カレッジマネジメント【173】 Mar.-Apr.2012
編集長インタビュー
北城 恪太郎 日本アイ・ビー・エム株式会社 最高顧問
学生が自ら課題をみつけて挑戦する意欲を養う教育を
グローバル企業の経営者,経済団体のトップを経験し,現在は文部科学省中央教育審議会(以下,中教審)委員,大学理事長も務められる北城氏に,リーダー育成がなぜ必要なのか,リーダに必要な要件は何か,大学に何が求められているのかを聞いた。

北城 恪太郎(きたしろ かくたろう)
1944年生まれ。1967年慶應義塾大学工学部卒業,1972年カリフォルニア大学大学院(バークレー校)修士課程修了。1967年に日本アイ・ビー・エム株式会社入社後,1993年同社代表取締役社長,1999年IBMアジア・パシフィック プレジデント兼日本アイ・ビー・エム株式会社代表取締役会長を経て,2007年日本アイ・ビー・エム株式会社最高顧問に就任。兼職として,公益社団法人経済同友会終身幹事(元代表幹事),国際基督教大学理事長,文部科学省中央教育審議会委員など。著書に『経営者,15歳に仕事を教える』などがある。
(1) 大きな課題は,グローバルに活躍できる人材の育成
──企業のIT化,グローバル化が進んでいます。企業を取り巻く経営環境はどのように変化しているのでしょうか。
善し悪しは別にしてグローバル化とITの活用は止まることはない大きな流れといえます。特にグローバル化については,多くの企業が日本の市場は今後あまり大きく伸びないだろうと考えています。人口減少に加えて,円高やデフレという要因もあります。会社の持続的成長を目指そうとすれば,日本市場でのシェアを高めることも一つの戦略ですが,一方で海外に活路を求めざるをえないと考えています。
日本企業はこれまで製造業を中心に輸出主導型で伸びてきましたが,今や円高で輸出も難しい状況にあります。特に,リーマン・ショックや昨年の東日本大震災以降は,多くの経営者がこのままでは国内での成長は期待できないという明確な認識をもつようになってきています。従来の輸出主導ではなく,海外に生産拠点を作る,あるいは研究・開発や販売を海外で行うことが会社の成長戦略の柱になってきているのです。ですからグローバル化の流れが止まることはないでしょう。
──10年以上前から国際化,グローバル化が叫ばれていますが,この数年で特に加速したように思います。
今までは国内での事業を伸ばしつつ,海外事業も伸ばそうという戦略でやってきましたが,もはや国内での成長は期待できない,なおかつ従来の輸出モデルでもうまくいかない。日本の高品質で価格も高い製品を生産し,輸出するという成功パターンが通用しなくなってきているのです。特に新興国に対しては,日本で売れている製品を輸出しても売れない。機能を絞っても価格が安い製品を作らなければ売れないということが明確にわかってきたのがこの1〜2年の変化です。
製造業だけではありません。流通・小売業,スーパー,コンビニエンスストア,宅配便などのさまざまな企業も海外に出ていこうとしています。
──そうなると日本人も当然,海外に出て行くことになります。その場合の課題とは何でしょうか。
大きな課題となっているのが,グローバルに活躍できる人材の育成です。従来の海外拠点は日本人が工場長や販売会社の社長など枢要な地位を務め,その下で働くのが現地の従業員という形でしたが,それだけでは優秀な人材を集められない。現地で採用した人にとって魅力ある会社にするには,彼らにも活躍の場を提供すると同時に,現地の人と一緒に働ける日本人も育てなければいけません。つまり,グローバル経営ができる日本人の育成と現地で採用した人材がリーダーとして活躍できる仕組みを作っていくことが求められています。
しかし,グローバルに活躍する人材を養成するという視点で考えると,これまでの日本の教育システムは不十分だったと思います。例えば英語に関して言えば,外国の資料を読み書きする能力はそれなりに習得していても,英語でコミュニケーションができる能力が不足しています。実際に外国人との交流では,間に通訳が入る正式な会議ばかりではありません。会議が終わった後の休憩時間や会食の機会など非公式な場で会話ができないとビジネスはうまくいきません。国際会議などでも,公式な場での発言というのは最終結論を出すためのものです。最終の会議の前の非公式の場を通じて,自分たちの考えを理解してもらい,賛同する仲間を増やし,一つの方向に導いていくためには,通訳なしのコミュニケーションがきわめて重要なのです。
(1) 大きな課題は,グローバルに活躍できる人材の育成
(2) 企業は自ら考え,イノベーションを担う人材を求めている