異文化との融合 日米の大学のリアルな融合でキャンパスの日常生活からグローバル体験を可能に/昭和女子大学 スーパーグローバルキャンパス

昭和女子大学キャンパス


坂東理事長・総長

 国境を越えて活躍するグローバル人材の育成は、多くの大学において中長期的な改革の柱として掲げられている。その目標を達成するためには、語学に関する授業カリキュラムや留学プログラムの強化といった教育はもちろんだが、異なる国や地域を文化背景とする多様性を受容する姿勢を、日々の学生生活の中で身につけられる環境を整備する大学も出てきている。グローバル人材育成に向けて、従来の枠組みを越えた連携や施設整備の挑戦が始まっている。

世界を舞台に活躍する女性を育成する

 2020年の今年、創立100周年を迎える昭和女子大学。昨年米国テンプル大学ジャパンキャンパス(以下TUJ)を世田谷キャンパスの敷地内に迎え、「スーパーグローバルキャンパス」として新しい時代へのスタートを切った。国籍、性別、年齢が多様な学生との交流によって、ダイバーシティや英語の修得等を促進し、グローバル人材の育成を目指していく。日本とアメリカの大学の学生が同じキャンパスで学ぶというこの先進的な試みは、国内外の注目を集めている。

 昭和女子大学はこれまでもグローバル教育の環境づくりに力を入れてきた。1988年に米国ボストンに「昭和ボストン」校を設立、2006年には英国教育のブリティッシュ・スクール・イン・トウキョウ昭和を敷地内に開校している。坂東眞理子理事長はこれからの女性にこそグローバルな視点での学びが必要であるという考えのもと、昭和女子大学のさらなる国際的な環境づくりを進めてきた。テンプル大学との提携もその一環だ。

 「女性は男性が作ってきた領分で戦うのではなく、人材がまだまだ少なくこれから成長する分野で戦っていく力が必要です。日本だけにこだわらず、世界を舞台にすることが、女性の活躍の場を広げることにつながるのです」(坂東理事長)。

志願者数の推移

スーパーグローバルキャンパスでダブルディグリー・プログラムを推進

 「スーパーグローバルキャンパス」が発足して約半年。大学では融合をより効果的にするためのプログラムが実施されているが、特にダブルディグリー・プログラムの推進に力を入れるという。TUJとのダブルディグリー・プログラムでは、ここ世田谷キャンパスで日米2つの大学の学位が取得できることが特徴で、昭和女子大学の5年間の授業料で学位が取れるだけでなく、海外滞在費もかからないという経済的利点は大きい。


キャンパス図


学生はもちろん教員の交流も進展

 また、両学生達が協働するプロジェクトも複数進行している。「世界食堂」と名づけられたプロジェクトでは、学食のメニューを一緒に提案することで食を通じた文化の相互理解の場となっている。また、両校の学生が都内の美術館を見学して交流を深める企画なども複数回企画されている。

 世界60の国や地域から集まった約1500人のTUJ学生が昭和女子大学キャンパスに現れたことで、学生生活の中でも新しい化学反応が起き始めている。例えばキャンパス内で英語を耳にする機会が増える。食堂で違う国の人から話しかけられることもある。そんな日常の変化も新しい刺激につながる。また、海外の学生達の学ぶ姿を目の当たりにできることも大きい。

 「TUJの学生達は本当によく勉強しています。そして主体的に動き、自己責任でどんどんチャレンジしていく。昭和女子大学の学生達もその姿をキャンパス内で目にすることで、世界のレベルに刺激され成長すると考えています」(坂東理事長)。

 実は学生だけでなく、教員や学校としても多くの発見があったと坂東理事長は語る。「TUJの日本文化の授業で、日本語で本を朗読してほしいという依頼がありました。彼らが英語によるコミュニケーション以上に求めているのは、私達が持っている専門性なのです。つまり教員も学生も一人ひとりが高いレベルのコンテンツを持つことが大事だということを改めて知らされました」

 2つの大学が共存するキャンパスはまだスタートしたばかり。このキャンパスならではの新しい経験によって学生が卒業までにどういう力を身に付けたのかということが成果であり、昭和女子大学としても最も期待しているリターンであるという。スーパーグローバルキャンパスは、新しい文化が生まれる土壌となりそうだ。



昭和女子大学のキャンパスTUJの校舎

昭和女子大学のキャンパス内に移転したTUJの校舎。両学生達はキャンパス内の食堂やホールを共有。
いつもの学生生活の中で多様な人々との交流が広がる。


昭和女子大学ボストン校

米国の「昭和ボストン校」は1988年の設立以来、昭和女子大学のグローバル教育を支えている。
英語コミュニケーション学科(旧英米文学科)は、昭和ボストン校への留学が必修となっている。


昭和女子大学とTUJの協働プロジェクト「世界食堂」

協働プロジェクト「世界食堂」では、学食のメニューを両学生が協力して提案。
第一弾はテンプル大学本校があるフィラデルフィアの「チーズステーキ風ランチ」が再現された。食を通じた文化の相互理解の場となっている。


昭和女子大学日本語日本文学科とTUJの学生が日本文化を共に学ぶ授業プログラムの様子

日本文化を共に学ぶ授業プログラム。昭和女子大学日本語日本文学科とTUJの学生が、江戸時代に書写、出版された「徒然草」の実物本に触れ、
日本の貴重書の取り扱いや徒然草の内容について学ぶ。



(文 木原昌子)



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