リクルート「進学センサス2011」報告(カレッジマネジメント Vol.171 Nov.-Dec.2011)

リクルートでは,高校生の進路選択行動の変化を把握するために,2年ごとに大規模調査「進学センサス」を実施している。前回2009年調査では,私立大学でAO・推薦入試が過半数を占めるようになり,それに伴う進路選択行動がどう変化したかという観点で整理した。今回の「進学センサス2011」では,リーマンショック後の長引く不況によって,高校生の選択行動がどのように変化したのかをテーマに調査を実施した。

結論から言うと,今回の調査結果では,3つの変化が明らかになった。1つめは,長引く不況は,高校生の進路選択において徐々にだが,明らかに影響を与えているということである。高校生の学校選択重視項目では,「就職に有利」「資格取得に有利」といった“出口・卒業後”に関する項目と,「自宅から通えること」「学費が高くないこと」といった“家計”に関する項目が上昇しており,家計と卒業後のキャリアを意識して進学先選びをしていることがわかる。また,志望校選択時の地元志向も高まっている。

2つめは,学校調べの早期化が進み,オープンキャンパスの位置づけが変化していることである。オープンキャンパスは,今やほとんどの高校生が参加するイベントとなった。その一方,特に進学校を中心に,1,2年生から参加する傾向が強まっている。背景には,「学部・学科名称から学ぶ内容がわからない」「入試の多様化に対応できない」高校現場において,自分で見てきなさい,聞いてきなさい,という進路指導が行われていることがあげられる。大学・短大・専門学校側から見れば,1,2年生の参加者が増えるということは,ファン層を増やすことにつながるものの,歩留まりの悪化が懸念される。

3つめは,保護者の関与がより高まっていることである。オープンキャンパスや学校見学会への保護者同伴比率が年々増加している。保護者と高校生の学校選択重視項目を比較すると,保護者のほうが高校生にも増して「就職(卒業後)」や「費用」を重視しており,保護者への情報提供にも工夫が必要だ。

今回の調査からは,最終進路別だけでなく進学校か多様校か,男子か女子か,都市部か地方部かなどによって,大きく進路選択行動や重視項目が異なっていることがわかった。記事のなかでご報告できるのは,一部分ではあるが,学生募集マーケティングの一助となれば幸いである。なお,今回の調査は,東日本大震災の直後に実施したため,東北地区と茨城県の一部については調査対象から除いていることをご了承いただきたい。

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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長

小林 浩

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