地域で選ばれる大学(カレッジマネジメント Vol.191 Mar.-Apr.2015)

今後、世界的に急激な都市化が進んでいくという。様々な将来予測で、メガシティとそれ以外という風に分かれていくだろうといわれている。先日、日本でも人口の東京一極集中が進んでいるという報道があった。大学の主たる入学者である18歳人口も全国的に減少するが、それは28ページで示した通り、全国一律ではない。

今後の大学入学者を予測するには、各地域の人口減少率と地元残留率、そして他地域からの流入率を掛け合わせた複雑なシミュレーションが必要になる。2002年に全国平均で40.5%だった高校生の地元大学への進学率(地元残留率)は、長引く不況による家計負担増加の影響もあり、2014年には43.2%に上昇した。しかし、2015年入試では景気回復の兆しを受けて、受験生の都市部回帰の動向も報告されている。

 地方圏から東京圏への転入超過は、大学入学時及び大学卒業・就職時の若い世代に集中している。こうした地方の動向について、政府も手をこまねいているわけではない。大学の教育改革等を通じた雇用創出・若者の地元定着率の向上による若年層人口の東京一極集中の解消に寄与する「地(知)の拠点整備事業(COC)」は、地方創生の流れを受けて、2015年度は「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」として進められる。折しも、文部科学省の有識者会議で経営共創基盤の冨山CEOが発表した「G(global)型大学、L型(local)大学」の役割分担論は、Web上で大きな議論を巻き起こし、高等教育複線化の新制度創出の議論へと進んでいる。

 日本私立学校振興・共済事業団私学経営情報センター「平成26年度私立大学・短期大学等入学志願動向」によると、私立大学の45.8%が定員未充足となっている。特に宮城、埼玉、東京、神奈川、名古屋、京都、大阪、北陸、福岡を除いた地域に存在し、1学年の定員規模が800人以下の小規模大学で定員割れが顕著だ。そうした中、今回は地方にありながら、V字復活を遂げた大学の事例を紹介したい。地方の人口減少エリアであっても、知恵を絞り、全学をあげて改革を進めることで、逆境を跳ね返している。また、大学だけでなく、過疎地域で入学者を増やしている高校の事例も紹介した。

地方の小規模大学に必要なのは、地域の特徴を生かし、個性を磨いて差別化を進めながら、マーケティング戦略を強化することではないか。もはや人口減少からは逃れられない。今回の特集が、地方で生き残る大学の経営戦略の一助になれば幸いである。

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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長

小林 浩

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