連携の推進には、経営トップのコミットメントと将来ビジョンの共有を(カレッジマネジメント Vol.243 Jan.-Mar.2025)
将来の人口減少を見据え、2018年の中央教育審議会「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」では、複数大学による人的・物的リソースの共有や教育研究機能の強化を図るものとして、大学間連携や統合を円滑に進められる仕組みづくりが提唱された。特に新たなスキームとして、国立大学の一法人複数大学制の導入や、国公私の枠組みを超えた大学等連携推進法人制度の導入が提言されている。今回の特集は、様々な大学間連携の現状をリポートしつつ、連携を推進するうえでの課題を明らかにしようとするものである。
大学間連携のメリットは、各大学のリソースを有効活用できるということである。各大学の特色や強みを活かした連携科目の導入や、学生・教職員の人的交流、地域プラットフォームとの連携等が挙げられる。一方で、課題としては、まず特に地域においては連携大学同士が学生募集で競合関係にあることから、「呉越同舟」となって進捗が滞りがちであることが挙げられる。また、国公私の枠組みの中で、私立大学にはそれぞれ独自の建学の精神や理念があり、連携の枠組みの中において整合性をどう保つのかという課題もある。実際に連携を進めている事例を見ると、大学間における授業時間帯の調整やLMS等システムの共通化、授業全体としてのレベルの調整や評価の在り方等、学修者視点での具体的な課題も見えてきている。連携の推進には、上記のような様々な課題や困難を乗り越えるだけの経営トップのコミットメント、連携大学間における活発なコミュニケーションと将来ビジョンの共有等が重要となってくる。
文部科学省は11月12日、中央教育審議会大学分科会高等教育の在り方に関する特別部会(以下、特別部会)において、進学率・進学者数の最新の将来推計を公表した。2035年以降急速に18歳人口が減少し、2040年には74万人を割り込む。外国人留学生が現状のままであった場合には、2040年に大学進学率が約60%まで上昇したとしても、大学入学者数は46万人となり、定員充足率は全国平均で72.75%まで落ち込むという。推計では、東京都であっても定員充足率は8割を切るとされており、都市部であっても、人口減少の影響が避けられない状況となっている。特に、地方はより厳しい状況だ。大学にとって、いや日本全体にとって、これまでの想定をはるかに上回る厳しい時代の到来が目前に迫っている。
この特別部会においても、地域の学生達に対して、地元でも学べる分野・領域の選択肢をいかにして残していくかといった方策が検討されている。その大きな柱が大学間連携である。また、地域ごとに限定せず、分野ごとの連携等、各大学の強みや個性を活かした遠隔の連携も考えられる。恐らく、近い将来そうした連携の発展形として、国内留学や、オンライン等を活用した教養教育の共通化も進められていくだろう。
先進国の中で、いち早く少子化に直面する“課題先進国日本”。課題の解決策の一つの方向性として、様々な大学間連携がより良い形で発展していくことを期待したい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長
小林 浩