教育トピック

教えて!「大学のオンライン入試・面接はこれから?」

 文部科学省が9月9日、「令和3年度大学入学者選抜におけるオンラインによる選抜実施について」と題する依頼文を、国公私立大学に出しました。試験実施中に通信環境の不具合等が生じた場合や、志願者が通信環境を整えることができない場合、個別に連絡を取り、代替措置を講じるなどの配慮を求めたものです。既に5月の通知や、6月の入学者選抜実施要項で求めていたはずですが、「今般、一部高等学校関係者から、オンラインによる選抜実施にあたっての受験機会の確保について、懸念する声が寄せられ」たため、改めて依頼したといいます。この問題を、どう考えればいいのでしょうか。

教えて!「大学のオンライン入試・面接はこれから?」

 5月の通知と6月の実施要項では、いずれも「ICTの活用に当たっては、志願者による利用環境の差異や技術的な不具合の発生等によって、特定の志願者が不利益を被ることのないよう、代替措置などの配慮を行う」よう求めていました。しかし例えば、ある大学の学部の学校推薦型選抜などでは、「各自の責任において、自宅または学校等の任意の場所に」オンライン面接会場を設定するよう指示した上で、機器や良好なネットワーク接続環境の確保は受験者の責任であり、「面接員が試験続行不可能と判断した場合は、その時点で面接を打ち切る場合があります」と注記。同意書の提出も求める大学もありました。

 受験生の不利益になる可能性があるとの懸念から多摩地区高等学校進路指導協議会が大学の入試要項を独自調査、浮彫りになった実態を文科省の担当部署に情報提供、9日の再連絡に至った――というのが経緯でした。調べてみると、複数の大学が、通信状況不良時には面接打ち切りの可能性があることを示していたとのことなのです。

 別の高校では、生徒から相談されるまで、そんな事態があることすら気付かなかったといいます。今や高校側で全容を把握しきれないほど入試方法が多様化しており、ましてや新型コロナウイルス感染症の影響による特例措置が、それぞれの大学・学部で違っていては、なおさらです。その上に、高校においてオンライン面接を行う場合は、実質的に高校側が通信機器準備の責任を負わなければなりません。国公私立の全高校に通信環境を整備する「GIGAスクール構想」が、まだ進行中であるにもかかわらず、です。

 なお、この再通知後、先の大学では「トラブルがあった場合は携帯電話で連絡を取り、他の受験者の面接終了後に、時間延長も含めて面接をやり直すとともに、学部キャンパスに来校してオンライン面接も可能」との対応を発表しました。ほかの大学も続いてくれるのか、多摩高進ではオンライン入試の実施状況を会員校にアンケート、引き続き実態を調査中です(会員校以外でアンケートにご協力いただける高校はこちら)。

 そもそも高大接続改革の下での大学入学者選抜改革は、画一的な一斉試験で知識の再生を1点刻みで問うような入試の「公平性」概念に疑問を呈し、多様な受験者の多様な力を多様な方法で「公正」に評価する意識に転換するよう求めたことが、眼目だったはずです。とりわけ総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)は、まさに受験生が各大学・学部のアドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針、AP)に合っているかどうかを、丁寧に見ることができるものです。

 受験生を選抜する入試である以上、受験の条件は一緒でなければならない、と考える大学側の気持ちは、分からないでもありません。しかし問われるべきは、そうした入試の「公平性」です。本当にその受験生が、うちの大学・学部で学び、貢献してくれる学生になり得るのか見極めるためには、どんな例外措置を設けてでも丁寧な面接を行おうとするのが、本来の「公正」なオンライン入試だったのではないでしょうか。今回の事態は、目的と手段の転倒というだけでなく、高大接続改革の理念がまだまだ理解されていないということを痛感させられる一件だったと言えるのではないでしょうか。



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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/