教育トピック

教えて!「内閣府の『教育・人材育成WG』って何?」

 内閣府の「教育・人材育成ワーキンググループ(以下WG)」が、年末の中間取りまとめに向けて25日から詰めの議論を行うといいます。文部科学省以外で教育を審議する会議体と言えば、先ごろ廃止になった教育再生実行会議がありますが、中央教育審議会との関係も微妙なものでした。いったい内閣府は、何をしようとしているのでしょうか。

「内閣府の『教育・人材育成WG』って何?」

 同WGは、政府に五つある重要会議の一つである「総合科学技術・イノベーション会議(CSTI(システィー))」の下に置かれたものです。8月にキックオフミーティング(立ち上げ会合)を開いて以来、月に1~2回、通常1時間程度の会合を重ねているのは、ボトムアップによる関係者の合意に時間を掛ける中教審などと違って、極めて合理的な印象を受けます。

 CSTIの重要な役割として、政府の「総合科学技術・イノベーション基本計画」(5年間)づくりに携わることがあります。3月に策定された第6期計画では、Society5.0時代を踏まえて教育・人材育成を初等中等教育にまで裾野を広げること、とりわけ探究力の育成を通して「一人ひとりの多様な幸せ(well-being)と課題への挑戦」を目指すことが、三つの柱の一つに位置付けられました。理系人材や経済的なイノベーション(革新)人材にとどまらず、総合的な探究の時間をはじめとした新学習指導要領が目指す学びを、本気で応援する方向性を打ち出そうとしているのです。

 WGの委員には、科学者を中心としたCSTIの有識者議員に、中教審と産業構造審議会(産構審、経済産業相の諮問機関)を兼ねるメンバーを加えています。省庁の枠を超えて、あるべき論ではなく具体策を検討する「実行フェーズ(段階)」だと位置付けています。

 前回10月27日の会合では、高校関係者にとって注目すべき資料が配布されました。現行の高校標準法に基づく教職員定数では、専門学科では探究的な学びや地域連携も進んでいる一方、普通科で個人の興味関心に基づき探究するには「手厚い教員配置が必要」だとの認識を示したのです。

 公立高校は第6次教職員定数改善計画(2001~05年度)が完成して以来、本格的な定数改善は行われていません。その間、国庫負担である公立義務教育諸学校の対応に追われ、やっと21年度から小学校の全学年を35人以下学級にする計画がスタートしましたが、地方交付税措置の高校は、蚊帳の外に置かれてきたのが実情です。高大接続改革をきっかけに総合的な探究の時間も本格化してきたのに、それに見合うだけの条件整備がなされておらず、多忙化に拍車を掛けているのも否定できないでしょう。

 WGの課題は、今後5~10年にわたる制度の改善や、時間、人材、財源というリソース(資源)の確保と再配分を検討することです。条件整備の手詰まり感を打開するような提言を期待したいものです。

 ところで「時間」には、生徒と教師の時間を左右する学習指導要領も入ります。そこでは、「教科の本質等を踏まえた教育内容の重点化、探究的学びの充実のための教育課程の弾力化等」が必要だとしています。前回の配布資料からは「次期学習指導要領改訂を見据え」との文言も正式に加わりました。22年度の高校入学生から全面実施となる新指導要領のことではありません。文科省で教育課程課長や財務課長を歴任し、内閣府に出向中の合田哲雄審議官は「5年後の改訂」を視野に入れるよう、委員に繰り返し呼び掛けています。

 もちろん教育行政は文科省の所管であり、正式には中教審などの審議を経る必要があります。ただ、この間、文科省だけでは閉塞状況を打開できなかったのも確かです。また、教育再生実行会議は「教育や人材育成に関する検討を行う新たな会議」の開催をもって廃止することも閣議決定されています。

 まずは中間取りまとめで、どこまで踏み込んだ提言がなされるか、高校関係者も注目する必要があるでしょう。


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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/