教育トピック

教えて!「議論が始まった『多面的な評価の在り方』って?」

 文部科学省の「大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議」が3月19日午後、初会合を開催しました。大学入試改革をめぐっては、既に「大学入試のあり方に関する検討会議」が発足し、同日午前に第4回会合を行っています。協力者会議の方では、いったい何が議論されるのでしょうか。

教えて!「議論が始まった『多面的な評価の在り方』って?」

 「検討会議」の方は、大学入学共通テストの二つの目玉だった英語の民間試験活用と、国語・数学の記述式問題出題が相次いで見送られたことを受けて、導入を決めた経緯の検証とともに、新学習指導要領に対応して2024年度中に実施される共通テストの在り方を中心に検討するものです。

 一方、今回発足した「協力者会議」は、萩生田光一文部科学相が2月21日の定例記者会見で設置を表明したものです。やはり24年度中に実施される各大学の個別選抜(大学入学は25年度)に関して、▽大学入学者選抜における多面的な評価の内容や手法に関する事項 ▽調査書の在り方及び電子化手法に関する事項 ▽調査書や志願者本人記載資料の活用及び大学への情報提供の在り方に関する事項――などを検討しようというものです。

 ところで高大接続改革の一環としての入試改革では、各大学が①知識・技能 ②思考力・判断力・表現力 ③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)という「学力の3要素」すべてを評価して、入学者を選抜することになっています。このうち共通テストでは①を基にした②を中心に評価するのが狙いです。そうなると、各大学では③の評価をどうするかが課題になるわけです。

 ただ、今回発足した協力者会議の対象は、検討会議と同様、新指導要領対応の入学者選抜です。20年度に行われる大学入試で、共通テストの導入とともに、③も含めた3要素による選抜が迫られています。高校現場には、今後公表される各大学の21年度入学者選抜実施要項に注目するとともに、各大学の多面的・総合的な選抜で評価してもらいやすくするよう、調査書への記載を工夫する必要があります。

 そうなると心配になるのが、高校現場への荷重負担です。とりわけ今回の入試改革では、22年度を目指して調査書を電子化する一方、生徒が記入しながら振り返りを行える「JAPAN e-Portfolio(JeP)」(一般社団法人教育情報管理機構が運営)も稼働しています。

 調査書の電子化に伴って教員の負担を軽減するには、教務システムと校務システムの統合が不可欠です。文科省の委託調査では、「大学出願システム」(仮称)のクラウド上に、校務システムから電子調査書を、教務システムから生徒の学びの記録をアップロードできる見通しです。

 ただ、協力者会議の初会合では、JePも含めて記入事項が増える教員の負担に懸念の声が上がっただけでなく、22年度の電子化を見送るべきだとの意見もありました。

 JePについては萩生田文科相が2月の会見で「本当に有効性があるのか」と疑問を示していましたが、初会合ではJePを取りやめるべきだとの議論は特にありませんでした。JePは、既に高校に広がっている民間高校ポートフォリオとも連携が可能です。生徒にも教員にも過重な負担を招かない形で、うまく各大学の多面的・総合的な選抜に活用しやすくすることが課題でしょう。
 
 なお協力者会議や検討会議は当面、新型コロナウイルスの感染拡大防止を考慮して、報道関係者以外の傍聴者を入れないことになっています。その代わり、会議の模様はYouTubeの文科省公式動画チャンネルでライブ配信されます。音声も会場よりクリアですから、関心のある向きにはチェックしてみてはいかがでしょうか。



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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/