(総合的な学習の時間)「社会を生きる力」の根源となる、「なぜ働くか? 」を考える

立命館宇治高校(京都・私立) × 小誌編集部 共同開発授業

酒井 淳平 先生

教員歴18年目。数学科教諭。2013年度よりキャリア教育授業(キャリア・サービス・ラーニング、以下CSL )を担当し、カリキュラムづくりから実践まで行っている。

徳地 克己 先生

教員歴3年目。数学科教諭。立命館宇治高校出身で、現在ともにCSLを担当する髙野先生は高校時代の担任。期待のホープとして今回酒井先生とともに特別授業の1時間目を担当。

働く意義を見出すことで自分の人生を自分でつくれる人になってほしい

「働く」ことの多様な価値を高校生に感じさせたい

CSL担当の先生方
今回の授業をともに考案されたCSL 担当の4人の先生方。左から徳地先生、キャリア教育部長の武部先生(英語科)、酒井先生、髙野先生(社会科)

 前ページまでは、教科において、「社会を生きる力」を育む授業を実践している先生方の事例を紹介してきた。生徒たちが将来「社会に出る」ということは、「働く」ということだ。では、働く理由については、どのような場面で考えればよいのだろう。

 そこで、キャリア・サービス・ラーニング(以下CSL)という授業で「働くことについて考える」授業を実践している立命館宇治高校に協力を仰ぎ、「なぜ働くか?」を生徒たちが考える授業を設計、実践していただいた。同校の酒井淳平先生には、小誌402号にて「なぜ学ぶか?」という授業を共同開発いただき、学びの根源を考える授業として大きな反響をいただいた(※402号は『キャリアガイダンス』のHPでご覧いただけます)。 

「社会を生きる力」には、自立する力、社会に貢献する力、他者と相互理解する力など、様々な力が考えられる。前ページまでに登場した先生方も生徒に育みたい力について、それぞれの想いで授業を設計している。それらの力を発揮する「社会」とは、多くの場合「働く場面」であろう。では、なぜ人は働くのか? どんな思いで働いているのだろう? 社会人になれば個々に感じる働く意義を、高校生にどのようにしたら感じさせることができるだろう。

 学びの先にある「働く意義」について考えるために、酒井先生が以前から実施している授業を汎用的に設計していただいた。立命館宇治高校でCSLを担当している4人の先生で内容を検討。特に授業のベースは、生徒たちに年齢も近い徳地克己先生が中心となり、「自分が高校生のときに、どのような授業なら働く意味について考えられたか」を意識してつくっていただいた。

「高校生はまだ働くことのイメージがありません。『収入のため』以外の価値は想像できていない生徒が多いと思います。この時期に、働くことの多様な価値に気付くことができれば、その後の学校生活が変わってくるのではないでしょうか」(徳地先生)

働く意義は、学校生活とどうつながっているか

 作成いただいた指導案の抜粋を左記に、実践した授業の様子、生徒たちの反応を次ページでレポートしているので参照されたい。授業設計で難しかった点について酒井先生に伺った。

「『学ぶ』の先にある『働く』ことを『自分ごと化』させる難しさを感じました。働く意義や思いについて、様々な大人の事例を提示しながら生徒に考えさせるワークをはさんでいきましたが、それだけでは足りず、指導案を何度も何度も練り直しました」

 そこで、働いている大人4人の事例について共感するものを選ばせたり、各事例についてグループで考えを深め合ったうえで、異なる事例の担当同士のグループで考えをプレゼンし合う、ジグソー的な活動をさせることにした。また、社会で働くことを考えさせながら、学校生活の中で自分がやりたい役割について考えるワークも行う。

「働くことの意義も思いも人それぞれです。やりがい、世の中のため、自分を表現するためなど、当然正解はありません。けれど、『働く』とは、考えれば考えるほど『生きること』に行き着く。高校生も『生きて』います。根本は一緒で、学校生活で勉強や部活、行事をする際に、いろいろな意義や思いをもっているはずです。普段は意識せずに行動していることを言語化させて、働くことと照らし合わせることまでできたらいいと思います」(酒井先生)

生徒が考えて答えを見つけるCSLの手法を教科でも

 今回の授業は、1学年次にCSLの授業を経験している2学年の生徒たちに受けてもらった。多くの生徒が授業前は「働くことはお金のため」と答えていたが、授業後に大きな変化を見せていた。

 CSL担当の先生方自身が、教科授業も含めて、生徒にどんな資質・能力を育みたいと考えているか尋ねてみた。

「言われたことだけでなく、自ら問いをたててどうすべきか考える習慣をつけたいです。数学でも『なんとなくわかった』ではなく、『なぜそうなるのか?』まで考える力を育みたいです」(徳地先生)

「ひとつの事象に対して多面的に捉えられるようになってほしいです。見え方や捉え方は自分次第で変わることを知ると、自分の軸がもてるようになると思います」(髙野阿草先生)

「生徒に育みたい力というより、CSLと教科では目立つ生徒が異なっていて、普段自分が生徒の一面しか見ていないのではと思うことが多々あります。先回りして教えるのではなく、生徒を信じ、CSLのように彼らが自分で考えて答えを見つけるのを『待つ』大切さを感じています」(武部恵子先生)

「自分の人生を自分でつくれる力を身に付けてほしいです。教科で壁にぶつかったときに、乗り越えようと自ら考える行為は人生も一緒です。それを繰り返すことで、自分にできること、やりたいことが見えてくると思います」(酒井先生)

(取材・文/松井大助)