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東京家政学院大学 学長 廣江 彰氏

時代が求める家政学を学び
「社会を変える自分」になる


大江スミの掲げた「人々のしあわせにつながる家政学」
 本学は、大江スミが1923年に「家政研究所」開設、1925年には東京家政学院としての設立認可を得て校舎を竣工、という第一歩を印しています。 
 「家政学」といえば、女性による家庭内での「家事」を想起するかもしれません。しかし、大江スミの掲げた家政学は、家庭に限られない広い社会的視野をもち、社会での存在価値をもつ学問領域としての役割をもっています。かつて、家政学に対して「狭い実用としての家事技術の習得」との批判はありましたが、大江家政学は「社会の基礎単位である家庭生活の課題を発見・解決することで、社会生活それ自体を豊かにする」ものと理解しています。
 大江スミは、文部省からイギリスで家政学を学ぶことを命ぜられて留学しました。1902年のことです。当時のイギリスはビクトリア王朝が終わり、大きな社会的変革の最中でした。都市部では女性が家庭から出て子育てをしながら働き始めます。同時に家庭の内外をめぐる大きな問題も生じていました。大江は留学先のイギリスで、またイギリスまでの行程でみたアジアの国々の実情を目に焼き付けたものと思います。だから、大江の家政学は家庭から社会へ、国外へという広がりをもち、現代日本の国際化にも有用な示唆を与えています。

アセスメント導入で学生の成長過程を客観的・総合的に捉える
 本学では、2019年から全入学者を対象にアセスメントを導入しました。学生一人ひとりの教育過程での成長を客観的に評価し、それを情報として学生、教職員が共有します。その情報は学生の学修状況を広く捉えたカルテとしても活用し、学生自ら学修に役立てます。
 近年は入試形態が多様化し、新入生はさまざまな進路希望、入学動機をもって入学しますし、生活環境もさまざまですから、入学直後から適切な学修サポート体制を整えるために、高校までに何を学び、何を学びきれなかったのかを知っておく必要性が高くなっています。アセスメントは、従来教職員の経験に頼り、感覚値で捉えていた学生の「力」を客観化し、データとして管理・加工することで学生、教職員が共有・活用できる利点をもっています。

アセスメントの導入は、学生が自ら学び、仕事を通じて社会を変える力を育てる
 学生が現在もっている思考力や問題解決能力、リーダーシップ、コミュニケーション能力などをアセスメントで客観化し、入学前と卒業後も視野に入れたより具体的な学生支援につなげたいと考えています。
 たとえば、管理栄養士の資格取得を目指す学生が、資格をどう卒業後の仕事・社会で活かすのか。学修成果と自分の特性を活かせる就職先は病院なのか、一般の企業なのか、成績だけではわかりにくいですよね。本学は4年間固定で担任がつき、年に数回、個人面談も行っています。アセスメントデータを教員がどう使いこなすかは重要な課題ですが、蓄積されたデータを活用し、個人面談で学生個々の学修成果や特性を活かした指導に力を入れたいと考えています。もちろん、科目担当の教員による学修指導にも大いに役立ちます。
 学生にとっても、がんばりが目に見える形で示されるのは励みになりますし、知らなかった長所を評価されたり、新しい自分を知る喜びは自己肯定感の向上にもつながるでしょう。学生が自ら学ぶ力を育て、将来の自分を自信をもって描き、仕事を通じて社会を変えるような自分になっていく。家政学を学んでそのような学生に成長することを期待しています。

建学の理念「KVA」精神とは、理論と実践とを徳、つまり生き方で包み込む相互関係
 本学は、開学以来の建学の精神である「KVA」、「知識(Knowledge)」「徳性(Virtue)」「技術(Art)」を教育の根幹に据えてきました。私自身の理解は、「知識(Knowledge)」を理論、「技術(Art)」を実践と置き換え、その双方を自分のものとする、しかしその二つをどう使うかということがさらに重要で、それが「徳性(Virtue)」だということです。大江スミは「徳」を「温かき人格」とも述べています。つまり知識と技術を身に付けた自分がどのような「自分」かを問え、ということです。
 ただし、KVA精神、家政学共にこれからの時代を創る学問となるべきです。社会連携活動の中で、私はよく学外者に「本学の学生は『リケジョ』だ」と説明しますが、それを聞いて驚く方は少なくありません。たとえば人間栄養学科、食物学科であれば、「食」の領域だからと調理が直ぐに思い浮かびますが、その背景、基礎は純然たるサイエンスの領域です。そこで、大学時代の専門的に「深い」学修の成果を、卒業後に社会が求める「幅広い」解決課題に活かす、社会での課題発見、解決に必要な深い知識と技術とを「温かき人格」を持つ者として活かし続ける、家政学を学んで「社会を変える自分」を実感を持って目指す学生に育って欲しいと願っています。
 現在、家政学の人気は下降傾向であることは事実です。私は、だからこそチャンスだと思っています。大学と社会とを「家政学という橋」でつなげば、大学生にも、高校生にも学ぶ目的と目標、大学4年間の学修の意義が見えてくる。その意味で現在を家政学の「復興期」と認識し、東京家政学院大学はその役割を担う先駆でありたいと考えています。



廣江 彰氏

【Profile】

廣江 彰(ひろえ あきら)氏

鳥取県出身
1972年 早稲田大学第一文学部卒業
1976年 慶應義塾大学大学院経済学研究科経済政策専攻修士課程修了
1985年 慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学
1985年 札幌学院大学商学部助教授
1991年 立教大学経済学部・同大学院経済学研究科助教授
1993年 立教大学経済学部・同大学院経済学研究科教授
2007年 立教大学大学院ビジネスデザイン研究科教授
2014年 株式会社サービス科学研究所所長
2015年 東京家政学院大学学長(現在に至る)

【東京家政学院大学の情報(スタディサプリ進路)】

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