【TOP INTERVIEW】学びのコミュニティをさらに拡充し、「創造型実学」の実現を目指す/名城大学 学長 野口光宣氏


名城大学 学長 野口光宣氏

名城大学 学長 野口光宣氏(のぐち みつのり)
1952年生まれ
1986年 米国デューク大学大学院数学研究科博士後期課程修了
1987年 米国オハイオ州立大学理学部数学科助教授
1993年 名城大学商学部経済学科助教授
1998年 名城大学商学部経済学科教授
2000年 名城大学経済学部産業社会学科教授
2002年 名城大学大学院経済学研究科博士後期課程教授
2008年 名城大学経済学部経済学科教授
2009年 名城大学経済学部経済学科長
2013年 名城大学経済学部長・名城大学大学院経済学研究科長・学校法人名城大学評議員
2015年 名城大学副学長・学校法人名城大学理事
2025年 名城大学学長


教育・研究の根幹をなす実学重視の理念

 名城大学は名古屋市に3つのキャンパスと2つの付属施設を持ち、10学部(法、経営、経済、外国語、人間、都市情報、情報工、理工、農、薬)9研究科、学生数約1万6000人を擁する総合大学です。1926年に創設者の田中壽一が開設した名古屋高等理工科講習所から始まり、1949年に名城大学として開学しました。

 立学の精神「穏健中正で実行力に富み、国家、社会の信頼に値する人材を育成する」は、本学が総合大学として社会に貢献する使命を表しています。社会に実際に役立つ「実学」を重んじる理念は、本学の教育・研究の根幹をなすものとして、現在に至るまで継承されています。

MS-26とその先の将来ビジョン
“中部から世界へ 創造型実学の名城大学”

 現在、開学100周年を迎える2026年に向けた基本戦略「Meijo Strategy-2026」(通称MS-26)を推進中です。ここには、創設者が学園設立の目的として提唱した「自分が選んだ学を精進し、生涯にわたって天職を楽しむ」という思想を継承し、「生涯学びを楽しむ」を学園に関わる全ての人達と共有したい価値観として標榜しています。

 MS-26のビジョンには、「多様な経験を通して、学生が大きく羽ばたく『学びのコミュニティ』を創り広げる」を掲げ、これを具現化するコンテンツとして、正課・正課外を問わず多様な「学びのコミュニティ」を創出してきました。大学がプログラムを予算面で支援する「学びのコミュニティ創出支援事業」や「Enjoy Learning プロジェクト」のほか、リーダーシップ育成を目的としたオナーズプログラム「チャレンジ支援プログラム」、「アントレプレナーシップ人材育成プログラム」もその例です。

 さらに2019年度には、開学100周年のその次の100年に向けた将来ビジョン「中部から世界へ 創造型実学の名城大学」を策定しました。「創造型実学」とは、課題に直面した際、自らが中心となり多様な人材や知見を結集し、専門知識の柔軟な応用力と幅広い教養を活用して、適切な解決策を生み出し、社会実装まで導く力を養う学問です。立学の精神にある実学重視を未来志向で解釈したものといえます。

 そこで時流に即した実学として「数理・データサイエンス・AI」分野に係る全学的な教育改革を推進してきました。2022年度の情報工学部設置と同時に、全学部を対象に開講した「データサイエンス・AI入門」科目は、2023年度文科省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」に認定されました。2024年度からは応用基礎レベルに対応する科目も全学部対象に設置しています。

 さらに都市情報学部と情報工学部が提供する「データサイエンス・AI副専攻制度」を全学部対象に導入しました。創造型実学の実現に向けた分野横断的視点を育もうと、副専攻制度を拡充していく予定です。

「志願したい大学ランキング」エリア1位

 MS-26の成果として、「学びのコミュニティ創出支援事業」では毎年度約100件、「Enjoy Learningプロジェクト」では同じく約10件を支援してきました。「名城大学チャレンジ支援プログラム」には約30人、アントレプレナーシップ養成プログラムには400人以上が参加しました。「学びのコミュニティ創出支援事業」の参加学生に対するアンケート(2025年2月末時点)では、96.3%が「成長を実感している」と回答しています。

 一方「データサイエンス・AI入門」科目については、2024年度履修者数が「リテラシーレベル」で2700人、「応用基礎レベル」で1113人に上りました。

 こうした取り組み等により、2025年度入試の志願者数は5万421人と過去最高に達し、リクルート「志願したい大学ランキング」でエリア1位を獲得する等、一定の成果を上げることができています。

100周年のその次へ「MS-36」策定

 現代社会は、不確実性の高まりとともに、複数の要因が絡み合う複雑な課題に直面しています。しかし本学の学生には、不確実性や課題に直面した時に、そこで負けるような人間にはなってもらいたくないと思っています。そこでバイタリティと創造型実学を身につけてもらうために、今後は次の3点に重点を置き、取り組みを強化していきます。

 1つ目は創造的思考の育成と、それを実践する機会の拡充です。「学びのコミュニティ創出支援事業」をはじめとするMS-26のコンテンツを、「創造型実学」の実現に向けて発展的に再設計し、課題発見・解決力を備えた人材の育成を目指します。

 2つ目は学修成果の可視化を通じた教育の質保証と改善です。次期認証評価においては、「成果や有効性(アウトプット)」に焦点を当てた評価が導入されており、本学も内部質保証を一層見直す機会だと捉えています。

 3つ目はDXの推進です。教育プロセスの効率化と学習の個別最適化を目指した教育DXに取り組みます。

 また、2026年には開学100周年を迎えますが、100周年はあくまで通過点として、次期基本戦略となるMS-36(仮称)及び中期事業計画の策定の準備を進めています。なお、開学100周年記念事業として、本学の新たなシンボルとなる多目的総合体育館「開学100周年記念アリーナ(LIONS ARENA 2026)」を建設中です。学生の課外活動の新たな拠点であると同時に、名城大学のこれからの姿を体現する空間となることが期待されています。

 変化と不確実性の時代だからこそ、次の100年に向けて新たな価値を創出できる大学を目指して進んでいきます。


(文/能地泰代 撮影/カメイ・ヒロカタ)



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