教育トピック

教えて!「21年度入試は受験生を救うの!?」

 大学入試改革の初年度となる2021年度の大学入学者選抜実施要項が19日、全国の大学や教育委員会などに通知されました。新型コロナウイルス感染症の影響で、例年より半月近くの遅れです。しかも9月入学への移行論議はもとより、全国高等学校長協会(全高長)に調査を依頼しながら要望書の受け取りは拒否するといった、迷走を経ての策定でした。大学入学共通テストに「第2日程」が設定されるなど異例の措置が取られましたが、こうした配慮は受験生を救うのでしょうか。

教えて!「高校生も加わった大学入試改革論議」

 大学入学者選抜実施要項は毎年、大学と高校の関係者などが参加する協議を経て、文部科学省が高等教育局長名で通知するものです。萩生田光一文部科学相は4月の段階から総合型選抜(20年度まではAO入試)や学校推薦型選抜(同推薦入試)の日程を遅らせたい意向を示していたものの、全体として日程を遅らせるかどうかは、9月入学論議が事実上終息した5月28日、全国の高校の意向を調査するよう全高長に依頼。全高長は6月11日、国公私立4318校(回収率81.8%)の回答をまとめました。そこでは、共通テストに関して当初予定通りの実施希望が7割、後ろ倒し希望が3割などといった意向が明らかになりました。

 全高長は議論の末、少数派である3割の高校に配慮して、1カ月の延期を求める要望書を提出しようとしましたが、文科省は、私立高校の意向が十分反映されておらず、高校の総意とすべきことを理由に、受け取りを拒否しました。

 この受け取り拒否には、疑問を抱かざるを得ません。そもそも全高長は、地域事情の違う各都道府県校長会の集まりであり、会員校にも国公私立の違いはもとより、進学校から進路多様校まで、あるいは普通科・各専門学科・総合学科など、多様な高校の集まりです。しかも私立に関しては、別に日本私学中学高等学校連合会(中高連)があります。全高長が高校の「総意」をまとめられる組織でないことは、関係者なら知っているはずです。

 そんな曲折を経て決まった日程は、一般選抜などの学力検査の試験期日を2月1日から3月25日までとする一方、共通テストに①1月16・17日 ②1月30・31日――という二つの日程を設け、②を①の追試験としても位置付けるとともに、②には「特例追試験」として2月13・14日を設定しました。第2日程を選べる要件を設けるかどうかは今後検討するといいます。

 ただ、②や特例追試験を受けた場合、それだけ各大学への成績提供も遅れることになり、個別試験や2段階選抜にも影響が出ます。各大学がどのような入試要項を定めるか、情報収集に気が抜けません。何より、①と②の試験に極端な難易度の違いが出ないかも心配です。

 出題範囲についても、文科省の実施要項は、3年生で実施することの多い▽地歴・公民、理科の2科目指定を1科目に減じる▽数学Ⅲ、基礎を付さない理科の各科目、日本史・世界史のB科目、倫理、政経など――について、選択問題を設けたり、発展問題を出したりしないなどの配慮を求めています。これも各大学がどのように対応するか、目が離せません。

 このように現段階では受験生にとっても、指導する高校側にとっても、不安要素でいっぱいです。非常時だから致し方ない面はあるでしょう。しかし9月入学論議はもとより、3月の全国一斉休校要請など、本当に生徒ファースト・受験生ファーストで議論されたのか、疑問が拭えません。

 新型コロナ対応の臨時措置で公平な入試が行われるかも不安ですが、そもそも今回の入試改革は1点刻みの「公平」な選抜に疑問を投げ掛け、多面的・総合的な選抜による「公正」な入試を目指しながら、14年12月の中央教育審議会答申の理想とは程遠い制度設計になった上に、目玉だった共通テストの英語外部試験活用や記述式問題出題も途中で見送られてしまいました。もし入試改革を含めた高大接続改革が徹底されていれば、これほど不安を招くこともなかったのではないか――というのは、言い過ぎでしょうか。


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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/