グローバル人材をどう育成するかⅡ(カレッジマネジメント Vol.169 Jul.-Aug.2011)

前号から2号にわたってグローバル人材をどう育成するかを特集する。今号では,特にグローバル化の大きな影響を受けている企業の人材ニーズの変化と,激動するアジアの動向に注目して特集を企画した。


企業の人材ニーズについては,将来の成長基盤を海外に置く企業の人材ニーズの変化や,新卒採用の動向,社員をグローバル化にどう対応させていくのかという観点でレポートしている。
アジアの状況については,一般的に内向きといわれる日本の学生と,アジア各国の学生の就業意識の違いについて,学生調査に基づき,分析を行った。また,これまで8カ国の高等教育事情についてリレー連載してきた「ダイナミック・アジア」の最終回として,新興国を含めたアジア各国の取り組みと,そのなかで日本が果たすべき役割,そしてアジアの中の日本という視点で,グローバル人材をどう育成するのかについて,座談会を行った。


2回にわたる「グローバル人材育成」の特集を経て,わかったことは何だろうか。

ひとつは,「グローバル化」の意味するところが変わってきたということではないか。2000年代前半までの「グローバル化」とは『欧米化』だったように思える。しかし,現在起こっている「グローバル化」は,人口増加と生活水準の向上というバックボーンをもった新興国が台頭するなかでの『多極化』に変化してきているのではないか。

そしてもうひとつは,市場がグローバル化するなかで,今後も人材は国境を越えてダイナミック移動することではないか。このような環境下で,求められる人材はどのような人材なのか。「多極化」する世界のなかで,多様な異文化に対応する柔軟性をもち,英語という共通言語を中心とした複数の言語をコミュ二ケーションツールとして操りながら,新しいことにチャレンジすることができる人材である。そうした人材を育成するためには,大学は,世界で通用するプログラムの「標準化」と,日本の文化や各大学の理念に基づいた「個性化」を同時に進めなければならない。

しかし,発展著しいアジアの新興国も手をこまねいて待っていてはくれない。
5年後,10年後の世界を見つめながら,今何をしていくべきか,日本ができること,そして各大学でできることは何かを,これからも一緒に考えていきたい。

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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長

小林 浩

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