高大接続改革への「高校の挑戦」(カレッジマネジメント Vol.198 May-Jun.2016)

3月末日、高大接続システム改革会議の最終報告が取りまとめられた。実現に向けては、乗り越えなければならないハードルがいくつも存在しているのも事実である。それでも、大きな改革は確実に動き始めている。今回の改革は、入試制度改革が話題を集めているが、本質的な目的は、大学入学者選抜を変えることで、高校と大学の教育とその接続のあり方を、三位一体で変えていこうというものである。

高校も、大学も、それぞれに様々な改革が進められている。しかし、大学や高校は、お互いどのような変化が実際に起こっているのか、あまり共有されていないように思える。そこで、今回は、大学経営層を読者に持つ「カレッジマネジメント」と、高校教員を読者に持つ「キャリアガイダンス」というリクルートが発行する2つのメディアが合同で、高大接続改革の特集を組み、大学には高校の変化を、高校には大学の最新動向を伝える企画とした。

 例えば、高校は大きな山が動き出すかのように、少しずつだが確実に動き始めている。いわゆる進学校や進路多様な学校、普通科だけでなく実業系高校も。従前の偏差値というモノサシから多面的・総合的評価に変わることで、評価は一変する可能性がある。これからの社会の中で求められる力を身につけるために、どんな力をどう育めばよいか。教科や学校という枠組みを超えて、社会とのつながりを通じて、知識の「習得」から、「活用」「探究」へ。動き出した高校の教育の変化にぜひ注目して頂きたい。ただ、高校サイドに戸惑いや疑問がない訳ではない。払拭できない1つの疑問。それは「本気で大学が変わるのだろうか」という問いだ。さて、大学サイドはどんな解を提示するのだろうか。

 一方、大きな社会環境の変化の中で、大学も動き始めている。多くの大学でプロジェクト学習などを重視する「教育の質的転換」が進みつつある。一人で学習する場だった図書館は、他のメンバーと意見を交わしながら、得た知識を発展させる場としての「ラーニングコモンズ」に生まれ変わっている。海外との提携校を増やすとともに、留学プログラムも充実させている。各大学は、それぞれの果たす役割や価値を明確化し、社会のニーズに合致した学部・学科の再編も活発である。

 こうした高校の動き、大学の動きは、お互いにきちんと伝わっているだろうか。高大接続改革の成功には、高校、大学の相互理解が不可欠である。今回の特集が、将来に向けた、より良い高大接続の一助となれば幸甚である。

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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長

小林 浩

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