学部・学科トレンド2015(カレッジマネジメント Vol.190 Jan.-Feb.2015)

 企業では、マーケティング戦略の一環として、「プロダクト・ライフサイクル」という考え方がある。学部・学科も、言わば大学の“商品ラインアップ”と位置づけられる。そのため中長期的に見ると、やはり商品と同じように「ライフサイクル」が存在している。

 こうした学部・学科におけるライフサイクルのトレンド分析を行ってみると、社会環境の変化に大きく影響を受けていることが分かる。これまで2008年、2010年、2012年とトレンド分析を行い、大きな反響を頂いた。

 今回の分析では、新たな変化の兆しが見えるものとなっている。中長期的に見ると、これまで2008年9月のリーマンショック、東日本大震災を経て、長引く不況や将来不安が、学部・学科のトレンドに大きな影響を与えてきた。しかし、2012年以降のトレンドを見ると、アベノミクスや東京オリンピック開催決定などによって、景況感が少しながらも改善(就職環境の改善)し、グローバル化の急激な進展などの社会環境の変化も相俟って、学部・学科のトレンドにも変化の“兆し”のようなものが見て取れる。

 今回は、単独分野のトレンド分析、複合分野のトレンド分析、新設学科のトレンド分析に加え、そうした変化の“兆し“から見えた、これからの新たな潮流について考察してみた。すると、『農学』『国際』『医療』といった分野を核として、その周辺分野を複合させた新たな領域が拡がっていることが分かった。農学領域は、食の安全や生物資源、6次産業化の推進に向けた拡がりが見て取れる。国際領域は、対欧米だけではなく多極化する世界に対応するための異文化理解や多言語対応、国際と様々な専門分野の組み合わせなどが生まれている。医療領域(医・歯・薬を除く医療関連分野)では、これまで看護、リハビリテーションなど、治療及び病後ケア分野が増加していたが、近年はスポーツ、栄養、健康科学など、予防医療の分野にも拡がりをみせている。こうした領域の拡大は、言い換えると、これからの日本が抱える「社会課題解決型」の学部・学科開発が拡がっているとも言えるのではないか。

 学部・学科の開発は、各大学の建学の精神や教育理念と併せて考えることが必須である。しかし、大学が社会環境の変化と無縁ではいられないのも、また事実である。学部・学科のトレンドを後追いすることを是とはしないが、将来に向けた社会課題を解決するための人材を送り出すのも、大学の大きな役割である。今回の特集が、少しでも今後の学部・学科を考える際の参考になれば幸甚である。

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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長

小林 浩

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