【TOP INTERVIEW】組織の風通しが良く、世界から選ばれる国士舘大学を目指す/国士舘大学 学長 田原淳子氏


国士舘大学 学長 田原淳子氏

国士舘大学 学長 田原淳子(たはら じゅんこ)氏
1963年生まれ
1988年 横浜国立大学大学院教育学研究科修士課程修了
1991年 中京大学大学院体育学研究科博士後期課程単位取得
1994年 中京大学大学院体育学研究科博士後期課程修了博士(体育学)
2006年 国士舘大学入職
2009年 国士舘大学体育学部教授
2019年 国士舘大学学生部長
2024年 学校法人国士舘常任理事 国士舘大学大学院スポーツ・システム研究科長
2025年 国士舘大学学長

「世のため人のため」に尽くせる国士を養成

 国士舘大学は、東京都に大小合わせて5つのキャンパスを持ち、7学部(政経、体育、理工、法、文、21世紀アジア、経営)10研究科、学生数約1万3000人を擁する総合大学です。

 1917年の大正中期頃、世の中が西洋化に向かっていく時代に、創立者の柴田德次郎が、日本の伝統的な良さや文化、特に精神性が失われていくことに対して強い危機感を持ち、吉田松陰の精神を範として建学した私塾「國士館」を始まりとしています。

 建学の精神に「日本の将来を担う、国家の柱石たるべき眞智識者『国士』を養成する」とあるように、国を思い、世のため人のために尽くせる優れた人材の養成を目指しています。この「世のため人のため」は、本学に今日まで連綿と引き継がれている精神です。警察や消防への就職に強いことも、人のために役に立ちたいという思いのもとに職業を選び、就職していく学生が多い証です。

「スポーツ」と「防災教育」、「カリキュラム改革」

 本学の主な特徴として、「スポーツ」と「防災教育」が挙げられます。

 本学では、伝統的にクラブ活動に力を入れており、これまで各種世界大会で上位入賞するようなトップアスリートを多数輩出してきました。特に各種武道(剣道・柔道・空手)や、サッカー、野球、レスリング、陸上競技等の34クラブを国士舘スポーツ協議会指定クラブとして、積極的に支援しています。

 「防災教育」については、全学部の新入生を対象に、オリエンテーションの一環として「防災総合基礎教育」を実施しています。また、防災リーダー養成の特別カリキュラムとして、「防災リーダー養成論」「防災リーダー養成論(実習)」を全学部の学生を対象に実施しています。

 これらの特徴に加え、本学では各学部・研究科のカリキュラムを定期的に点検し、積極的にカリキュラム改革に取り組んでいます。例えば、21世紀アジア学部では2026年度より新たな3コースがスタートします。「スポーツ・文化」「日本・アジア地域」「ビジネス」とコース名を刷新し、他コースの科目を相互に学べる仕組みにしました。例えば、スポーツをやりたくて本学に来る学生が一定数いるというニーズに応え、「スポーツ・文化コース」では、スポーツを専門的に学びながら、アジアに関わる学問も横断的に学ぶことで、グローバルな視点でスポーツの指導ができる人材を育てます。ビジネスならアジアを拠点としたビジネス、地域研究なら日本語教育とアジアの言語等、アジアというくくりの中で大きく3つの領域を学べるようにしました。

国士舘初の女性学長として取り組む方向性

 本学では学長の選考方法を選挙から推薦方式に変え、私は新方式で選ばれた最初の学長であり、歴代初の女性学長でもあります。

 まずは任期の3年間で、これまでの伝統やリソースを最大限活かし、国士舘の魅力を高めていくことが目標です。この実行のために、①安心安全の学内浸透、②総合大学の強みを生かした分野横断的な活学の創出、③社会貢献と国際化を、3つのポリシーとして推進していきます。

 ①の安心安全では、教員に対するハラスメント研修等や、実習中の怪我に対応したトレーナー研修等、学生サポート体制を充実し、不安なくキャンパスライフを楽しめるようにします。②の活学の創出については、異なる学部で開講している科目を両方とも受講すると、別の資格が取得できるという学びの可能性も見えてきました。1つの学問分野だけでは社会課題を解決できないので、学部横断でコラボレーションしながら新しい知を創造していけないかと話しています。③社会貢献と国際化では、先日スロバキアとの大学間交流の中で、体育教員に対する武道研修や、日本学の教員に対する日本語研修等、自大学の教員を国士舘へ送りたいというニーズが高いことを知りました。そこで本学の強みである武道と日本学を打ち出した交流をもっと進めたいと思います。

 最後に女性ならではの視点で言うと、クラブでの女性の指導者をもっと増やしたいと思います。女子学生はほとんどのクラブにいるわけですから、指導者が男性だけというのはよろしくない。3人の指導者のうち最低一人は女性が入ると随分変わっていくと思います。

新たな風通しの良い国士舘へ

 これまでの成果として、本学には日本全国から学生が集まってくれています。教員になる卒業生も多く、その影響を受けた生徒が本学を選んでくれるという好循環が、国士舘を底支えしています。同窓会組織やクラブのOB組織との強固なつながりもまた資産です。

 国際的にも、例えば救急救命の分野等で知名度が上がっていて、エジプトの救急救命士の研修を本学で毎年行っています。今年で8期目を終えましたが、評価が高く、アジア等の国々からひっきりなしに要請が来ています。こうした柱で、世界から選ばれる国士舘を目指していきます。

 また今後は風通しが良く、活性化した大学にしたいとも思っています。そのためには一人ひとりの当事者意識を高めることが大事です。伝統的に良くも悪くも上意下達のようなところがあるので、アイデアを発言する機会を創出します。

 今始めているのは、毎月の会議体を学長への報告会で終わらせることなく、共通のテーマについて各部署の現状や課題を発言してもらう形に変えました。するとたくさんの意見が出てきて、1つの部署ではできないことは他部署と連携するということが始まり、大改革が進みつつある感覚を持ちました。

 教職員が変われば学生も変わります。新たな風通しの良い国士舘へ、改革を進めていきます。


(文/能地泰代 撮影/冨永智子)



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