【TOP INTERVIEW】サロンで役立つ最新の教育で、 免許取得の先にあるスタイリスト養成を目指す/中日美容専門学校 校長 小山育久氏

中日美容専門学校 校長 小山育久(こやま いくひさ)
1966年生まれ
1991年 中日美容専門学校 入社
2004年 学校法人中日学園 理事
2006年 愛知県専修学校各種学校連合会理事
2007年 東海地区理容美容学校協議会代表幹事
2020年 東海地区理容美容学校協議会監査
愛知県専修学校各種学校連合会副会長
2024年 学校法人中日学園理事長 中日美容専門学校校長
美容業界一筋に70年の実績
中日美容専門学校は名古屋市に所在し、美容、トータルビューティーの2学科、通信科、学生数約1500名を擁する美容専門学校です。1957年の設立から約70年弱にわたり、美容師をはじめとする美容業界の専門家を養成してきました。
現在の学科構成には、2年制の衛生専門課程である美容科(9コース)とトータルビューティー科(3コース)があります。美容科は美容師免許(国家資格)を取得する学科で、その先にある知識と実践による総合力を備えたスタイリストの養成を目指しています。トータルビューティー科は美容師免許を必要としない美の職業であるエステティシャン、ネイリスト、美容部員を養成する学科です。
このほか3年制の美容師免許取得を目指す通信科(2コース)があり、1学年の定員は美容科640名、トータルビューティー科60名、通信科160名となっています。
一日でも早くスタイリストに育てる教育
本校の教育の特色は、卒業時に学生が一番幸せになる形を作ってあげるために、日本で一番学生ファーストの学校を目指している点です。
美容学校の一番大事な役割は、一日でも早くスタイリストとして一人前になるために、知識と技術を学生に身につけてもらうことです。そのための美容師免許を取得することは、あくまでも通過点であって、卒業時に一番良いスタートラインにつけるようなカリキュラムを提示することが、学生ファーストになるというのが私達のコンセプトです。
私の中には「美容師の世界は三重苦」という課題意識があります。三重苦とは、①1日8時間の立ち仕事、②スタイリストになるまで毎日続く営業後の練習、③練習に費やした時間に見合わない給与の低さです。美容業界の離職率の高さもこの三重苦にあり、特に3年以内の離職率が高いのは②と③が要因です。サロンの試験をパスしてスタイリストになるまでには通常3年程度かかり、給与体系は歩合制が多いのでスタイリストとして指名されなければ上がりにくい傾向にあります。
だからこそ、一日でも早くスタイリストになれることに価値があるのです。私は美容学校の責任として、資格取得だけを目標にしてきたことがこのような状況を作ってしまったと思っています。三重苦を改善する教育を構築することは専門学校の役目であり、将来人口減で美容業界に入る人数も減ることが予想される中、離職率を下げることは美容業界のためでもあります。
「5:5」の教育で楽しく努力させる
そこでまずは、前述②に当たる営業後の練習をなくそうとしました。仮に1日2時間練習するとして、3日分の6時間は美容学校の1日の授業時間に相当します。3分の1に期間を短縮できるなら、3年分の練習を美容学校在学中の1年で教えようと思ったのです。
本校では2年間のうち1年で国家試験、もう1年でサロンワークを教える、「5:5」の教育カリキュラムを構築しました。さらに「トータルスタディー授業」では、サロンでの実務経験を持つ教員からお客さまのオーダーに対応できる実践力を学べるため、他校より2歩も3歩も早いスタートを切ることができます。
美容学校の場合、今を生きていることへの答えを教育に反映できているかが非常に大きいと思っています。移り変わりの激しい美容業界では、時代に敏感な18歳の今に一番合った教育をしなければ、学生は絶対に集まらないと思います。
では2025年の教育スタイルは何かと問うと、今時の子は「楽しい」がテーマなので、スタイリストになるという自分のためになる目標を持たせ、楽しく努力をさせます。楽しさをどう与えるかですが、1つできると次にステップアップしてどんどん気持ちが出てくる「できるようになる楽しさ」を与え、毎日来たくなる授業を目指しています。
学生ファーストの教育で入学生数は右肩上がりに
こうした学生ファーストの教育を続けることで、入学生がどんどん増えていきました。160名から始めた美容科の定員は現在640名と全国でも最大規模になり、コロナ禍を含め大変な時期だったこの数年も本校はずっと右肩上がりです。美容師国家試験合格者数(昼新卒)も、2023年3月卒業生で全国1位(2023年3月31日厚生労働省発表)となっています。
在学生がオープンキャンパスやSNSで、楽しい教育だと発信してくれることも大きな貢献となっています。本校のオープンキャンパスでは約2400 名の来場者に対し、「ビューティーサロン風体験DAY」や「学校説明相談DAY」等のイベントを行っていますが、在学生が自主的に手伝ってくれて、イベントの9割が学生主導で行われています。高校生に楽しさを知ってもらうには学生自身が楽しくないとダメなので、学校が提供する普段の教育こそが大事なのだと思います。学生が満足してくれることで、頼まなくても自分からSNSで発信してくれます。
「中日メソッド」で全国から来たいと思われる美容学校に
人口減に伴い、愛知県の美容師国家試験受験者数は1600~1800名になると推測しています。我々が現在の定員640名を確保するには、まず地域で選ばれる一番校であり続けること、次に全国から来たいと思われる美容学校になることです。現在は東海地区と周辺地域からの学生が中心ですが、学生のSNSを見て遠方から応募してくる学生も増えています。
ですから教育が一番なのです。本校の募集戦略は、時代に合った教育の中身で答えを出し、教育投資で学生満足度を高めることに尽きます。「中日メソッド」と言えるかもしれません。教職員に対しても、10年後、20年後の美容業界で生き残るためには、時代の先を見据えた教育をきちんとしていくことが重要なのだと、常にメッセージを送っています。
(文/能地泰代 撮影/黒川真衣)
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