入学後教育に必要な多様性の確保と受験生目線の情報提供/千葉商科大学

POINT
  • 1928年設立の巣鴨高等商業学校を前身とし、1950年に開学
  • 商学部商学科の単科大学から近年度重なる学部学科新増設により規模を拡大し、現在5学部7学科を擁し「社会科学の総合大学」をうたう
  • キャリア教育に積極的な企業とアライアンスを結ぶCUCアライアンス企業ネットワークでも知られる実学志向の大学

 千葉商科大学(以下、CUC)は受験生向けサイトCUC-NAVIにて、2021年度の入試方針を公表している。
https://www.cuc.ac.jp/prospective/admission/exam2021/
「やりたいことにつながる入試を選ぼう」と称し、「新しい世界に挑戦したい」「学力を重視したい」といった高校生の視点と、「意欲ある学生がほしい」「企業や地域と学びたい学生がほしい」といった大学からのメッセージをつなげる見せ方。2021年度方針を公表している大学は全体で7割を超えた(2019年10月現在・編集部調べ)が、文書や箇条書き等での公表が多く、ユーザー観点で情報を整理している大学は極めて少ない。3年前からは「総合評価型入試」を導入し、多面的・総合的評価を実践している。そうした施策の趣旨と内容について、千葉県市川市のキャンパスを訪ね、入学センター長の出水淳氏にお話を伺った。

評価ツールの組み合わせで入試を設計

 CUCの2021年度方針では、学力の3要素を測るために必要な12のツール(図1)を提示したうえで、重視するポイントにより評価ツールの組み合わせが異なる入試を複数設計し、全体として入学者の多様性を確保している。12のツールはレゴ®ブロックに例えられる。組み合わせ次第で何にでもなれるというメッセージを示唆しているようだ。

図1 12の評価ツール

 2021年4月入学者対象の入試ガイドでは、各入試を以下の観点で整理し、概要をつかめるリードとともに紹介している。

  • 12の評価ツールをどう組み合わせるか
  • 学力の3要素評価の比重
 図2にその例を示した。

※クリックで画像拡大
図2 入試説明例(総合型選抜9月期プレゼンテーション型)

現状の入試の因数分解から方向性を定める

 こうした内容を検討するに当たり、CUCはまず現状入試を機能的側面で因数分解することから始めたという。「現状良い人材を選抜するのに寄与している要素は何か。入学後の教育効果が最大化されている入試設計は何か。現状有機的に機能しているものを中心に『CUCで総合的に評価するとはどういうことか』という観点で入試全体のコンセプトを決めていきました」と出水氏は言う。具体的には、CUCで現実的に機能している評価ツールをまず定め、それが学力の3要素のどれを測るものに該当するかを整理し、その最適比重を模索していった。CUCの学生として有効な要素を1つの入試で全て測るのは無理なので、入試制度全体で多様性を担保するように議論を重ねたという。検討を開始したのは2017年のことである。この時期に将来を見据えた入試全体のコンセプトメイクを議論していた大学は全国でも稀有であろう。その起点が学力の3要素ではなく現状入試の分解からというのがまた示唆に富んでいるように思われる。ポリシーに沿った選抜が実施されている前提ではあるが、現状の何が有効で何が不要なのか、という自校のこれまでの責任に向き合い、目の前の学生に向き合い、CUCならではの必要要素を共通認識に据えたことで、議論は加速した。検討主体は学長直下に置かれた大学入試本部会(学長と学部長で構成)の諮問機関である入学センター連絡会(出水氏が座長、各学部の入試委員等で構成)が中心だ。意思決定が迅速なラインに横断的な重要事項として入試を定めている。

 最終的には、12の評価ツールに学力の3要素を掛け合わせて入試のバリエーションを決めた。決定の判断基準は以下3点だったという。

  • 学内的にも学外的にも分かりやすいか
  • オペレーションにも受験生にも余計な負荷がかからないか
  • キャッチーであるか
 「今までやったことがない方法でいきなり負荷を高めるのは現実的ではない。現状をきちんと分解して再設計したうえで、極力現状を維持して最大の効果を出すための方策を探りました」と出水氏は言う。③の「キャッチー」とはまた特徴的だが、出水氏は「多面的・総合的評価については、やるなら最初でなければ意味がなく、それが社会にきちんと伝わらなければまた意味がないと考えていました。偏差値序列に関わらず本学の価値をメッセージ性高く打ち出すチャンスとしても高大接続改革を捉えています」と続ける。CUCではオープンキャンパスでも、「2021年度入試対策講座」「CBT入試問題体験会」「記述式問題対策講座」といった、高校生が戸惑うであろうポイントを押さえた講座を提供する等、徹底したカスタマー視点で制度設計・情報提供を行っている。

一般入試で調査書評価を行う総合評価型選抜

 入試制度全体の設計が進む一方で、3年前から一般入試において調査書評価を加える総合評価型も導入している。学力試験2科目200点満点と調査書40点満点、合計240点満点で受験生を評価するもので、出水氏は「落とすための入試ではなく、育てたい学生を選抜する制度」と話す。調査書の評価ポイントは出欠、評定平均、資格取得、その他課外活動だ。「学力試験で1、2点足りなくても、本学の教育にマッチする人材が欲しい」と出水氏は言う。これまでは受験生=学力試験の点数だったが、そこに現れない適性や目的意識、人物像等を汲み取ることで、よりCUCの教育にマッチし、CUCらしい学生になりそうな受験生を見極めることができるようになった。1年目、2年目ともに、他入試と比べて入学率が2倍近く高く、よりCUC志望度が高い学生が選抜できているという。2021年度に向けては入学者の追跡調査実施のうえで、定員拡大等を検討しているという。

社会ニーズから教育と募集を展望する

 こうした動きの先にあるのは当然入学後の教育である。CUCは就職キャリア支援の「CUCアライアンス企業」制度で知られる大学だ。CUCアライアンス企業とは、「企業と大学が連携して、社会に貢献できる人材を送り出すという趣旨に賛同し、CUC学生の採用や育成に積極的な企業」を指し、現在820社ものネットワークを持つ。大学と企業が連携して学生を育成するその趣旨からしても、社会ニーズや企業人材に求められる資質能力への考察は深い。出水氏は言う。「本学で具体的に想定しているのは中小企業での中核人材です。中小企業は規模が小さい分、大企業に比べて横断的にマルチに多彩な業務を行うケースが多い。特定技能に突出するよりも、自律的に業務を設計する力、対応力やコミュニケーション能力、多彩な分野への興味関心が大事です。本学はそうした観点で学部学科を展開しており、学び方はアクティブラーニングやPBLが中心。自律的に動けるように学生を支援しています。全て社会を見据えての設計なのです」。また、社会が多様である以上、必要な人材は一元的ではあり得ない。だからこそ、入試も教育も多様性を重視する。社会の目で見た時に違和感のない設計になっているかを注意しながら、CUCらしい入試でCUCが育てたい学生を獲得したいという。こうしたスタンスから、募集選抜は採用に近づいているようだ。また、こうした観点が強い大学だからこそアライアンスも増えるのであろう。

 多様な社会ニーズをくみ取る実学教育が軸だからこその入試の在り方。実務家教員、学外からの招聘教員等の存在、実際に企業連携教育等で成長した在学生の存在もこうした方向性に拍車をかける。多様な社会ニーズが教育の実践性につながり、それがアドミッションポリシーと入試設計へ一貫して繋がる。リアリティの豊かさがあるからこそブレないのだろう。CUCの今後に引き続き注目したい。

編集部 鹿島 梓(2019/11/15)