教育×ICTの衝撃(カレッジマネジメント Vol.185 Mar.-Apr.2014)

 何故、今大学入試制度の“転換”が求められているのだろうか。その背景には、「グローバル化」と「ユニバーサル化」の2つの大きな潮流がある。グローバル化を背景に、正解のない時代のなかでチャレンジできるイノベーション人材の育成が求められている。その一方、2013年度入試において私立大学の4割が定員割れとなり、経営的な事情から学力や適性よりも学生数の確保を優先せざるを得ない大学も少なくない。本来、多面的評価のために導入されたAO入試だが、導入から20年経った現在でも、その定量・定性両面含めた検証が行われていないのが実情だ。

 では、いったい大学側は入試制度についてどのように考えているのだろうか。今号では、教学経営的な観点から入試制度について、どのような課題認識を持ち、方向性を目指しているのかについて、東京大学両角亜希子准教授と共同で学長アンケートを実施した。当然、大学の置かれた環境やポジショニング、設置形態、志願倍率、規模などによって、回答は大きく異なっている。そのため、「大学」の課題や方向性をひとくくりに議論するのは困難である。調査結果については、できるだけ区分を分けて分析を試みた。また、リポートでは、国の議論を待たず、入試改革に動き出した大学の事例もまとめている。

 今回の調査は、教育再生実行会議第四次提言が発表される前に実施したため、達成度テストの可否について、直接は聞いていない。しかし、多くの学長の声が詰まった調査結果となっている。第四次提言の中では、「大学入学者選抜は、各大学のアドミッションポリシーに基づき、能力・意欲・適性や活動歴を多面的・総合的に評価・判定するものに転換する」と記されている。つまり、各大学は“このような人材を育成する(ディプロマポリシー)”ために、“このような教育を行い(カリキュラムポリシー)”、“それを学ぶ準備ができているか(アドミッションポリシー)”という3つのポリシーをきちんと定め、受験生に対して発信してください、と言っているのである。まさに、どのような入試を行うかは受験生へのメッセージに他ならない。

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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長

小林 浩

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