教育トピック

教えて!「観点別評価、高校でどう導入?」

 新学習指導要領の下、高校でも指導要録の参考様式に盛り込まれた観点別評価をめぐって、国立教育政策研究所が、学習評価の参考資料の「案」をホームページで公開しました。本来なら3月までに成案を公表し、1年かけて準備してもらうはずが、新型コロナウイルス感染症の影響で延び延びになっていたものです。夏季休業中の研修に合わせるため、共通教科と専門教科の一部を案の段階で示すという、異例の展開になりました。
 高校では、観点別評価をどう導入すればいいのでしょうか。そもそも、なぜ観点別評価を導入しなければならないのでしょう。

教えて!「観点別評価、高校でどう導入?」

 高校でも、「従前より観点別学習状況の評価が行われてきた」(19年1月の中央教育審議会教育課程部会報告)はずです。しかし現実には「ペーパーテストに評価の観点を示すことで観点別学習状況の評価を行っているとしているところもあり、名目と実際・現実との乖離がある」(髙木展郎・横浜国立大学名誉教授、17年12月の教育課程部会「児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ」での報告)といった実態があることは、現場の先生はよくご存じでしょう。

 確かに高校にとって、「評定平均値を大学入試で求められるため、本質的な観点別学習状況の評価が進められない現状」(同)があったことは否定できません。しかも、国研の参考資料案と前後して通知された25年度大学入学者選抜実施要項の見直し予告で、別紙として付けられた調査書の参考様式には、わざわざ「『各教科・科目の観点別学習状況』の項目は直ちには設けない」と注記されています。大学入試改革の相次ぐ「挫折」を受けて設置された会議体の一つ「大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議」の審議まとめを受けたものでした。

 ただし同協力者会議では、高校代表の委員などから、調査書に項目を設けなければ、ますます観点別学習状況の実施が進まないことを懸念する声も出されていました。本当に「条件が整い次第可能な限り早い段階で調査書に項目を設ける」(審議まとめ)ことができるのでしょうか。

 ここで、改めて「学習評価」とは何なのかに立ち戻る必要があります。釈迦(しゃか)に説法で恐縮ですが、決して「序列を付けること・値踏みすること」(先の髙木名誉教授の報告)ではありません。高校の新指導要領にも「学習の過程や成果を評価し、指導の改善や学習意欲の向上を図り、資質・能力の育成に生かす」(総則)とあります。参考資料案が「指導と評価の一体化」を強調している意味も、そこにあります。生徒に更なる資質・能力の伸長を励ますとともに、教師には、生徒の資質・能力を着実に伸ばすような不断の授業改善を求めるのが指導と評価の一体化であり、だからこそ参考資料案は「『カリキュラム・マネジメント』の中核的な役割を担っている」と位置付けているのです。

 折しも高校には、スクール・ミッションの再定義と、スクール・ポリシーの策定が求められています。三つのポリシーのうち「カリキュラム・ポリシー」に沿って資質・能力を育成する、具体的な授業改善が求められます。調査書に載せるかどうかに左右されることなく、指導と評価の一体化としての観点別評価を進める必要があるでしょう。

 これまで小中学校が観点別評価の緻密な「規準」「基準」づくりに追われ、多忙化に拍車を掛けたことも無視できません。そうした教訓から今回、簡素化も図られています。決して「評価疲れ」に陥ることなく、「これまで慣行として行われてきたことでも、必要性・妥当性が認められないものは見直していく」(参考資料案)ことを通して、具体的に生徒の資質・能力を伸ばす手立てとしての、本来あるべき学習評価を追究したいものです。


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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/