新世紀のキャンパス さつき/麗澤大学
本学は、2025年に創立90周年を迎えることを機に、2024年4月に初めての理系学部として、工学部を開設した。その先端研究・教育の拠点となるのが校舎「さつき」である。
ラーニングホールは開放的なオープンスペースとして、デザイン思考等のグループワークやロボット等の実験・デモで常に賑わっている。イベントも頻繁に開催され学部を超えた交流の場となっている。デザイン思考を活かして世界と地域の課題解決に貢献する「品格あるグローカル人材」の育成を目指している。
消費エネルギーの低減、SDGsを踏まえた環境配慮型の建物は、地上4階建ての造り。1・2階を講義室や演習室、大型実験室、3・4階を研究室・教員室で構成している。特に目玉となる空間が、「iStudio」だ。教員やメンターが常駐し、1対1で数学や統計、物理、プログラミングの理解や習得をサポートするスペースで、全学部の学生が理数系科目を安心して学ぶことができる。校舎は、建物や研究室内外の活動が相互に伝わるリビングラボを採択し、自然な共創が実現する学修環境を提供する。外構はバイオスウェルやレインガーデンにより持続可能性と生物多様性の向上を図り、環境共生型キャンパスを実現した。
エンジニアが売るのは、単なる技術ではなく、「解決策」である。「自分の専門技術を売り込むこと」を越えて、チームを作り解決策を提供する。これが工学を足がかりにして社会に貢献するエンジニアの「外さない」アプローチである。この考え方に基づいて、応用範囲の広いデジタル技術(情報技術とロボティクス)をしっかり教えながら、「デザイン思考」を用いてチームによる課題解決の方法を体感させる教育を実施している。さらに、デジタルツールを駆使してチームの力を最大限発揮する訓練も、様々な演習やグループワーク講義に埋め込まれている。卒業後の50年間、社会に「善き解決策」を提供することを楽しみながら、エンジニアとして、あるいは社会課題解決家として、生きがいを追求できる骨太教育を「知徳一体」(本学の教育理念)の下に行う。
新入生は最初の数週間で、「これが大学で学ぶということなんですね!」と言う。科目を取って、授業に出て教科書を理解するといった高校までの受け身な勉強の延長線上に大学での勉強を捉えるのではなく、分らないことはまず自分で調べ勉強する、さらに教員や先輩チューターに聞くことで理解を深める、広げる、そして目標達成のためにはそもそも何を知るべきか、勉強すべきかを探索する。そしてまず実践してみる。こうしたやり方に、入学してから短期間で気づいてもらえていることはとても幸せである。入学後数週間で、オープンキャンパスの来訪者にロボットのデモを自らデザイン、実施できる学生もおり、教員も手応えを感じている。
半径200m以内に外国語学部、国際学部、経済学部、経営学部、工学部が並び、1学年700名程度の学生が、教員と常に密に接する環境にあることが、本学キャンパスの特徴である。課題解決のためには、技術以外に、異なる人々の考え方や文化の違いを理解し、円滑なコミュニケーションを通じて信頼を勝ち得、共通の目標設定に向けて合意を形成することが不可欠である。また解決策を実施するためのファイナンス、継続的な活動を可能とする経営体制や方法の構築も必要である。学部を横断した教育を進め、異なる専門・背景を持つ様々な人達と効果的に連携することの重要性を体験する。この経験は学生のみならず、教員にとっても重要である。なお、周辺には課題解決型の総合大学は少なく、自治体や企業、市民等が抱える地域課題解決にも貢献する連携プロジェクトを計画している。
(文/麗澤大学 教授 副学長 柴崎亮介)
地上4階建て。消費エネルギーの低減、SDGsを踏まえた環境配慮型の建物。
新たな大学の扉となる北口門。持続可能性と生物多様性の向上を図る環境共生型キャンパスが実現。
2フロア分の高さを持つオープンスペース。勉強や交流場所に最適な空間。
200名を収容できる大講義室。明るく開放感あふれる講義室は、座学の授業やセミナー等に使用。
教員やメンターが常駐し、数学や統計、物理、プログラミングを
マンツーマンで教えるコミュニティースペース。
大型実験室(iArena)は制作したロボットの動作実験や競技会に向けた練習等、多目的に使用。
ソフトウェア・プログラミング演習を行うTechnology Sandbox。
ロボット設計・制作実習等を行うFabrication Lab。
1分野の研究に留まらず分野横断の交流ができるよう、共用空間を配置。
毎日の勉強や研究のためのスペースが完備。
【印刷用記事】
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