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2025年の「働く」ーこれからの10年をどう過ごすかで、未来は変わる

2025年の「働く」はどうなるのか?

予測プロジェクトの取り組み

 とうとう総人口が減少に転じた。グローバル化やテクノロジーの進化が、働き方に与える影響も大きい。

 果たして、2025年、「働く」はどのようになるのだろうか。

 私達リクルートワークス研究所では、1年半かけて「2025年の働く予測」プロジェクトを行ってきた。技術や経済等、労働市場以外の様々な分野の有識者に2025年の展望をたずね、労働市場の各種データが今後どのように推移するのかシミュレーションした。とりまとめた報告レポート「2025年─働くを再発明する時代がやってくる」をもとに、2025年を洞察してみたい(詳細は、http://www.works-i.com/research/2014/2025yosoku/からご覧頂きたい)。

「働く」は、まだ確定していないという発見

 「2025年の「働く」がどうなるかは、まだ決まっていない」

 冒頭から、肩すかしのようだが、未来予測と格闘した1年半の最大の結論はこれである。私達リクルートワークス研究所にとって、「2025年の働く予測」プロジェクトは、2015年予測、2020年予測に続く3度目の予測プロジェクトである。さらに、今回は多数の有識者へのインタビューも行っている。正面から検討して到達した結論のひとつがこれなのである。

 2025年の「働く」を、2015年、2020年予測の時のように結論づけることができない理由は、2つの変化にある。第一の変化は、人口が増加から減少に転じたことだ。私達はこれまでにそのような経験をしていない。

 そのため、過去の延長で未来を想定するだけでは適切ではない。実際、人口減少により雇用機会が喪失するという仮説も、人口減少により人材不足が深刻化するという仮説も成立する。どちらがどれだけの現実味を持つか結論づけることは決して容易ではない。第二に、長く続いた経済停滞から復調の兆しがあるが、それが今後10年続く保証はない。むしろ、再び失速する可能性もある。雇用は経済の派生需要のため、2025年の経済の見立てなくして、「働く」ことだけを予測するのは、誠実な態度ではない。

 2015年現在、このように2つの構造的な反転が起きており、2025年にかけて、その反転の影響を断定できないのである。インタビュー時に各界の第一人者から、「2020年は語ることができても、2025年は分からない」との意見が度々聞かれたのもこの証左だろう。

 2025年の「働く」は、このように今後の経済や労働需要の前提次第で、異なる様相を示す。そこで、このプロジェクトでは、3つの前提シナリオをもとに、2025年の労働市場を探索することにした。

シナリオ1:これまでの延長で起こる未来

経済活力が低下する2025年

 最初に、仕事に就く確率や失職する確率がこれまで同様に推移するベースシナリオのシミュレーション結果を紹介しよう。

 まず、就業者は2005年の6356万人から、2015年には6274万人、2025年には6091万人と減少する。一人当たり所得の平均も、2005年から2025年にかけて、370万円、355万円、341万円と減少する(図表1)。

 就業者、所得ともに減少するため、就業者と所得をかけあわせた日本全体の労働総所得も、2005年から2015年にかけて235兆円から223兆円に5.1%減少し、さらに2015年から2025年に208兆円と6.7%減少する。

 労働総所得を社会の経済活性化の指標とみなすと、日本は2025年にかけて活力を失い、衰退する。

2025年の就業構造

 ベースシナリオでは、就業者は2025年には6091万人になる。性別でみると、男性は2015年から230万人減少し、2025年に3355万人になるのに対し、女性は47万人増加し2736万人になる。就業者数は増えているものの、女性の就業率は2015年と2025年でほぼ変わらず、女性の労働参加も十分とはいえない(図表2)。

 年齢別の就業者数と構成比をまとめたのが、図表3・図表4である。年齢別構成比をみると、2015年から2025年にかけて最も増加するのは、団塊ジュニア世代の45〜54歳である。一方、高齢化が進んでいるにも拘わらず、2025年の65歳以上の就業者数は11%強と、2015年とほぼ同じ水準にとどまる。つまり、高齢者の就労を促進する強力な取り組みなくして、2025年にかけて高齢者の就労機会は増えないのである。

 15〜24歳の就業者は、2015年から2025年にかけて、510万人から439万人に減少し、構成比も8.1%から7.2%に低下、全年齢階層で最も少ない群となる。年齢別就業者数をみると、2005年までは15〜24歳の就業者は65歳以上より多かったが、2010年に反転し、2015年以降はその差がひらき、労働市場でも少子高齢化の影響が顕著になっている。

2025年の産業・職業別就業者数

 産業別では、製造業は2015年の936万人から2025年には798万人に減少する一方、就業者の増加が続いていたサービス業が、2020年の2938万人をピークに、2025年には減少に転じ2908万人になる。サービス経済化に伴う、第二次産業から第三次産業への産業構造の転換は、2020年まではこれまで同様に進むが、2025年にかけては、人口減少の影響が強まる(図表5)。

 サービス業の就業者の内訳をみると、宿泊業・飲食サービス業は2020年をピークに減少に転じ、増加傾向が顕著だった医療・福祉の就業者数も2020年を境に増加幅が縮小する。

 このように、サービス業であれば、就業者が右肩あがりで増加するというこれまでのようなことは、2025年にかけては起きない(図表6)。

 一方、職業別就業者数をみると、生産工程・輸送・機械運転従事者の減少が顕著である。このような労働集約的な仕事が、生産拠点の海外移転やテクノロジーの進歩により国内から失われていく可能性が高い(図表7)。

2025年にかけて緩やかに衰退していく

 過去トレンドの延長によるベースシナリオのシミュレーション結果は3点にまとめることができる。第一に、過去の延長では、高齢者の就労機会は増えず、女性の労働参加も十分には増えない。そのため、望んでも働くことができない個人が発生する。第二に、労働集約的な雇用機会は減少し、サービス業であっても2020年をピークに雇用機会は減少する可能性がある。これにより、一度仕事を失うと、次の仕事に就けない個人が生まれる。第三に、就業者数や賃金などをマクロレベルでみた場合、2025年にかけて日本経済は衰退していく。

 このように、これまでの延長で2025年を迎えると、雇用機会が減少し、人材余剰が起こり、社会全体が衰退していくと予想される。

シナリオ2:悲観的な未来

個人と組織の均衡が崩れるという懸念

 労働市場の構造が過去のままであれば、2025年にかけて就業者は減少し、所得は低下し、それらを乗じた労働総所得も減少する。その結果、日本の国内経済は衰退していく。しかし、この傾向は2015年現在、突如始まったわけではなく、同様の傾向が15年来続いてきた。

 これまで社会がまわってきたのだから、今後も緩やかに衰退しながらも社会はそれなりの活力を維持できるとも考えられる。にも拘わらず、2025年にかけて先行きの不安を人々が強くいだくのは、衰退トレンドに大きな下方圧力がかかっていると感じるからだ。

 下方圧力は、主にグローバル化やテクノロジーの発展という外的な環境変化と、人口構成の変化の2つによってもたらされる。世界的には、経済圏のグローバル化やテクノロジーの進歩による雇用代替が強く危惧されているが、言語の壁や解雇法制、仕事に求める水準の違い等から、日本国内に関しては、テクノロジーやグローバル化の影響は他国ほどドラスティックには起こらない。しかし、これらのインパクトは無視できない規模になるだろう。

 後者の、世界の先頭を走る少子高齢化と、それによる人口減少の影響は極めて大きい。超高齢化により、これまで働き手であり、税制や社会保障制度の担い手であった個人が、扶養される側に回る。少子化により、社会システムを担う人材は減少を続けている。さらに、人口減少によって、働き手そのものの不足が起こりえる。このような人口構成に関する構造的変化に、働く場創り、働く環境創りがついていけなければ、労働市場の均衡が崩れるのみならず、社会システムが維持できなくなる。

 しかも、現在、「働く」は、個人と組織の極めて危うい均衡状態のうえに成立している。長時間労働による過労死、過労自殺、ブラック企業における劣悪な労働環境は社会問題になっており、その一方で、人材不足による廃業や閉店が起きている。さらに少子高齢化に伴い、年金や生活保護の財源確保の見通しもたっていない。個人と組織の間の危ういバランスは既に崩れかかっており、2025年にかけてはそこに少子高齢化が重なるのだ。

 際どい均衡のうえに成り立っている就業構造のバランスが崩れ、さらなる衰退に転じる。その懸念が強まるのが2025年なのである。

衰退が加速する悲観シナリオ

 これまでの延長で2025年を迎えると、社会の活力は低下する。この[経済の停滞]がひきがねとなり、[雇用機会が喪失]し、それにより[離職者や解雇が増加]し、[失業者や無業者が増加]するという悪循環が発生する可能性がある。さらに、雇用代替やグローバル化によって[雇用機会が喪失]や[離職者や解雇が増加]が起こるが人材要件の違いから再び職を得ることができず、[失業者や無業者が増加]することにより、悪循環が加速する(図表8)。このように、離職確率が上昇し、労働市場への参入確率が減少する、悲観的なシナリオで2025年の労働市場をシミュレーションした。

 仕事を失う確率がこれまでの2倍に、仕事に就ける確率が1/2倍になるという悲観的なシミュレーションでは、就業者は2015年から557万人減少し5717万人に、無業者が500万人増加し5025万人になる。失業者は106万人増加し351万人になり、失業率が2.0%悪化し、所得平均も56.3万円減少し299万円となる。その結果、2025年の労働総所得(就業者数に所得平均を乗じたもの)は171兆円と、2015年から52兆円も減少する(図表9)。

 現在の「働く」を取り巻く際どい均衡状態が崩れ、悲観的なシナリオが現実のものになれば、社会の活力は大きく損なわれ、暗澹とした2025年を迎えることになる。

シナリオ3:楽観的な未来

繁栄シナリオに内在するリスク

 2025年にかけ衰退傾向に歯止めをかけ、いきいきとした未来を迎えるためには、働く人が増え、税制等の社会システムの担い手が増えることが期待される。ところが、2025年にかけての繁栄シナリオには、これまでの日本社会ではみられなかった大きな内在リスクが存在する。

 一般に、経済の繁栄シナリオでは、[経済活動が活性化]し、[雇用機会が創出]され、それにより[就業者が増加]し、就業者が消費者や次の経済活動を生み、[経済が活性化]する…という好循環が回る。ところが、人口減少に転じたわが国では、[雇用機会が創出]されても、人口減少や少子高齢化により、人材が獲得できない[人材不足]が発生する可能性が高い。こうなると、好循環は断ち切られ、繁栄シナリオが悲観シナリオに転化してしまうのだ(図表8)。

 人口減少や少子高齢化が進むことを理解していても、今なお、日本型雇用慣行の主役であった、「日本人・男性・正社員」というパラダイムから脱することができていない企業は多い。そのため、人材ニーズがあっても人材を確保できず、人材不足に悩んでいる。それはベースシナリオのシミュレーション結果でも裏付けられている。2025年にかけて過去を延長するだけでは、高齢者や女性の就労は十分なレベルにはならない。繁栄シナリオが人材不足によって切断されることが、強く懸念される。

 人口減少に入った日本では、このように、衰退シナリオのみならず、繁栄シナリオさえも悲観的な未来につながりえるというのが、2025年にかけて、日本の労働市場が直面している構造課題の正体である。

働ける確率が倍になって、初めて2015年を越える

 では、どうすれば活力ある2025年を迎えることができるのだろうか。

 2015年以上の経済規模を実現するためには、仕事に就ける確率がこれまでの2倍、仕事を失う確率が1/2倍になって、初めて2015年を上回る。

 このような楽観的シナリオにもとづくシミュレーションでは、就業者が2015年から115万人増加し6389万人に、無業者は172万人減少し4353万人に、所得平均は6.2万円増加し362万円になる。その結果、労働総所得(就業者数に所得平均を乗じたもの)も、2015年から8兆円増加し、231兆円となる(図表9)。

 ここまで述べてきたように、そもそも衰退傾向にあり、さらに下方圧力がかかっている中で、仕事に就ける確率をこれまでの2倍、仕事を失う確率を1/2倍にするのは、容易ではない。非常に強力な取り組みが不可欠となる。

 その取り組みとは、色々な価値観や制約を持つ多様な人材が働くことができる環境を創り出すことだ。多様な人材が働ける環境を創り出すことができれば、繁栄シナリオに内在する人材不足というリスクを超克できる。

ダイバーシティ(多様性)の実現

多様な属性を活かすこれまでのダイバーシティ

 実は、働き手のダイバーシティ(多様性)の推進は、15年来、雇用のメインイシューとなってきた。企業はもはや「ダイバーシティ疲れ」にさえなっている。にも拘わらず、2025年にかけてはさらに異なるレベルでそれを推進する必要がある。

 これまで企業が取り組んできたダイバーシティには二つの系譜がある。第一の系譜は、グローバル人材の経営ボードへの登用や、女性の管理職への登用等、“タレント人材”の登活用だ。これは、これまでの慣習により、能力に見合うだけの活用がなされていなかった人材を活かすことに主眼がおかれている。いわゆる日本型雇用慣行のもとでは主役だった日本人・男性から、その役割を外国人、女性にも拡大するために、まずは目標を設定し、人材を登用し、風土改革につなげるという、順序を逆転した手法もとられている。日本企業が人材のダイバーシティを進めることは、それほどに難しいのである。

 第二の系譜は、非正規労働力の活用である。「多様な働き方」とは、派遣社員等、非正規雇用形態の拡大を意味することも多い。企業は競争力を高めるために、機動的で柔軟な人材活用を進め、その結果、非正規雇用率は4割近くまで上昇してきた(総務省「労働力調査」)。しかし、昨今、非正規雇用者の割合が高い飲食業やサービス業ほど、人材不足が深刻になっている。非正規労働は賃金等の労働条件が悪いことが多く、求職者から敬遠されてしまうのである。

「モザイク型」の組織で成果をあげるこれからのダイバーシティ

 2025年にかけては、属性のダイバーシティから、価値観や制約等、深層レベルのダイバーシティに進めていく必要がある。特に、周辺的な仕事だけでなく基幹的な業務や役割を担う人材の働き方の多様性の担保と、そのような多様な働き方の個人が発揮するパフォーマンスを組織として最大化するインクルージョン(包摂)の実現が必要である。

 2025年にかけては、高齢化により、人口の2大ボリュームゾーンである団塊ジュニア世代が団塊世代の介護に直面するようになる。男性の未婚率や女性の就業率が上昇しているため、介護の負担は企業で中核的な役割を担う男性にものしかかる可能性が高い。そのような、時間的、地理的、経済的な制約と両立する働き方が求められるわけだが、これまで非正規雇用は基幹人材の領域では浸透していない。

 また、労働時間に制約を持つ女性や、身体能力がかつてほどではない高齢者等、何らかの制約を持つ個人が職場に増えていくに伴い、同質的な人材を前提としたこれまでのマス管理は通用しなくなる。今後は、組織構成員それぞれの持ち味や制約を加味した、相互補完的な業務設計と、そのような多様な人材で高いパフォーマンスを発揮する人材マネジメントが極めて重要になる。だが、リクルートワークス研究所「人材マネジメント調査」によれば、52.9%の企業が「マネジメントスキルの向上」を課題だと回答しており、多様な人材を活かした相互補完的な「モザイク型」の就労を実現するためのハードルが高い。

 このように、2025年にかけて企業は、人材の多様性、働き方の多様性をこれまで以上に高めざるをえないものの、それを支えるだけのマネジメントに進化できるかには疑問が残る。人材マネジメントの再創造は、今後10年の企業の大きな課題となっていくだろう。逆に働く個人からみれば、2025年にかけて、マネジメントの機能不全に直面するリスクが高まっていくともいえよう。

2025年に「働く」ということ

さらに稀少になる若年層

 ここまで2025年の労働市場を洞察してきた。超高齢化とそれによる人材不足が、労働市場に大きな影響を与えるため、ここまでの考察で若年層にはほとんど言及してこなかった。

 2025年に向けて若年層を取り巻く環境はどのようになるのだろうか。

 前述したように、少子化の影響を受け、2025年に向けて15〜24歳の就業者は減少を続ける。このように減少が続く中ではあるが、企業の若年を採用したいという意欲は衰える気配がない。学卒者の採用は、人材の育成、組織構成のバランス、人件費の抑制、慣習の継続等、企業にとって様々な意味で強い合理性を持っており、そのまま維持したいという意向が強いのだ。

 そのため、2025年にかけて、学卒者の争奪戦は一層強まるだろう。

 2025年は、若年層にとって、入職時点ではこのように有利な状況となるが、入社後は必ずしも恵まれているとはいえない。マイノリティとして、前述したようにマネジメントの機能不全が起きている職場に参入することになるため、十分に面倒を見てもらえない可能性があるのだ。そのため、より自律的にキャリアを形成していく必要がある。

キャリア自律の必要条件

 2025年に自律的に働くには、多様な人材と、主体的に関わりながら、創造性の高い働き方をすることが期待される。

 多様な人材には、外国人だけでなく、年配者や子育てや介護で時間的な制約を抱える社員等が含まれる。様々な価値観やバックグラウンド、ライフスタイルの中で、職場を共にする仲間だ。その一方で、人材の多様性が増すほど、同じゴールを共有し、同じように働くことは難しくなる。上長が組織マネジメントに手をとられ、十分に面倒を見てくれない、ということが起こりえる。しかも、少子化の影響で切磋琢磨できる同期は少ない。自ら周囲に能動的に教えをこうなどして、仕事の仕方を学んでいく必要がある。

 しかも今後、企業の競争環境は不確実で、厳しくなる一方だ。同一産業であっても、企業によって明暗がわかれるようになる。そのような厳しい競争下で企業は社員に、より高い付加価値を求めるようになる。例えば、イノベーティブな仕事。例えば、時間当たりの生産性の向上。そういった仕事ができるかは、本人の創造性次第だ。

教育に期待されること

 2025年にかけて、個人のキャリア形成はさらに難しくなっていく。職業人生が長期化する中で、ひとつの企業、職種だけで生涯のキャリアを全うできなくなっていくからだ。環境変化が激しい状況下では、特定の専門力にとどまらない、行動特性や地頭などの基礎力や環境適応性に代表される職業的態度が、個人のキャリアを支えるようになる。今後は、このようなキャリアの礎となる能力や態度を学生に身につけさせることが、教育機関にも期待されるようになるだろう。

 今後は、加えて、人的ネットワーク資本の構築の強化も教育機関に期待される。これまで対人関係は、コミュニケーション力やリーダーシップ等、もっぱら個人の能力として議論されてきた。だが、そのような能力だけでなく、人的ネットワークそのものが価値を持つ時代になってきている。

 例えば、労働市場が流動的な諸外国では、人的ネットワークを通じた職探しが一般的である。毎日、顔を合わせる家族のような“強い紐帯”よりも、1年に一度会う学生時代の同窓のような“弱い紐帯”を持つ人ほど、職探しがスムーズであるというグラノベッターの紐帯理論がよく知られている。また、企業は近年、志向するようになっているほかの機関と連携したオープン・イノベーションも、従業員の人的ネットワークに依拠した仕組みである。

 これまで教育機関は知識を学ぶ場だと位置づけられてきた。だが、メンバーシップ型社会である日本では、人的ネットワークそのものが強い価値を持つ。アルムナイ等、教育機関は、本来、人的ネットワークの形成機能が有している。その機能をより前面に出し、強めていくこともまた重要だろう。

いきいきと働く社会を実現するために

 「2025年の「働く」は、まだ決まっていない」と、冒頭に述べた。裏返せば、これは、「これからの10年をどう過ごすかで、未来は変わる」ということでもある。

 2025年にかけては、これまで同様の前提を維持できても、社会は緩やかに活力を失っていく。現実にはそこに、少子高齢化やグローバル化などにともなう様々な社会システムの機能不全が下方圧力として加わる。そのため、衰退した未来の到来が強く危惧されるのが2025年だ。この悲観的シナリオを回避するには、今までの延長線上ではなく、多様な人材がそれぞれの能力を発揮できる、新しい働き方・働く場を創り出す必要がある。

 新しい働き方・働く場を創る主役は、企業や行政だけではない。働く一人ひとりだ。とりわけ、少子化によりマイノリティサイドになる若年層は、この問題に直面せざるをえない。このような2025年に向けては、自ら創造的な働き方、生き方を実現できる人材の育成が強く期待される。社会の難しさが増せば増すほど、教育機関への期待は高まる一方だ。

 課題先進国として世界の最先端を走る日本の未来は、ひとつ間違えればとても暗いものになる。だが逆に、これほど挑戦しがいのある難題もない。

 私たちが自ら答えを見つけ出し、一人ひとりがいきいきと働く社会を実現できれば、未来は明るい。

 いきいきとした2025年を迎えることができるかは、私たちの「働く」をめぐる創造性にかかっている。

中村 天江(リクルートワークス研究所 主任研究員)