カレッジマネジメント Vol.185  Mar.-Apr.2014

カレッジマネジメント Vol.185 Mar.-Apr.2014

教育×ICTの衝撃

リクルートが行う調査データ、国内外の先進事例、人材市場、専門家の解説などにより、「大学経営のサポート誌」としてタイムリーなテーマを発信しています。

編集長が語る 特集の見どころ

 “EdTech”という言葉をご存じだろうか。EducationとTechnologyを組み合せた造語だが、国内外で色々な動きが起こっており、ここ数年で確実に広まっている。その典型的な動きがMOOCである。大規模オンライン教育といわれるMOOCは、本誌でも連載している通り、米国を中心に拡大しており、さらに日本でもJMOOCが発足し、もう間もなく日本語での授業配信が始まる。

 その背景には、ICT技術の進歩、通信インフラの整備、デバイスの多様化などが急速に進んだことが挙げられる。固定されたパソコンで、重い動画を見ていた数年前とは、環境が一変した。「いつでも」「どこでも」「隙間時間」「繰り返し」「低価格」で学習できる環境が整っているのである。すでに、高校1年生のスマートフォン所持率は約8割に達しており(2013年総務省調べ)、この傾向は社会人から大学生へ、そして高校生へと、ますます拡大することは間違いない。リクルートホールディングでは、スマートフォンを使って学習することを『スマ勉』と名付け、今年のトレンドとして発表した。

 “EdTech“の浸透は、学習の仕方・教育の仕方が大きく変化する可能性を秘めている。例えば、オンライン教育と対面授業を組み合わせたブレンド型学習(blended learning)が徐々に広がり始めている。特にブレンド型学習の一形態である反転授業(flipped classroom)に取り組む大学や高校が出始め、話題となっている。反転授業は、従来教室で行っていた知識のインプットをオンライン教材で事前学習し、教室ではグループ学習やディスカッションを中心に応用課題に取り組むという、これまでの授業とは反転した形になるのが特徴である。

 今回は、MOOCに日本でいち早く参加を表明した東京大学、京都大学の取り組みを担う先生方にその狙いをうかがうとともに、今後“EdTech“が与えるマーケット変化の可能性についても触れて頂いた。事例では、反転授業に取り組む大学の事例とともに、すでにもう一段階若い世代で取り組んでいる高校の事例もご紹介する。また、インターネット大学のパイオニアであるBBT大学の大前研一学長にも、これまでの成果と課題、今後の方向性についてうかがった。

 既に大きくICTを使った教育の変化は着実に拡大しており、この動向はもう戻ることはないと思われる。だとしたら、恐れず、できるところから取り組みを始めてみてはどうだろうか。もう1~2年後には、『スマ勉』で受験勉強し、高校で反転授業を経験した学生が、大学に入学してくることは間違いないのだから。