集ができる、イラストが描けるなどの得意分野を別にもてば、職場で幅広く役立てる人材となるわけです。
 「健康科学部」は2014年に現在の学科・専攻に改組し、看護師、言語聴覚士、社会福祉士、管理栄養士、公認心理士などの専門職を養成しています。多くの大学が看護学部看護学科、栄養学部栄養学科などの枠組みであるのに対して、本学の「健康科学部」は多職種を養成する構成になっており、専門職連携をメインにした展開を図っていくことが当初からのねらいでした。縦割りの個別的な教育ではなく、「人の健康に寄り添う」という観点からコ・メディカルの専門職を養成するというコンセプトです。そのためにも実現していきたいのが、「健康創造キャンパス構想」です。これは本学のキャンパスを、健康の維持・促進に関する情報提供や相談の場から子育ての支援まで、地域に暮らす人々をはじめ、在学生や保護者、教職員等がイキイキと健康的な生活を送るために、生活者の視点を重視したさまざまな取り組みを行う実践拠点とする試みです。例えば、認知症の予防には筋肉量が大切という知見が出ていますが、それには食事と運動が重要になります。そうした医療視点での予防、運動指導、栄養指導は本学の研究活動のフィールドになりますので、そこへ学生たちもコミットさせれば、専門職連携のあり方を実地で学ぶことになります。さらに本学の場合、そうした取り組みと並行して子どもの悩み相談や子育て支援も可能です。こうした構想が実現できれば、地域にとって大切と思っていただける大学となり、この大学なら行く価値があるという評価にもつながるのではないでしょうか。

女子大だから選ばれる大学にしたい
 女子大離れが進んでいると言われています。しかし、過去のデータを調べていくと、実はそうでもないことがわかってきました。女子大の数、定員数、女子大への進学者数をさかのぼって調査してみると、1992年から2014年の間で、女子進学率が約17%から47%に急上昇し、女子の大学進学者が約20万人増えたものの、女子大への進学者は約3万6000人しか増えていません。いわゆる女子大離れとは、増えた進学者の大半が共学校に行っている現象だったのです。そうなった原因は、女子大の利点を明確に発信できていかなったからではないでしょうか。そこで本学は、2016年4月に「女性キャリア開発研究センター」を開設。在学生のキャリア支援や卒業後の支援策などの研究を行っています。女性の輝く社会実現を目指し、経済的に自立でき、自分の生き方を自らの意思で選択できるための力の獲得を支援するとともに、結婚・育児などによる離職後の復職支援や、教員免許の更新なども学内でできるようにしていきます。また、卒業生ネットワークも強化していきます。たんなる親睦団体ではなく、卒業生ネットワークの中でものが売れる、製品をPRできるといった関係性をもてる組織を築き、女子大ならではの利点を高めるように努めていきます。今も女子大だから本学を選んだという学生は結構います。今後も女子教育を続けていく学園として、女子教育への期待に応えていきたいと思います。

創立100周年を視野に「光華ビジョン2030」を策定。キーワードは「ワクワク感漲る学園」
 来年2020年は学園創立80周年となり、その節目を迎えるにあたり、10年後の創立90周年、そして2040年の創立100周年に向け、未来に躍動する学園創りを目指し、「光華ビジョン2030」を策定しました。未来に期待と喜びを感じ、ワクワクと胸を躍らせる子どもたちが創る社会は、きっと心弾む明るい社会となります。創立100周年を迎える2040年、日本が、そして世界が明るい社会であるためにも、そのような未来を創造する子どもたちを育てる学校は、子どもたちにとって授業や環境など、ワクワク感漲るものでなければなりません。そして教職員もまた、ワクワクする学校を創造する構成員でなければなりません。そうした思いからビジョンでは、「知性豊かで品位のある女性を育む教育と先進的な教育の融合が評価され、ワクワク感が漲る地域のプラットホーム校として認知される総合学園」という経営目標を掲げました。そして経営戦略として「Society5.0時代を切り拓き、SDGsの実現を担う光華教育」を盛り込みました。教育環境もSociety5.0時代、5G時代への対応を早急に進め、大学においてもロイロノート・スクールの活用などを視野に、女子教育としての光華メソッドを構築していきたいと思っています。SDGsについては今流行言葉のようになっていますが、「誰一人取り残さない」という理念は摂取不捨という建学の精神と完全にリンクしており、本学にとっては特に新しいことではないのですが、今後はよりSDGsとの関連を意識した体験・探求型の教育を推進していきます。
 本学のような小規模大学にとって、ますます厳しい時代を迎えています。伝統校やブランド校には長い時間をかけて築かれた偏差値などの強みがありますが、本学としてはその先入観を崩していかなければなりません。それには本学独自の価値観を築いて提示することなしにはご理解を頂けません。人口減の時代に選ばれる大学になるためのオリジナリティがこれまでの本学園には不足していたという反省に立ち、これからは独自色を全面に出せるような大学にしていきます。



阿部 恵木氏

【Profile】

阿部 恵木(あべ・やすき)氏

大谷大学文学部哲学科卒業。1971年京都府生まれ。
学校法人光華女子学園学園主事、評議員、初等中等教育推進部長、KRS推進本部長代理、学園運営部長、宗教部長、新規事業開発プロジェクト部長、総合企画部長、企画広報部長などを歴任。2011年学園事務局長、理事・評議員、2014年専務理事を経て、2019年7月より現職。

【京都光華女子大学 (スタディサプリ進路)】

【京都光華女子大学短期大学部 (スタディサプリ進路)】

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