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京都薬科大学 学長 後藤直正氏

薬学科学の専門知識と問題発見力を活かして未来を切り拓く
学生たちの幅広く多彩な活躍を全学挙げてサポート


薬学のプロを育成し、日本の薬学界を牽引する私立薬学系大学
 京都薬科大学は建学から今日まで約140年の歴史と伝統を刻み続けている私立薬学系大学です。2006年、6年制薬学教育の開始を機に5年ごとの中期計画を策定。「Science(科学)」「Art(技術)」「Humanity(人間性)」の3つのバランスがとれた薬学のプロフェッショナル「Pharmacist-Scientist(ファーマシスト・サイエンティスト)」の育成を目標に、新たな教育・研究基盤の構築に向けて取り組んできました。第1期・第2期の10年間における成果と課題を踏まえ、2016年12月には「京都薬科大学 マスタープラン」を策定。大学を取り巻くさまざまな社会状況や多様化するニーズに対応しながら本学の価値をさらに向上させるとともに、それを社会に伝え役立てるべく第3期中期計画を推進しています。

先端的研究で得られた知見・科学的思考を学生の教育に活かす
 薬学部は薬剤師育成に力を入れるため、研究の優先順位は低いと思われがちですが、本学は違います。マスタープランでは「先端的研究の展開と教育への反映」を目標に掲げ、すでにさまざまな取り組みを行っています。最も特徴的なのは「総合薬学研究(卒業研究)」。学生たちは3年後期から研究室に所属し、卒業までの3年間、指導教員の特色ある指導の下でしっかりと研究に打ち込みます。学識を深める以上に重視するのは「問題発見力」の育成。もちろん一朝一夕には身につきません。まずは基本的な研究の作法や技術など、スポーツで例えるなら素振りやドリブルに当たるような地味な努力の中で学生個々の「問題発見力」を磨く。過去を踏襲しない創造はないと私は思っています。科学的な思考力と研究技術が身につくころには、取り組みたいテーマにつながる自発的な問題発見ができるようになりますし、日常の学びや研究を通じて、世代の異なる教員や大学院生、仲間との対話を重ねることで、柔軟でタフなコミュニケーション能力も磨かれます。短期間での成果を求められない大学時代ならではの豊かな時間が、学生たちを着実な成長へと導きます。

「学内ジョブプロジェクト」など、教職協働で社会人の素養を育成
 「医療界の各領域でリーダーとなる人材を輩出する大学へ」というマスタープランの推進項目を実現する取組「学内ジョブプロジェクト」は、リーダーシップのベースとなる社会人基礎力を養い、自主性・協働性を磨く機会になっています。これはオープンキャンパスでの案内や説明など、さまざまな課外活動の支援や企画運営を学生主体で行うというもの。アルバイト料も支払われるので、仕事を通じて社会を知る経験にもなります。実際、学生たちの働きぶりは見事なもので、保護者の方々からの評価も上々。ひょっとしたら教員は学生たちの能力を侮っているかもしれないと反省もし、その能力を見出し伸ばすのが本来の大学の役割だと改めて実感しました。
 以前から私は、組織のヒエラルキーはまったくもって無意味だと考えています。マスタープランでも掲げる「教職協働」の推進は、教員と職員がそれぞれの職務を全うし、協力し合いながら学生たちの成長を支援するという、同じ目標に向かう取組。最近では、それぞれの場所でそれぞれの役割を発揮するオーケストラのような運営が見られることも増え、学長として非常に嬉しく感じています。

医療・薬学の枠を超えて多領域で活躍する先輩たちを先達として
 本学の特筆すべき特徴は、何といっても卒業後の進路の幅広さです。入学時の希望は病院の薬剤師が多いのに、最終的には病院・薬局・企業が正三角形になるバランスの良い進路になります。進路支援課は、個々の学生が望む進路に行けるようアドバイスはしますが、業界を特定して勧めることもないので、そうなる要因はわかりません。どの進路にも必ず卒業生がいるのは強みですし、その安心感も一因になっているかもしれません。近年では、国家公務員試験に合格し、いわゆる中央のキャリア官僚となった卒業生もいます。
 超高齢化社会の到来や機械化・AI化の導入などにより、時代が求める薬剤師の役割は従来までとは大きく変化しています。今の高校生は今の薬剤師になる人ではなく、10年先20年先の薬剤師になる人たちです。薬学の基礎科学を活かせる薬剤師として能力を十二分に発揮する、そんな未来を自由に描けるようにすることが大学の役割。学生たちには、行く手を阻む氷に立ち向かいながら海原を進む砕氷船のような勢いで、それぞれの未来を切り拓いていくことを期待しています。

薬剤師として、研究者として、未来を見据えた活躍を細やかに支援
 2020年4月から、薬剤師の資格を取得した後も学びを続け、さらなる高度な知識とスキルを磨くことができる「Lehmann(レーマン)プログラム」を開講。専門・認定薬剤師資格の取得に必要な症例報告や論文作成能力の徹底指導を行っています。薬学の基礎を一から学び直すというよりも、現在直面している臨床での課題を、かつて大学で学んだ知識を使ってどう解決するかを重視。資格を持っていることに甘えず、常に向上心をもって次世代の医療や人々の健康維持に貢献できる薬剤師の活躍を細やかに支援しています。
 さらに本学では、全学的な共同研究体制を確立。オリジナリティの高い先端的な研究に挑むことで次世代の研究者を育成するとともに、国内外に向けて本学のブランド価値を高める取組を行っています。現在、放射線を使って診断と治療を同時に行うラジオセラノスティクスの研究や、iPS細胞を使った新しい細胞治療の研究など、薬学領域における多様な研究活動を推進しています。

困難な社会状況を変革のチャンスとして、次なるステップへ
 新型コロナウイルス感染症による影響は少なくありませんでしたが、この状況を千載一遇のチャンスとし、思い切った教育改革に着手しました。そのひとつがICTを積極的に使った教育です。薬学部は必修の用語や専門知識がかなり多いので、国家試験対策にもなる専門の授業は効率よくオンデマンドで配信し、演習などはあえて非効率的に直接学生と顔を合わせるスタイルに切り替えていく予定です。現在、科目ごとの適性を見極める作業を進めています。個々の教員も今までまったくやったことのないオンライン授業などを四苦八苦しながら工夫し、いろんな情報を取り入れながらがんばっています。その気力と努力、試行錯誤を無駄にすることなく、しっかりと教育の現場に活かします。


後藤直正氏

【Profile】

後藤直正(ごとう・なおまさ)氏

1976年京都薬科大学薬学部製薬化学科を卒業後、1978年同大学院薬学研究科修士課程を修了。1989年同大学薬学博士学位取得。
同大学薬学部助手(微生物学教室)、同講師、同助教授を経て2004年教授(微生物・感染制御学分野)に就任。2010年に副学長、同年に理事、2013年に常任理事に就任。2016年4月から現職。専門分野は微生物学、感染症治療学。1997年上田泰記念感染症・化学療法研究奨励賞、2002年京都薬科大学教育後援会第1回教育賞を受賞。

【京都薬科大学の情報(スタディサプリ進路)】
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