大学・短大トップインタビュー

横浜美術大学 学長 宮津大輔氏

新しいスタイルの美大を目指し、
入口から出口まで学生第一の視点を徹底


AI時代だからこその美術大学
 これからは、美大の時代です。
 人工知能(以下、「AI」という)があらゆる領域で存在感を高めている現代に、何を言っているの? と思われるかもしれません。確かに今やAIが美術の領域であるデザインまでやってしまいます。最近はAIによるロゴデザインやウェブページ作成サービスもあり、利用者は端末を使って好きなデザインや色を選択し、好みに合ったものを手に入れることができます。今後、ますますAIが進化し、量子コンピュータが実現、普及すると、ビッグデータを基に作成するデザインは、一層間違いがないものになるでしょう。
 しかし、それをあらゆる人がやりだしたらどうなるでしょう。同じ業界の競合メーカーが作るデザインは皆同じ方向に行ってしまいます。AIに頼ると似たようなデザインになるのは避けられません。一方で人間にしかできないことは何か。それは、偏っていたり、ファジーだったりする部分なのです。二進法ではない、最大公約数でもない、人間にしかできないクリエイティビティが、一層求められるようになるのです。
 今はスマートフォンがあれば、いつでも何でも購入できますよね。アプリケーションの利用しやすさの鍵を握っているのは技術力とともにデザイン力なのです。操作のしやすいデザインによって、競合他社に勝ち、ビジネスとして成功するわけです。絵を描きデザインをするという美大での学びが、実は社会で大きな可能性をもっていることがおわかりいただけると思います。AI時代だからこそ必要とされる、機械で代替のきかない人間ならではの力を身に付ける教育が、横浜美術大学の特色の一つと言えます。

学生を第一に考えた学びのプログラム
 私は30年にわたり、企業に勤めておりました。ビジネスの世界で常に言われてきたのは、「顧客第一」です。この意識は今、教育機関にこそ必要だと思います。教育機関において顧客とは、学生と保護者の皆様のことです。そして大学にとっての商品と言えるのが、カリキュラムです。
 本学は美術学部、美術・デザイン学科のみの単科大学です。入学するとまず、A系(絵画・彫刻)、C系(クラフトデザイン)、V系(ビジュアルデザイン)の3つのカリキュラムモデルからメインとサブの系を選び、基礎的な表現技術や知識を横断的に学びます。
 2年次では、将来の自分を見据えて10コースから一つを選択し、より高度に専門的に学んでいきます。コースの中には「アニメーション」や「修復保存」など、大学で専門的に学べるところが非常に限られているものもあり、時代の要請に応えて新しい分野を素早く取り入れている点も、本学ならではの特徴です。
 2年次後期に設置している「コンテクスト・アーツ科目」も大きな特色です。これは、専門コースとは別に、興味のある周辺分野を学べるもので、「日本画演習」、「電子音楽演習」など12の演習を用意しています。各コースの科目と組み合わせることで、表現に幅と深みを与えるとともに、興味に応じて学びの領域を広げることも可能になります。
 アートやクリエイティビティと経済活動は切り離せない時代ですから、美術と経済を関連付ける学びも充実しています。将来、独立してアーティストとして活動する人にとっても、企業に入ってデザイナーとして活躍する人にとっても、社会のお金の流れや経済の仕組みを理解することは重要なリテラシーの一つであると位置付けています。
 それぞれの授業が学生にとって有益かどうかを判断する基準の一つとして、学生によるアンケートを実施しています。学生が授業を評価するわけです。これも顧客第一主義の一環です。ただし、授業が単なる人気取りにならないよう教員同士が授業参観を行い、意見を言い合い、優れた部分を共有するなど授業の質の向上にも同時に努めております。
 また、少人数制の教育も、学生を第一に考えるうえで大きな効果をもたらしています。少人数なので教員の目が学生一人ひとりに行き届き、丁寧な指導が行えています。学生と教員の距離の近さも、本学の大きな魅力です。

入口から出口まで親身に指導
 本学は2020年、創立10周年を迎えます。おかげさまで志願者も順調に増えております。本学に興味のある方への入口の一つが、オープンキャンパスです。本学の魅力を受験生や保護者の皆様に伝えるために、口当たりのいい楽しいだけのイベントではなく、入学後の学生生活を具体的に想像できるよう工夫しております。
 また、オープンキャンパスとは別に、本学ならではの取組として、「描き講習」を開講しております。美術系の予備校に通っていない、デッサンに自信がない、美術は好きだけどちゃんと描いた経験がない、でも美大に入りたい…、そんな受験生に無料で教員がデッサンを指導する講座です。今は技術的に未熟であっても、アートへの情熱が強く、クリエイターやアーティストとしての隠れたポテンシャルをもつ方に、ぜひ本学で学んでいただきたいという想いが込められています。
 寺田倉庫寄付講座では、アートフェアやトリエンナーレのような国際展の現場を体験する機会や、イタリアや台湾での実践的なカリキュラムによるサマー・コースを設けています。また、NTTドコモやソニー・デジタルエンタテインメント・サービスとの多様な産学連携の試み。横浜市文化観光局が推進している創造的産業振興の一環として、市内の中小企業がもつ高い技術力と本学学生のアイデアをかけあわせた横浜ならではの地域ブランド創成事業への参画など、通常の就職支援活動に加えて、キャリア・デザイン形成に関する多様なプログラムを用意しております。
 入口から出口まで親身に面倒を見る、これからの時代に沿った新しいスタイルの横浜美術大学に、ぜひ、ご期待いただければと思います。



宮津大輔氏

【Profile】

宮津大輔(みやつ・だいすけ)氏

1963年、東京都出身。明治学院大学経済学部商学科卒業。京都造形芸術大学大学院芸術研究科修士課程修了。アート・コレクターとしても活躍。広告代理店、上場企業の広報、人事管理職を歴任。2016年、横浜美術大学の教授に。2020年4月、横浜美術大学学長に就任。

【横浜美術大学の情報(スタディサプリ進路)】

大学・短大トップインタビューに戻る