教育トピック

教えて!「大学入試の議論の現在」

 新型コロナウイルス感染症の影響で新年度も休校が続き、大学入試改革に対応が間に合うか、早くも不安が募っています。大学入学共通テストの目玉だった英語の民間試験活用と、国語・数学の記述式問題出題は、相次いで見送られました。今後の在り方については文部科学省が議論しているところですが、現在どうなっているのでしょう。

教えて!「大学入試の議論の現在」

 新学習指導要領に対応した入試の在り方に関する検討会議は、2月27日に安倍晋三首相が全国一斉臨時休校を要請するなど事態が急変したことを受けて、同28日に開催されるはずだった第4回会合を3月19日に延期した上で、一般傍聴者を入れずに報道関係者のみに公開する形で開催。第5回会合は同31日に開催の予定でしたが、東京五輪・パラリンピックの延期決定(同24日)、7都府県を対象とする緊急事態宣言(4月7日)を経て、4月14日にウェブ会議方式で開催しました(いずれもYouTubeの文科省公式動画チャンネルでライブ配信)。

 今後は23日に同じウェブ会議方式で第6回会合を開催し、4回にわたって続けてきた委員からの意見表明を一通り終了。5月中旬の第7回会合からは、外部有識者や関係団体からのヒアリングを3回程度にわたって行いたい考えです。

 このように予定の変更を余儀なくされながらも、会議は進んでいます。新課程入試のためには「2年前ルール」で各大学が22年度中に個別入試の教科・科目などを予告する必要があり、その1年前である21年夏ごろの制度改革に関する予告に反映させるには、20年中に取りまとめを行わなければならないからです。

 第5回会合(配布資料)での意見表明では、かなり問題点や課題がクリアになってきた印象があります。

 国語教育が専門の島田康行・筑波大学教授は、大学の初年次教育で多かった「レポート・論文の書き方」「文章作法を身に付けるためのプログラム」について「高校までに身に付けておくべき内容が少なからず含まれている」と指摘。一方、共通テストの記述式出題を通して改革メッセージは高校側に伝わっていたとしながらも「あまりにも時間が足りず、(20年度からの共通テスト実施という)スケジュールに無理があった」と述べるとともに、中央教育審議会から高大接続システム改革会議(15~16年)、検討・準備グループ(16年~)と会議体が移る中で「課題を先送りするだけになった」との見方も示しました。

 中央教育審議会や高大接続システム改革会議などの委員として高大接続改革論議に携わってきた荒瀬克己・関西国際大学教授(前大谷大学教授、元京都市立堀川高校長)は、そもそも共通テストで高校教育に影響を及ぼそうとしたのは「順序が逆」であり、自身も20年度実施という「時間との関係が引っ掛かっていた」と明かしながら、新指導要領に対応した25年度入試がポイントになると指摘。課題先送りの中で合教科・科目の出題や試験の複数回実施などの案が消えていき、最後に残った英語の民間試験活用と記述式出題は「実現できると思っていた。責任を感じている」と述べました。

 教育行政学が専門で、子どもの貧困対策に取り組む末冨芳(かおり)・日本大学教授は、今回の高大接続改革に「一貫した方針を見いだすことはむずかしい」という荒井克弘・大学入試センター名誉教授の指摘を引きながら、大学入試の「原理・原則」を再構築すべきことを強調。とりわけ多様な入試で、貧困や地方、性別の格差などを改善する「公正」をどう実現するかを検討するよう提案しました。

 今後の議論では、高校生や大学進学しなかった若者にもヒアリングを行うなどの案も出ました。

 また、検討会議の直接的な論点ではありませんが、行事がすべてなくなり今も休校中の多い現在の高校3年生が迎える21年度の大学入試に関して、早急に受験生の救済措置を講じるよう、委員から要望が相次ぎました。

 17日、同様にWeb会議方式でライブ配信された「大学入学者選抜における多面的評価の在り方に関する協力者会議」第2回(配布資料)では、主体性等の評価と調査書の電子化について議論が進んでいる他、高校と大学の教育接続の意義を確認する発表もありました。

 進路指導の先生方にとっては二つの会議とも、まさに現在進行形で直面する課題です。どう話し合われ、決着していくのか。この機会に、リアルに視聴してみてはいかがでしょうか。



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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/