進学ブランド力調査2025
高校生の進学動向を明らかにするため、
リクルート進学総研で2008年から実施している「進学ブランド力調査」。
2024年に、高校生の大学選択の実態により近い調査とするため、調査内容をリニューアルしたが、
今回は新調査2年目となった最新結果について紹介する。
リクルート進学総研 研究員
飯島隆介/鈴木宇望
詳しいデータはPDFおよび 当サイト高校生の「志願したい大学」を7エリアで発表『進学ブランド力調査 2025』をご覧ください。

リクルート進学ブランド力調査 調査概要
- 調査目的
- 高校3年生の大学に対する志願度、知名度、イメージを把握し、関係各位の参考にする。
- 調査対象
- 全国の高校に通っている2026年3月卒業予定者(調査時 高校3年生)計20万名
- 令和6年度学校基本調査の「全日制・本科2年生生徒数(県別)」、「中等教育学校・後期課程2年生(県別)」を基に、リクルートが運営する『スタディサプリ』会員より調査対象とする数を抽出
- エリア区分
- 関東甲信越エリア(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、山梨県、長野県の1都9県)
- 東海北陸エリア(静岡県、愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県、福井県の7県)
- 関西エリア(大阪府、京都府、奈良県、和歌山県、兵庫県、滋賀県の2府4県)
- 北海道エリア(北海道の1道)
- 東北エリア(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県の6県)
- 中四国エリア(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県の9県)
- 九州沖縄エリア(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県の8県)
- 有効回答数
- 1万6850名 回収率 8.4%
- 各エリアそれぞれにおいて令和6年度「学校基本調査」(文部科学省)の2年生(本調査の母団;2026年3月卒業予定の高校3年生)から男女構成比を算出し、エリアごとの男女構成比を補正している。
- 集計対象数
- 1万5140名
- 分析対象は上記有効回答のうち大学進学希望者
- 調査期間
- 2025年4月1日(火)~ 5月6日(火)23:59
- 調査方法
- インターネット調査
- 2024年度からインターネット調査に変更、また選択肢を一部変更したため、時系列結果は掲載していない。
関東・関西では大規模私立大学が人気。
地方圏では国公立大学人気が根強い
本調査は2026年3月卒業予定の高校3年生に対して、2025年4月1日~5月6日にかけて実施したものである。2024年調査にて時代性の反映や精緻性を求めて、従来までの調査項目に見直しを掛けた。2025年調査においても大きな変更点はないが、一部修正を加えている。
<変更点>
- 機能的項目に「学びたい、興味ある学部・学科がある」と、感性的項目に「かっこいい」「面白い」を追加。進学したい大学の感性的イメージを追加。
- 志願度調査に加えて知名度調査も全国の大学を対象校として調査。
- 通信制大学を対象校に追加。
【1】国公立及び私立大学進学意向(P.48)
国公私立大学の進学意向について、全国を7エリアに分けた表が図1である。各エリアを比較すると、関東甲信越のみ私立志向(52.6%)が国公立志向(34.3%)を上回っており、かつその差分も18.3ポイントと非常に大きい。大規模私立大学の校数も多く、選択肢が豊富であることも後押ししている背景だろう。次に私立大学の数が多い関西だが、昨年は私立志向が高かったが、今年は国公立志向(44.5%)が私立志向(42.1%)を僅かに上回った。対照的にその他の5エリアでは全て国公立志向が私立志向を大幅に上回り、その差は16.9ポイント(東海北陸)から33.8ポイント(中四国)と非常に大きな広がりが見られた。

【2】進学先検討時の重視項目(P.49)
進学先検討時の重視項目を全17項目から選択、それらを大学自体の特徴に関する項目の「大学軸」と、高校生自身が入学後に期待するイメージに関する項目の「自分軸」に分けたものが図2である。
「大学軸」は「交通の便が良い(51.8%)」「教育内容のレベルが高い(38.8%)」「専門分野を深く学べる(35.7%)」「キャンパスがきれいである(34.0%)」等のポイントが高いのに対し、「自分軸」は「学びたい、興味ある学部・学科がある(43.7%)」「就職に有利である(37.3%)」「学生生活が楽しめそう(34.2%)」等が高い。「学びたい、興味ある学部・学科がある」は文系理系のどちらからも求められているが、とりわけ文理間で差があるものに注目すると、文系層からは交通の便とキャンパスのきれいさが求められており、理系層からは教育内容のレベルの高さと専門分野を深く学べることが求められていることが分かる。
高校生が大学選択検討時に求める項目は非常に多岐にわたるが、オープンキャンパスや様々なメディアを通じて伝えたい大学らしさが高校生目線できちんと伝わるよう、細やかなフォローが求められる。

【3】進学したい大学に求めるイメージ項目(P.48)
進学したい大学のイメージを全10 項目から選択した結果が図3である。上位から順に「活気がある(54.3%)」「親しみやすい(44.1%)」「知的な(25.1%)」と続く。特に文系層で活気、親しみやすさ、理系層で知的なイメージの大学への支持が高い。一方で、「上品な(9.8%)」や「かっこいい(11.2%)」イメージはそこまで強く求められてはいないことが見てとれる。
【4】進学したい学問分野(P.50)
進学したい学問分野についての結果が図4である。人気が高いのは、経済・経営(22.6%)、教育・福祉・心理(17.4%)、国際・リベラルアーツ(11.7%)等。特に経済・経営は男子(29.1%)と文系(33.7%)からの支持が非常に厚く、教育・福祉・心理、国際・リベラルアーツは共に女子と文系から人気を得ている。さらに社会は全体の支持も比較的高く(10.6%)、かつ男女差が少ないことが特徴。また、値はそこまで大きくないが、生命・農・環境(8.8%)や医学(3.8%)、エネルギー・材料(2.1%)も男女差が少ない。文理融合を掲げる学部も増えてきている情報(7.8%)だが、男子(11.7%)>女子(3.8%)、理系(13.1%)>文系(4.2%)とそれぞれに開きが見られ、男女・文理とも揃って人気が高いとまでは言えない。

【5】志願度ランキング(P.51~57)
図5は全国7 エリアでの志願度を調査した結果である。概観すると、北から順に(カッコ内は1位の大学)、東北(東北学院大学)、関東甲信越(明治大学)、東海北陸(名城大学)、関西(関西大学)、九州沖縄(福岡大学)エリアで、入学定員3000人以上を擁する文理幅広い学部学科を持つ大規模私立大学が1位、北海道(北海道大学)、中四国(岡山大学)エリアでは交通アクセスの良い国立大学が1位となった。いずれのエリアでも、昨年と引き続き高校生の学びたいことや価値観の多様化に応えられる点が重要なポイントとなっているようだ。
進学先エリアで見ると、北海道では弘前大学(11位)以外は全て北海道内の大学がランクインしており、地元内進学志向の高さが窺える。東北では10位以下に関東甲信越の国公立大学が5校、私立大学が2校ランクインしていることが特徴。関東甲信越では全て同エリア内の大学が上位20校を占めており、前段の「1.国公立及び私立大学進学意向」でも触れたように自エリア内にブランドの確立した大学が十分揃っていることが分かる。東海北陸では立命館大学(16位)と同志社大学(19位)の2校のみがランクインしており、関東甲信越の大学は0校である。関西では、中四国で志願度1位の岡山大学が17位(昨年26位)と躍進し、エリア外唯一の大学としてランクインしている。中四国では、関西の国公立大学が3校、私立大学が4校ランクインしていることが特徴。九州では、広島大学(14位)以外は全て九州内の大学がランクイン。地元内進学志向の高さが窺える。こうして見ると、特に地元外流出率が高いエリアである東北と中四国の2エリアにて、男女別と文理別ともに他エリアの大学のランクインが目立つことが見てとれる。
図5、及び詳しいデータはPDFおよび 当サイト高校生の「志願したい大学」を7エリアで発表『進学ブランド力調査 2025』をご覧ください。
【印刷用記事】
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