年内入試拡大の実態を把握する─文部科学省データ・リクルート進学センサス2025より

リクルート進学総研 研究員
鹿島 梓


進学センサス2025 調査概要
■調査期間
2025年3月1日~4月1日インターネット回答締め切り
■調査方法
インターネット調査
※アンケート依頼を郵送、記載のURL からインターネット回答
■調査対象
調査開始時点で2025年に高校を卒業見込みの全国の男女22万9999人
令和6年度学校基本調査の「全日制・本科3年生生徒数(県別)」、「中等教育学校・後期課程3年生(県別)」を基に、リクルートが保有するリスト(『スタディサプリ』会員リスト)より調査対象とする数を抽出
■有効回答数
3万9066人(回答率17.0%)

【01】年内入試拡大と高校生に与える影響


総合型選抜経由入学者は8年間で4万人もの量的拡大

 まず、図表1で年内入試の数的規模を確認しておきたい。文部科学省データより、2016年と2024年で各入試区分を設定する大学数・学部数・経由しての入学者数を比較した。図表上部の総合型選抜は国公私立ともに拡大し、特に私立で約100校増加。総合型選抜を経た入学者数は5万4015人から9万8520人と約4万人増加した。しかし市場規模は学校推薦型選抜の未だ半数程度である。一方で学校推薦型選抜は国立で2校減少、公立と私立では増加したが、入学者数は21万1363人から21万4549名で約3000人の増加と、市場規模は大きく変化していない。なお、この期間18歳人口は119万人から106.3万人と約11%減少している期間であることにも留意が必要であろう。


図表1 年内入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)の拡大状況(2016・2024)


総合型選抜拡大の経緯における2つのポイント

 総合型選抜の動向を、前身であるAO入試の経緯から理解するには2つのポイントがある。AO入試は1990年に慶應義塾大学SFCが導入したことをきっかけに広がったとされる入試で、2000年代初頭に私立大学を中心に拡大した。この際、本来の「アドミッション・ポリシーに即して学力以外の要素を含めて選抜を行う」という性格が、「学力不問」と解釈され、基礎学力を問わず面接中心で選抜するというスタイルがほぼ確立。この時期AO入試が拡大したのは、募集における早期囲い込みの観点が強かった(図表2 ①)。

 もう1つは、2015年国立大学協会が「推薦・AO入試等による入学者を2021年までに入学定員の3割を目標に拡大」と表明したことである。これにより、国立大学で一般選抜後期日程等を廃止し、総合型等の特別選抜へシフトする動きが相次いだ(図表2②)。この背景にあるのは、「多様な背景や能力を持つ人材を受け入れることで、イノベーションの基となる集団の多様性を担保する」という観点である。基礎学力の高い人材は既に一定数確保できている国立大学において、今以上に研究力・教育成果を向上させるためには、多様な人材による多様な視点・観点の化学反応が必要というわけだ。

 その後、2021年に国の入試改革でAO入試から総合型選抜に切り替わり学力評価が必須となり、2022年に高校で現行課程が導入となり、探究の評価区分として定着した。


図表2 「AO入試(それに準じた入試)」を最初に導入した時期


大学は学力評価だけではなく多面的・総合的に評価された入学生が必要

 次に、大学がどのような目的で総合型選抜を導入するのかについて、文部科学省のデータ(図表3)を見ておきたい。大学全体では、「学力の評価だけではなく、受験生を多面的・総合的に評価する選抜を実施するため」が最も多く、「大変当てはまる」「やや当てはまる」を合計すると約99%に及ぶ。次いで「アドミッション・ポリシーに適った入学者をより丁寧に選抜するため」「主体性・多様性・協働性を持って学ぶ姿勢や態度を持つ入学者を選抜するため」等が多い。①で囲った項目は、概ね総合型選抜そのものの制度目的と合致するものである。一方、②で囲った「高等学校での総合的な探究の時間を活かすことのできる選抜を実施するため」「高大接続改革等の方針として、総合型選抜の導入が求められているため」「年内入試の実施を受験生や高等学校から期待されているため」といった、高校側のニーズ対応といった側面は、勘案すべき内容ではあるものの第一義ではない様子が見て取れる。

 つまり、結果的に高校側ニーズに応えることになっているが、あくまで導入の意図としては、大学の教育・研究にも総合型選抜による評価が必要になってきたのが起点ということであろう。


図表3 総合型選抜導入目的


年内入試シフトが確実に進み多様な人材が年内に動く現状

 以降は年内入試に関する高校生の動きについて、リクルート進学センサス2025より関連データをご紹介する。

 図表4より、2025年調査で進学する大学に合格した入試方法は、年明け入試が44.2%、年内入試が53.4%と約9ptの差がついた。年内入試は第1志望率も67.1%と高い。図表5で調査を実施した2019年・2022年・2025年でデータを並べると、年内入試は2019年39.1%、2022年47.0%、2025年53.4% と増加。逆に一般選抜は2019年比で約13pt低下、2022年比でも約3pt低下。今や大学入学生の2人に1人は年内入試経由であり、大学経営においても無視できない存在感になっている。


図表4 進学する大学に合格した入試方法(SA)


図表5 進学する大学の年内・年明けの入試比率


学部学科系統別に異なる受験傾向

 さらに、図表6で性別や分野別で状況を確認したい。男女別で見ると、男子は年明け入試、女子は年内入試経由での進学が多い。系統別に見ると、年内比率が高いのは、家政・生活、芸術・表現、健康・スポーツ、看護・保健・衛生と、比較的女子が多い分野が並ぶ。一方で年明け比率が高いのは、農・獣・畜産・水産、理・工、法律・政治と、比較的男子が多い分野となっている。


図表6 進学する大学に合格した入試方法(SA) 男女別・学問系統別


進学校でも年内入試比率が高まる

 図表7の大学進学率別で見ると、70%以上の進学校では46.1%が年内入試(2022 年比6.3pt増)であり、進学率70%未満の多様校では、72.7%が年内入試(2022年比5.2pt増)と、進学率に拘らず年内入試による進学者比率が高まっている。年内入試の比率は多様校が大きいものの、増加ポイントでは進学校(6.3pt増)が多様校(5.2pt増)を上回る。「一般選抜では合格が難しい学力不足の学生を年内入試で早めに受からせる」といった推薦パターンは過去のものであると言えそうだ。


図表7 進学する大学に合格した入試方法(SA) 大学進学率別


教育内容や校風を重視する年内入試組
知名度や学力帯を重視する年明け入試組

 高校生が進路先を検討する際の重視項目に、年内・年明けによる違いはあるのか。

 年内入試組・年明け入試組共に約7割が重視する「学びたい学部・学科・コースがあること」を除いたグラフが図表8である。年内入試組が年明け入試組と比べて3.0pt以上高く「重視する」のは、「校風や雰囲気が良いこと」「教育方針・カリキュラムが魅力的であること」「資格取得に有利であること」の3項目。逆に年明け入試組が3.0pt以上高いのは、「伝統や実績があること」「有名であること」「教育内容のレベルが高いこと」「偏差値が自分に合っていること」「学費が高くないこと」「学生の学力が高いこと」の6項目であった。


※クリックで画像拡大
図表8 進路先検討の重視項目 年明け・年内入試別の傾向(MA)



【02】年内入試の多様化と教科型の現在


多様性を汲み取る総合型選抜

 見てきた通り規模的拡大を続ける総合型選抜だが、その内容は多彩である。かつては「学力ではない要素を重視する」傾向が強く、「書類審査と面接」が典型的な評価方法だったが、現在は区分設置の目的も評価方法も多岐にわたる(図表9 に例示)。これは令和5 年度大学入学者選抜実施要項から、入試方法に「多様な背景を持った者を対象とする選抜」が追加され、入学者の多様性確保を文部科学省が推奨している文脈も当然無関係ではない。そちらの記載は「家庭環境・居住地域・国籍・性別等の要因により進学機会の確保に困難があると認められる者」「各大学において入学者の多様性を確保する観点から対象になると考える者」とあり、家庭環境や性別等が進学機会の格差要因にならないことが主な趣旨になっているとはいえ、「入学志願者の努力のプロセス、意欲、目的意識等を重視した評価・判定を行うこと」とされている以上、学力以外の多様な要素を踏まえた丁寧な選抜が想定されているのは明らかだ。「多様性確保」のために「多様な資質能力を」「多様な方法で丁寧に評価する」という、何重もの「多様」がここには含まれている。

 こうした規定に加え、「(志望校は妥協してでも)進路を早く決めたい」生徒、「早く第1志望に決めたい(そのために受験機会を多く確保したい)」生徒、「早期に入学者を確保したい」大学、「学内の多様性を確保したい」大学、「多面的に丁寧に評価された人材が欲しい」大学。年内入試は特に、受ける側と受けられる側、双方の様々なニーズが入り交じる。学力だけでは評価が十分ではない要素について多面的・総合的に評価するという区分の性質ゆえに、多様な目的に応じて使われているとも言える。


図表9 多様化する総合型選抜例 ※編集部作成


大学入試の起点は大学教育へのレディネスをどう問うのか

 多様化における現在のホットイシューは、主に関東における年内教科型入試の増加であろう。学力に課題があることの多い年内入試へのテコ入れとしての意義、一般選抜の前哨戦としての設定等、導入の狙いは様々であるが、市場ニーズにフィットし拡大の様子を見せている。文部科学省の入試協議会で議論の末、今年度の大学入学者選抜実施要項では規定が変更され(例年中教審の答申等が動かなければそこまで大きな変更がない大学入学者選抜実施要項について、ここ2年は連続して大きい変更が続いている:図表10)、これまでの経緯を踏まえつつ遵守すべきルールが市場に対応する形で整えられた。


図表10 大学入学者選抜実施要項の主な変更点(令和7年・8年) ※前年と比較した際の注目すべき変更点を編集部でピックアップ


 図表3で総合型選抜導入目的について「結果的に高校側ニーズに応えることになっているが、あくまで導入の意図としては、大学の教育・研究にも総合型選抜による評価が必要になってきたのが起点」と確認したように、大学入試設計の起点は、各学部学科のディプロマ・ポリシーに示す人材像を育成・輩出するための、入学時点において求める資質・能力をどう評価するかである。よって、年内で教科型入試が増加するのも市場の動きとして見据えつつ、大学入学後の教育との接続を踏まえた設計でなければならないのは言うまでもない。入試が多様になればなるほど、それを理解する高校・高校生側の苦労は増し、大学は社会へのアカウンタビリティが問われる。それは、入試それぞれの詳細をきちんと伝えるという意味だけではない。高校の教育が探究を軸に「主体的・対話的で深い学び」「個別最適化」に向かっている以上、高校生の興味・関心に基づく進路選択も、自らの問いに基づく個別性の高いものになっていくことが想定される。自校は、「この領域についてより深く学びたい」と志向する受験生に対して、「大学の中身」と「入り方」を分かりやすく示せているだろうか。

 自校の実現する社会的価値は何なのかを突き詰め、そこに必要な教育・研究を整理したうえで、なぜこの入試設計なのか、自校の学部・学科で教育を受けるために何が必要なのか、各入試区分で獲得したい人材像とその要件は何なのか。それらを市場動向と整合させながら入試を設計し、背景を含めて説明責任を果たすことが、今まで以上に求められているとも言えよう。

 次頁からは、こうした観点に留意しながら、年内入試の多様化に挑戦する3大学の事例をご紹介したい。


【CASE01】年内入試の多様化が示す大学ブランディングへの道筋/金城大学
【CASE02】学科別の事前課題でアドミッション・ポリシーに即した教科型選抜を実現/大妻女子大学
【CASE03】入学者の質向上とステークホルダーへの分かりやすさを 軸足に置いた2026年度入試改革/神奈川大学

【印刷用記事】
年内入試拡大の実態を把握する─文部科学省データ・リクルート進学センサス2025より