データで見る 高校生の今[8]分野別データに見る専門学校の変化と大学への期待


【図1】専門学校の分野別入学者5年間の推移


実践か学際か、岐路に立つ専門教育

 第8回「データで見る高校生の今」では、『令和5年度学校基本調査』の結果から、専門学校の分野別の入学者推移について紹介する。

実践スキルへの関心の高まり

 図1は令和元年から令和5年にかけての専門学校の分野別の入学者増減をランキングにしたものである。入学者が増加した分野を見ると、「美容」や「動物」「歯科衛生」等、専門的で実践的なスキルを学べる分野が人気だ。特に「美容」は1828人増と大幅に伸びており、即戦力としてのスキルに加え、SNSといった自己表現の場の拡大もこの関心を後押ししていると考えらえる。また、近年大学の分野においても人気を集めている「芸術」(デザイン)は、専門学校においても注目を集めているようだ。

大学へのシフトの可能性

 一方、入学者が減少した分野では、「看護」「外国語」「旅行」等、これまで専門学校が主流だった分野が大きく落ち込んでいる。

 「看護」は4685人減(約15%減)と最大の減少幅で、コロナ禍を経て厳しい医療現場の状況や業界のイメージが影響している可能性が考えられる。一方、大学の看護学部や医療系学部では多様なカリキュラムが展開されており、より幅広いキャリアが選択できる点が魅力となっていると考えられる。

 同様に、「外国語」や「旅行」もそれぞれ4446人減、4380人減と大幅な減少を記録した。コロナ禍や円安の影響で海外交流機会や旅行業界が停滞したことが一因と推測されるが、これらの分野においても大学が提供する学際的な教育が注目を集めている。特に国際関係や観光ビジネス等の分野では、他領域を横断的に学べる広がりのある学びが提供されており、大学進学への動機づけにつながっている可能性もある。

 「就職への強い期待」は専門学校だけでなく、大学でも高まっている。大学は専門学校と比較して「将来の選択肢の広がり」といったメリットを訴求することが重要だ。専門学校から大学へ入学者が移行したと考えられる分野の動向を見ると、専門学校が強みとしてきた実践的な教育だけでなく、学際的な広がりや職業の高度化に向けた4年制課程の構築が重要となってくるだろう。また、高校生や保護者に向けた大学の魅力発信においては、専門学校にはない価値を明確に伝えることで、進学先としての競争力を高める必要があるだろう。



(文/岡田 恵理子)


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