【専門職】ビジネスの現場と大学との往復により学生の実践的なスキルが向上/開志専門職大学

開志専門職大学キャンパス

POINT
  • 新潟県内を中心に34の専門学校、4つの大学、1つの大学院大学を擁するNSGグループが運営する学校法人新潟総合学院により、2020年4月に新潟県に開学した専門職大学
  • 2020年4月設置の事業創造学部、情報学部、2021年4月設置のアニメ・マンガ学部の3学部で構成(各定員80名)
  • 2024年3月に卒業した事業創造学部と情報学部の1期生106名の進路の内訳は、就職101名、進学2名、起業1名、個人事業主・フリーランス2名。臨地実務実習と大学を往復する学びのサイクルに手応え

 「専門職大学の総合大学を作る」という方針のもと、2024年4月現在で認可されている専門職大学のなかで唯一、複数の学部を擁する開志専門職大学。2024年3月には、事業創造学部と情報学部の1期生が卒業を迎えた。同大学の4年間の成果について、北畑隆生学長に伺った。

開志専門職大学 学長 北畑隆生氏

学生が主体的に進路を選択

 開志専門職大学は、変化し続ける産業界に実践的な人材を送り出すことを基本とし、成長分野に資する3つの学部を設置している。そのうち、事業創造学部は、既存の経営・商学部とは異なるアントレプレナー養成に焦点を当て、ベンチャー起業や企業内起業を目指す人材や、地元新潟の事業承継者等の育成を、情報学部は、高度ICTに特化した人材の育成を行っている。

 両学部合計106名の1期生の進路は、就職101名、進学2名(国内大学院など)、起業1名、個人事業主・フリーランス2名に分かれる。就職希望者における就職率は100%で、就職先は東証プライム市場上場企業から地元新潟の有力企業まで多岐にわたる。

<就職101名の就職先内訳>
  • 東証プライム市場上場企業:13社17名
  • 東証スタンダード・グロース市場上場企業:5社7名
  • 非上場有名企業:13社14名
  • 地元(新潟)有力企業:17社21名
  • 新興企業・その他:35社42名

 この結果について北畑氏は「就職を希望する全員が内定を得られたうえ、実績のある企業はもちろん、地元新潟の経済振興に寄与するという本学の目的に添う、地元有力企業への就職も21名が決めました。また、進学も人数は少ないながらも実績が出て、さらに、事業創造学部の狙いの一つである起業を実現した学生もいます。非常に良い結果で、1期生と教職員の頑張りを自慢したい」と胸を張る。

 加えて、北畑氏が評価するのが、企業規模等にとらわれない、学生の主体的な企業選択だ。「1人あたりの内定社数が平均1.6社(2024年2月時点)で、たまたま受かった会社に行くというのではなく、自らが志望した企業を選べています。なかには、『地元に貢献したい』『経営者の考えに共感した』等の理由で、複数の内定先から最大手ではない企業を選ぶ学生もいました。われわれからすると大手・有名企業に行ってもらったほうが実績になりますが、学生は、考えを持って主体的な選び方をしている。学生にとっても満足できる結果になっているのではないかと思います」。

臨地実務実習と大学での学びの往復が学生を成長させた

 学生の成長と、企業と学生の相互理解に「非常に効果があった」と北畑氏が評するのが、臨地実務実習だ。事業創造学部では1年次から3年次に、情報学部では2年次と3年次に合計600時間、企業内実習を行う。「挨拶や時間厳守といったビジネスマナーはもちろん、仕事に対する責任感や、自身の考えを整理して簡潔に伝えること、プレゼンテーション等、働くうえでの基礎的な力を鍛えられた。これらが企業の方々に評価されたと思います」と北畑氏は話す。

 受け入れ企業からも「最初はいろいろあったけれど、しっかりやってくれた。卒業したらぜひうちで採用したい」等の声をもらったそうで、実際に受け入れ企業に就職活動を行い、内定した学生は2割を超えるという。

 臨地実務実習の意義について、北畑氏は「現場と大学を往復することによってスキルが上がっていく」と表現する。「学生の報告を聞いていると、ビジネスの現場を経験することで、『仕事とは何か?』『自分はどんなことに向いているか?』等について自覚し、それが大学での科目に取り組むモチベーションになっています。また、プログラミング等大学で培ったスキルを現場で実践してうまくいけば自信になるし、うまくいかなければまた大学で真剣に勉強する。このように、勉学に取り組む自覚が醸成され、職業とは何かということを早い段階で経験できることが専門職大学の強み」と続ける。

 大学に戻れば、1クラス40人という教員に気軽に質問できる距離感や、教員の約半数を占める実務家教員から経済・産業の最新の情報や理論を学べる環境を大学が整えている。これらも、学生の学びと能力・スキルの向上に寄与しているという。

独自の制度で起業する学生を支援

 事業創造学部は、起業家の育成も目的の一つとしている。1期生のなかには、大学に残り事業に注力している学生もいるという。そういった学生が利用しているのが、大学が独自に設けた「創業に伴う休学制度」だ。休学期間中、授業料や実習費が全額免除、施設・設備費が半額免除されたうえで、図書館や学内に設けた自社の事務所を使用したり、指導教官の指導を受けたりすることができる。2024年1月現在、2期生以下も含めて4名が利用している。

 「大学で学ぶうちに学業の優先度を下げて起業に注力したいと考える学生もいます。その意欲は後押ししたいけれども、起業後、国際的に活躍したいとなったときには学士号は必須。中退するのではなくいずれは学士を取ってほしいという考えで設けた制度です」と北畑氏は話す。



 起業する学生の数について、「できるだけ起業に挑戦するよう指導しているし、まだまだ伸びていくと思う」と期待を寄せつつ、「とはいえ、リスクもあるので、一旦就職して、できれば新規事業開発を担当して10年ほど経験を積んでから独立する方法もあることも助言している」と話す。

 こうした状況をふまえて、2024年度からは、事業創造学部を「起業家コース」と「経営デザインコース」の2コース制に変更。起業家コースは、文字通りアントレプレナーを育てるコース、経営デザインコースは、既存企業を経て独立する、あるいは、企業内で新規事業創出を担う人材を育てるコースだ。北畑氏は、「『起業』の幅をもう少し広く考え、大学発ベンチャーだけでなく、いずれ起業する学生や、将来、家業を継いで経営者になることを想定している学生等もしっかりと育てていけるよう方針を修正した」と説明する。

常にカリキュラムを見直し、産業界に必要な人材を送り出していく

 「変化していく産業界に実践的な人材を送り出すべく常にカリキュラムを見直していく」と話す北畑氏。今後も、4年間の成果と反省をふまえて様々な改善を行っていくという。

 その一部として挙げられるのが、事業創造学部、情報学部で2024年度から導入された新カリキュラムだ。例えば、事業創造学部では、地元だけでなく世界を見据えて活躍する人材を増やしたいという考えから、「現代産業論」「現代企業論」の両科目をほぼ毎時間、外部講師による講義に変更。産業別ないし財務、人事、広報といった企業の機能別にその分野で働く企業人を招聘し、最新の情報を伝えていく。

 また、情報学部においては、情報通信業以外にも人材を輩出できるよう、臨地実務実習先をより幅広い業種に広げていくという。「1期生は就職先が情報通信業に集中しましたが、今や、情報技術者が必要としている産業は多岐にわたります。まずは金融業に臨地実務実習に出せればいいなと思っています」と北畑氏。

 加えて力を入れていくのが、学びの場における3学部の交流だ。各学部の科目を他学部にも開放し、授業の場で3学部の学生が議論できる環境を作っていく。「3学部が連携してシナジーを生み出すという、総合大学の良さをこれから充実させていきたい」と北畑氏。「例えば、アニメ・マンガ学部の学生が卒業後、クリエイターとして組織を大きくするために会社を設立するとなれば、事業創造学部で会社設立実習を受けた同級生に手伝ってもらったり、情報学部の同級生とデジタルでの制作環境を整えたりする。そういった連携が実現するのが夢」と先を見据えている。


(文/浅田夕香)