「授業」で社会を生きる力を育む(3)(工学院附属中学高校・高橋一也先生)

工学院大学附属中学高校(東京・私立)
高橋 一也 先生 【英語】

たかはしかずや●1980年秋田県生まれ。勉強嫌いだったが中学生の時、土器の発掘・復元など身体も使う探究的な授業をする先生と出会い、学ぶ面白さに目覚める。慶應義塾大学・大学院では英米文学を研究、英国との中世文学デジタル化プロジェクトに携わりICTで文学研究が変わるのを目の当たりにする。2006年、聖学院大学の研究員になり在職中に教育とICTの融合に関心をもって留学。米国ジョージア大学教育大学院でインストラクショナルデザインを修め、全米優等生協会(Phi Kappa Phi)に選出される。経験に頼らず理論を学ぶことが学習効果の高い授業を作る、と実感して帰国。08年から聖学院中学・高校の英語教諭になり、学習理論に基づいた授業、ICT 導入、LEGOを活用したワークなど思考力・創造性を育む授業に取り組む。さらに行事を生徒主体のPBLとしてデザインするなど、学校全体の授業改革の下地を作った。15年に工学院大学附属中・高校教諭に。社会課題解決に挑戦する海外研修をはじめとする、創造性と志を育む実践が評価され、16年3月、第2回Global TeacherPrizeにおいて世界148か国、8000人の中からトップ10に選出された。同年4月、36歳で中学教頭に。インターナショナルバカロレア英文学AとTOKの教授資格をもつ。

勉強と遊びは同じもの。
感情と思考を刺激する創造的な学びを

勉強と遊びは同じものだと思っているんです。学校が楽しいのがいちばん。ワクワクする、熱中する、仲間と協働する、そういう時に学習効果が高いことは理論的にも裏付けられています。ではどうしたら学習効果の高い授業ができるのか。それは、枠組みをきちんと作ることだと思います。生徒を管理するのではなく、枠組みの中で遊ばせるんです。

 僕の授業は問いかけ→演習→振り返りが基本の型。最初の10分ぐらいで学ぶ内容と方法を示し、生徒の思考が刺激されるような問いを投げかける。その後は生徒が仲間と、あるいは教材、教師と対話をしながら学び、最後にリフレクションで成長をメタ認知するというものです。ABCから学ぶ中1の授業でも、高3の受験生向け授業でもそれは同じです。

 はっきり言って僕は授業がうまいと思っていません。でも、テーマや問いの設定など、生徒のコミュニケーションが活性化するような枠を作ること、もっと言えば学校全体の環境を変えることで学びの質は高くなると考えています。授業は50分間の中だけのことではないし、リアルの空間だけでする必要もない、教科の枠だってなくていい。そして、チームで作っていくものです。

 先日、教科書の「芸術の役割」がテーマの文章を扱った時は、美術と音楽の先生にも加わってもらってワールドカフェ形式でディスカッションをしました。職員室が対話にあふれていれば、こういう授業もやりやすくなると思うんです。

 授業で生徒に伝えているのは、創造的であってほしい、やることに責任をもってほしい、自立した学習者であってほしい、そして学んだことを他人のために活かせる人になってほしいということです。主体的に学べる生徒が主体的に社会に参画できる人になる。だからこそ学びたくなる学校、学びがいのある授業を作っていきたいと思っています。

(取材・文/江森真矢子 撮影/竹内弘真)