高校生の進路選択に関する調査(進学センサス)分析
納得度を高める進路選択とは何か
―志望順位だけでは説明できない、選択の質
リクルート進学総研 研究員
岡田恵理子
- リクルート進学総研の調査「進学センサス2025」の結果から、進路選択の質を合否や偏差値の結果だけでなく、本人の「納得度」という指標で多角的に分析した。
- 検討分野と進学分野の一貫性、学生生活への期待、多様な情報への接触という3要素が納得度向上に寄与する。
- 進学の成否は「どこに進むか」ではなく「どのような検討を経て選択したか」という質で決まる。
はじめに
大学進学をめぐる議論では、「第一志望に進学できたか」「どの大学に合格したか」といった結果が重視されてきた。進学先の偏差値やブランド力は、進路選択の成否を測る分かりやすい指標として扱われてきたと言える。
しかし、同じ大学に進学しても、その受け止め方は人によって異なる。進学後に「この選択で良かった」と感じる人がいる一方で、そう感じられない人もいる。結果としては同じ進学であっても、そこに至るまでの検討の仕方や、進学先の捉え方によって、進路選択の意味は大きく異なっている可能性がある。
近年、大学進学を取り巻く環境は変化している。情報環境の拡大により、受験生は以前よりも多くの進学に関する選択肢や知識 に触れられるようになった。その一方で、選択肢が増えた分、「なぜその進学先を選んだのか」を自分の中で整理することは、必ずしも容易ではなくなっている。
こうした状況の中で、本稿では「進路選択への納得度」という視点に注目する。進学センサス2025では、高校生活を終えた時点で、自身の進路選択についてどの程度納得しているかを尋ねている。ここでいう納得度は、進学先そのものの良し悪しを評価するものではなく、自らの選択をどのように受け止めているかを示す指標である。
納得度という切り口からデータを読み解くことで、進学の「結果」だけでは捉えきれない、進路選択の質について整理していく。
進学センサス2025 調査概要
- ■調査目的
- 高校生の進路選択プロセス(行動・意識)の現状を把握する
- ■調査期間
- 2025年3月1日~4月1日・インターネット回答締め切り
- ■調査方法
- インターネット調査 ※アンケート依頼を郵送、記載のURL からインターネット回答
- ■調査対象
- 調査開始時点で2025年に高校を卒業見込みの全国の男女22万9999人
令和6年度学校基本調査の「全日制・本科3年生生徒数(県別)」、「中等教育学校・後期課程3年(県別)」を基に、リクルートが保有するリスト(※)より調査対象とする数を抽出
(※)リクルートが保有するリストとは、リクルートが運営する『スタディサプリ』会員リスト
- ■有効回答数
- 3万9066人(回答率17.0%)うち、本プレスリリースでは大学進学者2万7362人が対象
※注意:各年の調査はそれぞれ調査方法が異なるため、厳密には時系列比較できない。
1.志望順位と納得度の間にあるギャップ
まず確認したいのは、進路選択への納得度と志望順位との関係である。
進学センサス2025 において以下のように進路選択への納得度を尋ねている。

その結果に対して「とてもそう思う」「そう思う」と回答した層(納得度が高い層)ほど、志望順位の高い学校に進学している傾向が明確に見られる(図表1)。
◆図表1:大学の志望順位と納得度の関係
Q:入学する予定の大学の志望順位をお答えください。(単一回答)

納得度について「とてもそう思う」と回答した高校生のうち、第1志望に進学した割合は84.2%に達している。一方で、納得度が「どちらともいえない」層では35.9%、「そう思わない・計」では17.3%にとどまっており、納得度の高低によって志望順位の分布に大きな差がある。
この結果は、多くの人が想像する通りのものだろう。第1志望に進学できたかどうかは、受験を終えた時点での納得度に強く影響する要因であることは間違いない。志望順位は、進路選択を振り返る際の分かりやすい基準として機能している。
ただし、ここで留意すべき点もある。志望順位が高くても、納得度が必ずしも高くない高校生が一定数存在していることである。実際に、「どちらともいえない」「そう思わない・計」と回答した層の中にも、第1志望や第2志望で進学した高校生が少なからず含まれている。
このギャップはどこから生まれるのだろうか。一つの可能性として、志望順位自体が受験戦略の中で形成されたものであり、本来の関心や適性とは別の要因で決まっていた場合が考えられる。例えば、合格可能性や周囲の期待によって志望順位が設定され、結果として第1志望に進学したとしても、それが自分にとって本当に望ましい選択だったかどうかは別の問題である。
このことは、志望順位と納得度には関連があるものの、その関係だけで納得度の違いを説明しきることはできないことを示している。同じ志望順位で進学していても、納得度には幅があり、その差を生み出している要因は別に存在すると考えられる。
本稿ではこの点を出発点として、志望順位という前提を踏まえたうえで、納得度の高低を分けている要素をより詳しく見ていく。
2.進路選択の一貫性と納得度の関連
では、同じような条件で進学していても、なぜ納得度に差が生まれるのだろうか。その手がかりとして、ここでは進学前の検討状況に注目する。
進学センサス2025では、進学前に検討していた学問分野と、実際に進学した分野を聴取している(図表2)。全体的な傾向として、検討していた分野と進学した分野が一致している場合、納得度が高くなる傾向が見られることが分かる。この2つの一致度を見ると、納得度の高い層ほど、「検討していた分野」と「進学した分野」が一致している割合が高い。一方、納得度の低い層では、この一致度が相対的に低い分野が目立つ。
◆図表2:「検討していた分野と進学した分野」の一致度と納得度の関係
検討分野と進学先分野が一致する割合

ただし、この関連の強さは分野によって異なる。「教育・福祉」「家政・生活」「看護・保健・衛生」といった分野では、検討していた分野と進学した分野が一致している割合が高い層ほど、納得度も高い傾向が見えやすい。これらの分野では、進学前の段階から学びの内容や将来の方向性を比較的具体的にイメージしやすく、その検討が進学結果につながりやすい傾向がうかがえる。
一方で、「法律・政治」「経済・経営・商学」といった分野では、検討していた分野と進学した分野の一致度そのものは一定水準にあるものの、納得度による差は相対的に小さい。
また、進学先について満足している点を尋ねた質問を見ると、納得度の高い層では「自分の興味や得意分野に合っている」と回答する割合が最も高い(図表3)。この結果は、検討段階での関心と進学結果がどの程度自分の中でつながっているかが、進学後の受け止め方と関係していることを示唆している。
◆図表3:進路選択について満足している点と納得度の関係
Q:進路選択についてお聞きします。
進路選択を振り返り、当てはまるものを全てお選びください。(複数回答)

検討していた分野と進学した分野が一致している場合、進学は偶然の結果ではなく、自らの関心や価値観に基づいた検討 の積み重ねとして受け止めやすい。こうした感覚が、進学後の納得度の高さにつながっている可能性がある。
この結果は、進路選択における一貫性の重要性を示唆している。ここで言う一貫性とは、内的要因(関心や価値観) に沿った選択が、進学先の選択まで大きくぶれずに保たれている状態を指す。検討分野と進学分野が一致しているということは、受験というプロセスの中で、外的な要因(偏差値、周囲の期待、合否の結果等)によって当初の関心から大きくずれることなく、自分の軸を保ちながら選択できたことを意味する。
ただし、本データは相関関係を示すものであり、因果の方向性については特定できない。検討分野と進学分野が一致したことで納得度が高まったのか、あるいは納得度の高い学生が事後的に一貫性を認識しやすいのかは、今後さらなる検証が必要である。
3.学生生活重視か、将来の地位・成功重視か
検討分野と進学分野に一貫性が見られる人たちは、進学先をどのような観点から選んでいたのだろうか。ここでは、進学検討時に重視していた点に注目する。
納得度の高い層では、「学びたい学部・学科・コースがあること」「校風や雰囲気が良いこと」「自分の興味や可能性が広げられること」といった項目を重視する割合が高い(図表4)。これらはいずれも、進学後の学生生活そのものに対する期待を表す項目である。
一方、納得度の低い層では、「有名であること」等、大学の外形的な評価を重視する割合が相対的に高い。進学先を選ぶ際の基準が、学びや生活の具体像よりも、属性的な情報に寄っている可能性がある。
進学や将来に対する意識を尋ねた結果からも、こうした違いが見て取れる(図表5)。納得度の高い層では、「学生生活を充実させたい」「学びそのものを楽しみたい」といった意識が高い。一方で、納得度の低い層では、「将来成功したい」「社会的に高い地位を得たい」といった意識が相対的に高く、進学を将来の地位や成功につなげる手段として捉える 傾向が見られる。
将来への意欲が低いわけではないが、進学後の生活をどのように過ごしたいかという視点の持ち方に違いがあることが、納得度の差として表れている可能性がある。
◆図表4:進学先検討時の重視項目と納得度の関係
Q:志望校を考えるときに、あなたが重視したのはどのようなことですか。(複数回答)
※クリックで画像拡大
この違いは、進学を「学びそのものへの関心」から捉えているか、それとも「将来の地位や成功を得るための手段」として捉えているかの違いとも言い換えられる。図表3で見たように、進学先を「自分の興味や得意分野に合っている」と捉えている層ほど、進路選択への納得度が高い傾向が見られる。こうした結果は、選択の動機が自分自身の関心に根ざしているかどうかが、選択後の受け止め方に影響している可能性を示唆している。
ただし、将来の成功や社会的地位への意識 が必ずしも否定されるべきものではない。重要なのは、そうした将来への目標と、進学後の学生生活そのもの(学びや経験)への関心とのバランスである。両方の視点を持ちながら進学先を選ぶことが、より納得度の高い選択につながると考えられる。
◆図表5:進路選択・将来に関する価値意識と満足度の関係
Q:進学や将来に関する以下の考え方に、あなたはどの程度あてはまりますか。
それぞれについて、あてはまるものをひとつだけお選びください。

4.多様な情報への接触と納得度
学生生活への期待は、どのような情報に触れることで形づくられているのだろうか。ここでは、進路選択時の情報収集のあり方に注目する。
納得度の高い層では、大学公式サイトや学校案内、オープンキャンパス等、大学が発信する情報に触れている割合が高い(図表6)。特にオープンキャンパスは、学びの内容や学生生活の雰囲気を具体的に体感できる機会であり、進学後の姿を想像するうえで重要な役割を果たしている。
◆図表6:進学関連情報の入手経路と納得度の関係
Q:あなたは進学に関する情報を主にどのようなものから得ていましたか。(複数回答)
※クリックで画像拡大
オープンキャンパスの参加率を納得度別に見ると、納得度の高い層ほど参加している割合が高いことが確認できる(図表7)。
◆図表7:学校主催イベントへの参加と納得度の関係
Q:参加したことのある学校主催のイベントの開催形式について教えてください。(単一回答)

ここで重要なのは、それぞれの情報には異なる役割があるということである。偏差値ランキングや口コミサイトといった情報は、多くの大学を効率的に比較するのに役立つ。一方、大学公式サイトやオープンキャンパスといった大学が発信する情報は、学びの内容やカリキュラムの特徴、キャンパスの雰囲気等、それぞれの大学の特徴や自分との相性を具体的にイメージするのに役立つ。
特にオープンキャンパスでは、施設を見学したり、授業を体験したり、在学生や教員と直接話をしたりすることで、「この大学でまなぶ自分」を実感しやすくなる。こうした一次情報に触れることが、進学後の生活像を描く助けとなり、結果として納得度の高さにつながっている可能性がある。
進路選択においては、これらの異なる性質を持つ情報を組み合わせて活用することが重要である。比較のための情報と、具体的なイメージを持つために情報の両方に触れることで、より納得度の高い選択ができると考えられる。
5.納得度の高い進路選択のための高校・大学への示唆
以上の分析を踏まえ、最後に高校と大学それぞれへの示唆を整理する。
高校の進路指導において重要なのは、合格可能性だけでなく、生徒が自分なりに進路を考え、納得して選択できる環境を整えることである。具体的には、以下の3点が挙げられる。
第1に、早期からの学問分野との接点の提供である。検討分野と進学分野の一致が納得度と関係していることを踏まえると、早期から多様な学問分野に触れる機会を設けることは、生徒自身が関心を整理するうえで有効である。
第2に、学生生活そのものへの具体的な期待醸成である。納得度の高い層ほど、進学後の学び舎生活を具体的にイメージしながら進路を選択している傾向がある。志望校を考える際に、学部・学科の学びや校風など進学後の生活像を描く視点を持てる用、進路指導の中で意識的に働きかけることが求められる。
第3に、多様な情報、特に大学発信情報へのアクセス支援である。すでに多くの学校で実施されている点ではあるが、やはりオープンキャンパスへの参加促進や、大学公式情報の読み取り方を伝えることは、進学後の姿を具体的に考える手がかりとなる。比較のための情報と具体的なイメージを持つための情報を組み合わせて活用できるよう、情報リテラシーの観点からも支援が望まれる。
大学にとっては、「選ばれる」ことに加えて、「納得して選ばれる」ことが重要になる。具体的には、以下の3点が求められる。
第1に、入試広報における情報発信の見直しである。偏差値や就職実績といった外形的な情報だけでなく、学びの内容、カリキュラムの特徴、学生生活の実態等、進学後の4年間を具体的に想像できる情報を充実させることが重要である。
第2に、オープンキャンパスの質的向上である。単なる施設紹介にとどまらず、模擬授業、在学生との対話、研究室訪問等、大学での学びを体感できるプログラムの充実が求められる。
第3に、入学前教育の設計である。合格後から入学までの期間に、入学予定者に対して学びの準備や期待形成を支援するコミュニケーションを行うことで、入学時点での納得度をさらに高めることができる。
オープンキャンパスや大学広報は、施設紹介にとどまらず、学びや学生の姿を伝える機会として設計することが重要である。受験生が自分なりの判断軸を持てるような情報提供が、納得度の高い進路選択につながる。
おわりに
進学センサス2025を納得度という視点で読み解くと、進路選択の質は、志望順位という結果だけでなく、進学前の検討のあり方によって左右されていることが浮かび上がる。
納得度の高い進学に共通しているのは、検討分野と進学分野に一貫性があり、進学後の学生生活を具体的に思い描きながら進路選択が行われている点である。
本稿で明らかになったのは、納得度の高い進路選択には3つの要素が関わっているという点である。第1に、検討分野と進学分野の一貫性。第2に、学生生活そのものへの具体的な期待。第3に、一次情報への接触である。
これらの要素は相互に関連している。早期からの学問分野分との接点が具体的な期待を生み、一次情報への接触がその期待をより明確なものにし、結果として一貫した進路選択につながるという連鎖がある。逆に言えば、どれか一つの要素が欠けても、納得度の高い進路選択は実現しにくい。
進学の質は、「どこに進学したか」ではなく、「どのような検討を経て、その進学先を選んだか」によって形づくられる。受験生が納得して進路を選択できるよう、高校・大学が果たす役割は今後さらに重要になるだろう。
